15.
それから、放課後になるまでるかは姿をあらわさなかった。
逃げるようにしていなくなったるかに、しばらくして我に返った初音さんは猛烈に怒っていたが、なんというか、初音さんのヒートアップがすさまじかったせいで、私は逆に冷静になっていたような気がする。
今までのパターンでいけば、怒った初音さんに対して、なんとなく釈然としないながらも謝っていたるかである。それが、初音さんにあそこまで言われても「間違ってない」というのなら、もしかしたらるかなりになにかあったのかもしれない。
――でも、なにかって、なんなのかしらね。
考えてみれば、るかが「正気でござるか?」などと私に言ったのは、私がカイトさんを成敗しようとしなかったからだ。だが、そんなにカイトさんを成敗しなければならないような理由が、果たして本当にるかにあっただろうか。それこそ、るかが男嫌いだというくらいの理由しか見つからない。まぁ、本人からすれば、それはそれで十分な理由になり得るのかもしれないけれど。他になにか理由があったとしても、せいぜいリアクションのパターンを変えてみた、というどうしようもない理由しか思いつかない。
「るか」
学校の廊下で、ぽつりとつぶやく。返事はない。
生徒会の仕事が終わって、生徒会室から出た私は、一人で廊下を歩いていた。グミはまだやることがあったので、生徒会室に残っている。手伝おうとしたら「お嬢様のお手を煩わせるわけにはいきません」と言ってすげなく断られてしまったのだ。なんだかんだ言ってグミも初音さんが言っていたことを気にしているのかもしれない。でも「巡音先輩のことを本当に考えた行動」って……考えてみれば、初音さんもなかなか迷惑なことをしていると言えなくもない。だって、今朝、私の部屋にやってきて寝顔を覗こうとしていたのだし。
それはともかく、昼以降は何度呼んでもるかはあらわれない。もしかして、愛想を尽かしていなくなってしまったのだろうか。
そのことがちょっぴりさびしいと感じてしまっている自分が、どこかおかしかった。
だって、いくら考えてみても、忍者るかのことで思い出す中によかったことなどないのだから。
妙な装束を着ているし。
変態だし。
馬鹿だし。
胸を揉まれたし。
私の姿で初音さんを押し倒してたし。
気持ち悪い発言ばっかりだったし。
気持ち悪い行動ばっかりだったし。
鼻血とか出してたし。
マナー悪いし。
いやもうホント、悪いことしか思い出せない。思い出は美化されるとか、嘘だと思う。いやまあ、思い出って言うほどまだ時間が経っているわけではないけれど。
「るか」
それでも淋しいのは、どうしてだろう?
なんだかんだ言って、ああやって「御館様、御館様」と慕ってくれたのが嬉しかったのだろうか。寮生とか、他にも慕ってくれた人は沢山いたっていうのに。
ラーメンを食べていた時の幸せそうな顔を見たせいだろうか。変態だったけれど、純粋でもあったるかに、私はなにかを感じていたのだろうか。
……でも、それも昨日の晩から今日の昼まで。一日にも満たない時間でのことだ。
たったそれだけの間だったのに、いいことも大してなかったのに。
るかはいなくなってしまった。
もう、いなくなってしまったんだ。
「るか……」
私はなんの気なしに、ふと思いついてみたことを口にしてみる。
「今すぐに出てきたら、お寿司を食べさせてあげるわ」
「本当でござるか!」
しゅたっという着地の音とともに、どこからともなくるかがあらわれた。
右膝と右拳を床について、左膝を立ててしゃがみ込んだ体勢は、まるで私の忠実な部下のようだ。そんな彼女は私の方を見上げ、瞳をキラキラと輝かせている。
「……」
今まで全然出てこなかったくせに、食べ物で誘っただけで驚異的なあっさりさで出てきたるかに、私のセンチメンタリズムを返せ、と思った。
Japanese Ninja No.1 第15話 ※2次創作
第十五話
忍者るか、いなくなったかと思いきや、あっさりと現れるの巻。
あっさりと放課後になったことからわかると思いますが、昼パートはそんなにありません。話が話なので、学園生活について長々書く必要も無かったので。
あと全然話とは関係ないのですが、自分のホームページはホームページビルダーのからみで作っていたのですが、いつの間にやら有効期限が切れていて見れなくなってました。ブログは残っているようですが、これはまずい……。ていうか、今頃気付くとか遅過ぎにもほどがある。
だがしかし、ホームページのあれこれを調べたりやり直したりする時間的精神的余裕なんて一切無かったりします。一体どうしたものやら……。
知り合いでホームページの運営をしてくれる人を探してみようかなぁ。
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