煌びやかなシャンデリア。目がおかしくなりそうだ。彼は、長い机の向こうにいる。女の様に美しい口を開けてフォークに突き刺したステーキを食べていく。
「・・・ねぇ、あのさ、君、食事の時くらい笑えないの?」
「食べ物を口に運んで咀嚼するだけなのに何故笑わないといけないのですか?」
「食べ物がまずく感じるから」
「それはあなたの味覚の問題では?言っておきますが、シェフに言って味を変えてもらうなんて、しませんから」
そんなことする義理もない。こいつが勝手に入り浸っているだけなのだから。本当に嫌な男だなぁ、とステーキを口に運びながら考えていた。カイトとのことがかれに知られてからは、自分の時間というものが少なくなってしまった。私が稽古を終え、彼の所に行こうとするとこの男、レンは私の邪魔をしてくるのである。食事に行かないかい、舞台を観に行こうか、などと迷惑な誘いをし邪魔をするのだ。そこどいてもらえませんか、と言うとにやりと笑いじゃあ一緒に行こうか舞台などと意味のわからない発言をするので頭を抱えている。もしかしたらこいつ、英語が分からないのか、と本気で心配したことがある。生粋のロンドンっ子である、と知って心配して損した、と思ったのは彼には言いたくない。
「・・・生意気」
「生意気で結構」
「可愛げないなぁ」
「あなたの頭がおかしいだけじゃないのですか?カイトは、私のこと可愛いって言ってくれますよ」
「君、お世辞って知ってるかな?」
「カイト、正直というか・・・ちょっと空気読めないんです。だからよく本音を言っちゃいけない場所で本音を言ってしまい喧嘩になってしまったことがあります。私がなんとか仲裁したのですが」
「・・・君、彼のことになるとよく喋るねぇ」
「そりゃあ、好きですもの」
「婚約者の前でそれを言うかなぁ」
ナイフでステーキを切り、フォークにぶっ刺し口へと運ぶ。それを繰り返す。
やがて皿の上に残るのはステーキにかけたソースだけ。
「婚約者だからこそ、本音のことを打ち明けるべきでは?」
「言うねぇ」
どれだけ私が暴言を吐いても彼はニタニタと笑いながら相槌をうつばかりで腹が立つ。何なんだこの男は。馬鹿にしているのか。
「では、私はこれで失礼いたします。レン様」
「どーこにいーくのっ?」
「アトリエへ」
「ついていっていい?」
「・・・邪魔さえしなければ」
「わーい」
今日は彼がいないからまぁいいだろうと、思って受け入れたのが間違いだった。
「りーん」
雑音を聞きながら、筆を動かす。次第に切れていく集中力に、私は舌打ちをした。筆を握る手が震え始める、怒りに。
「いい加減にしてください」
「やーだね」
「目障りです。出て行ってください。不快です」
「リンったらー、素直じゃないんだからぁ」
「その小娘の様な喋り方、やめてくれます?小馬鹿にされている様でむかつきます」
「お言葉が乱暴ですわよリン様、ホホホ」
べちゃ、というあまりよくない音が紙の方から聞こえる。慌てて紙の方を見ると予想通り、彼・・・カイトの肌に青の絵の具がべちゃりと・・・。この絵はできたら彼が描いた私の似顔絵と交換するはずだったのに、この男のせいで
私はあまりの苛立ちに、持っていた筆を婚約者の顔に投げつけた。カイトとお揃い、というのは気に入らないがざまあみろだ。自分の行いを反省することだ。
「あらあらレン様、お顔に絵の具がついておりますわよ。間抜けな面晒してないでお拭きになったらどうです?みっともないですわよ」
私の発言が気に入らなかったのであろう。眉間に深い皺が刻まれている。綺麗なお顔が台無し、ざまあみろ。
「これはこれは、リン様。あなたの家では、婚約者の顔に筆を投げつけ絵の具だらけにするという下品な遊びが流行っているんですねぇ、非常に興味深い。この遊びの中にある深い心理を学者に解明してもらいましょう!」
「まぁ!深層心理だなんて!そんなものはありませんわ、ただあなたの行動が気に入らなかっただけですもの!」
「・・・お前、家に帰ってめちゃくちゃに犯してやってもいいんだぞ?」
「嫌だわ、かのレミリア家の坊ちゃんがそんな口を聞いてはいけませんよぉ?レミリア家の名に傷が付きますわ」
「黙れこの生娘」
「清い体と言ってくれますか。人聞きの悪い」
「初めての男根はどうですか?お嬢様」
ぱっちーんという爽快感あふれる音がアトリエに響き渡る。
死んでしまえ、こんな男。
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Messenger-メッセンジャー-
<レン:>
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ようこそ終点へ
魂の浄化に
何をしてあげよう
ワクワク
厳しめの懲罰
(フフフフフ)
<リン:>
(ちょっと待ったー!)...幽地終点
ヤナギ ヤスネ
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