この小説は

私が作詞を担当させて頂いた、
今更P(So流-D)さんの初音ミクオリジナル曲。
[メモリー忘却ループ]
http://www.nicovideo.jp/watch/sm14039718
を元に、後から紡いでいく物語となります。

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[メモリー忘却ループ。]

過去を見て 今を生く
人は過去の中 今を創り出す
心まで機械仕掛け 空っぽのメモリーを
あなたとの思い出たち 満たしてく
日々の過ぎ行きさえ温かくて
いつもいつまででも一緒にいて
君が笑うから 照れくさくて
今日も言えなかった「君が大好きだよ。」

過去を見ず 今にいる
ボクは過去の上 今を描き出す
心まで機械仕掛け 容量が不足して
大切な記憶(メモリー)までも消えてゆく
あの日言えなかった一言さえ
明日になったなら忘れちゃうの?
胸にある気持ち 行き場なくし
いつか忘れていく 君の想い全てを
 
溢れてしまう 記憶はまた
注いであげればいいよ

心まで機械仕掛け 容量が不足して
大切な記憶までも消えてゆく
今日に言った言葉忘れるなら
明日も明後日でも言えば良いよ
僕が覚えてる 君の記憶
今日も言ってあげる「君が大好きだよ。」

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[1:今日の昨日と明日-brillante-]

「ハジメマシテ、名前ヲ音声入力シテ下サイ。」
部屋いるのは、僕より少し幼いくらいの少女。
正しく言えば、アンドロイド。
知り合いの科学者が作ったアンドロイドを、
同い年くらいの人間といたほうが、
AI(人工知能)の成長に良いだろうと言って、僕に預けた。
初めてみた彼女は、本当に人間にそっくりだった。
いや、人間というには美しすぎるかもしれない。
彼女の顔には欠点が一つもなかった。髪もとても綺麗に流れている。
知り合いの科学者も、「どうだこいつの顔!すごい可愛いだろう!」
と自慢していた。
悔しいが、本当にその通りだ。
今は硬い表情も、AIの成長にしたがって人間のそれと変わらなくなるらしい。
「名前・・・かぁ。」
彼女はまるで、人間かのように瞬きをしてこちらを伺っている。
「あのさ、そんなに見詰められると困るんだけど・・・」
なぜだか分からないという風に、首を傾げてみせる。
あぁ、仕草も可愛らしい。
あの科学者は女好きだった。だからきっと、好きな仕草を最初に教えたんだろう。
「名前ヲ入力シテ下サイ。」
なかなか僕の返事がないので繰り返したようだ。
「急に名前って言われてもなぁ・・・」
名前なんてそう簡単に決めるわけにもいかなくて。
「名前ヲ後回シニスル場合ハ、貴方ノオ名前ヲ入力シテ下サイ。」
「へー、そんな機能も付いてるんだ!」
思わずそう言ってしまった。
「“キノウ”サンデスカ?」
なぜだか、彼女はその部分を名前だと勘違いしたらしい。
面白かったので、それでも良いかと思ってしまった。
「えっと、違うけど・・・良いや、僕は“キノウ”。よろしく。」
笑ってそう言うと、また不思議そうな顔をしている。
「ソレデハ、“キノウ”サン。名前ヲ入力シテ下サイ。」
「えっーと、それは君の名前の事かな?」
一人称がまだはっきりしてないらしい。
科学者はまだ教えていない言葉もあると言っていた。
「じゃあ“アスカ”で良い?僕が昨日(キノウ)だから、君は明日華(アスカ)。」
キノウってさっき自分でそうだといったけれど、やっぱり変だと思う。
でも、彼女がアスカっていうのは、我ながら良い名前だと思った。
「“アスカ”デスネ。」
「そう!あと、僕には敬語使わなくて良いよ。」
僕は、あまり敬語が好きではなかった。
なんだかとても遠く感じてしまうから。
「“ボク”ニハ?」
“僕”の意味が分かっていないのだろうか。
「意味が分からないのなら、“自分”ってことだよ。
 だから、僕には丁寧な言葉を使わなくて良いよってこと。」
「ソレデハ、言語ヲ保存シマス。
 “ボク”は“キノウ”ニ敬語ヲ使ワナイヨウニシマス。」
・・・なんだか、間違っている。自分のことということを保存したので、
アスカも自分のことを僕と言うようになってしまったみたいだ。
あと、敬語直ってないし。
「んー・・・、まぁ、敬語は徐々に僕の言葉を聞いて直していけばいいよ。」
「分カリマシタ。ソノ情報ヲ保存シマス。」
時間はかかりそうだけれど、こうやって情報を教えていこう。
きっと、彼女はいろんなことを学べるはずだ。


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ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

【メモリー忘却ループ。】1:今日の昨日と明日-brillante-【オリジナル小説】

pixivで書いていたものが完成したので、こちらに投稿させて頂きます。
6話完結の短編小説。

アンドロイドと青年の、優しさに包まれた、少し哀しいお話。

閲覧数:164

投稿日:2012/02/13 19:37:40

文字数:1,856文字

カテゴリ:小説

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