「…憐…?」

その日の夜、急にかかってきた彼からの電話。

「あぁ、咲蘭(さくら)?
今日会えるかな?」


携帯から聞こえる愛しい人の声。
まだ彼が私を必要としてることに震えるほどの嬉しさを感じる。

「何時?」

「八時くらいに行くから」


それだけ告げ電話が切れた。




恋に恋する乙女の様に、
憐のくる一時間前から化粧を始めた。

新しい部屋着を着、髪を梳く。
この間美容院で染めてもらった艶やかな栗色の髪は、
少し梳くだけで光を帯びたように色めいた。


「咲蘭?」


「憐っ…」

八時を少し過ぎたころ、彼はやってきた。




「…新しい服?
可愛いじゃん」


「そう?
憐、こういうの好きだから、気にいるかなぁ、と思って」



笑みがこぼれる私に対して、
憐の表情はあまり明るくならない。


「憐…?」


「咲蘭、俺、もうお前に会えそうにない」






え・・・・?


「…どういう事…?

憐っ…‥!!」

私より少し背の高い彼の胸元にしがみつく。


「俺には咲蘭の事、幸せにできそうにないよ」

「何で?
私はこんなに憐のこと大好きなのにっ・・・!!」



知らない間に涙が零れ、頬を伝う。




「俺さ、咲蘭以外にもたくさん女いるでしょ?
本命が咲蘭でも、そんな俺じゃお前を傷つけてしまうから。

もっと咲蘭を愛してくれる人を見つけな」




否定できない事実に胸が痛む。




「私は憐が好きなのッ!
他に女がいたって構わないから…!


お願い………」




崩れそうになる私を抱え、憐はソファに腰かけた。


「それで咲蘭が苦しむことになってもいいの?」




そう問いかけた彼の哀しそうな眼を見て、
私が頷くと、彼の唇が私のそれに触れた。




お願いだから、離れないで。




ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

抱きしめて  Ⅱ

無駄に重いシリーズ第二弾!←


これでも絶対ハッピーエンドにしますから!(焦

咲蘭ちゃんの名前は、
鏡世が蘭の花好きってところからきてます。

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投稿日:2011/12/03 20:09:15

文字数:778文字

カテゴリ:小説

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