何のために生きるのか,なんて。
誰に聞いたって答えは返ってはこない。
「曇っていいなぁ。」
白いくもが真っ青に晴れた空によく映える日,あたしは独り言のようにそうつぶやいた。
ベットから眺める景色は,あまりにもキラキラして見えて,あたしは眩しくて目を閉じたくなった。
「何で?」
軽く笑いながら,隣のベットで寝ていた君が近づいてくる。
あたしのベットの上に散乱するたくさんの機械や管を踏まないようにしながら。
あたしは,生まれつき筋肉が発達せず,脳が萎縮する病気だった。
そして,同じ日に生まれた君も,心臓が弱く,年も近いあたし達は,小さな頃からずっと一緒だった。
「風に流されて,どこまでもどこまでも行ける。あたしも思い切り走ってみたいなぁ。ここから見える,あのさくら並木の下を。きっと,綺麗だよ。」
君は,そういって窓を見つめるあたしの頬を優しくなでた。
「・・・できるよ,いつか,きっと。」
なんの保障もないし,本当に何気ない言葉だったけど,とっても嬉しかった。
こんな幸せな時が,ずっと続いてゆく。
・・・そう思うのは,罪なのでしょうか。
それから幾日,あたしの病状が突然悪化した。
あたしはすぐさま集中治療室に運ばれたけど,その時にはもう,手遅れだった。
生まれてからずっと過ごしてきたベットに横になる。
あたしを取り巻いていた機械達はすべて取り外された。
2つのベットが並ぶ殺風景な病室には,あたしと君だけ。
かち,こち,と時を刻む時計の音が,なぜだか遠く聞こえた。
すぐそばで,誰かがすすり泣く声が聞こえた。
「・・・泣かないで」
消えそうな程小さな声で,あたしは言った。
「・・・だよ,いくなよ・・・っ」
初めて見た,君の泣き顔。
もう一度,見たいな。
いつもあたしを励ましてくれた,あの笑顔。
「ねぇ・・・,笑って・・・?」
ぐっと,あふれ出る涙をこらえ,君はぐしゃぐしゃになった顔で,いつもの笑顔を向けてくれた。
「ごめん,ね。独りぼっち,にしちゃっ,て・・・・。でも,あた,し・・・・,幸せ,だった,なぁ・・・。」
「何,いってんだよっ・・・,まだ,一緒にっ・・・」
あたしはゆっくりと君を見つめた。
あたしの手握る君の手に,少しだけ力が入る。
「ねぇ,あたし・・・,いつか思い切り,走り,たいって・・・,いったけど・・・,もう,駄目,みたい・・・。」
泣き止まない君の涙が,あたしの手に伝う。
「今,まで・・・,あり,がとう。」
「っいや,いやだっ・・・!」
「あたしが,死んだら・・・,心臓っ・・・,あげる。だから・・・・,あたしの分まで,いっぱい,いっぱ・・・い,走って・・・。」
「っ待ってくれよっ・・・,独りに,しないでくれよぉっ・・・・。」
なんだろう。
目の前が真っ白になってく。
君の笑顔だけが浮かんで・・・。
「大,好き・・・。」
軽快に地面をける音。
満開に咲いたさくら並木の下を,俺は走っている。
あいつの心臓が,俺の中でトク,トク,と音を立てる。
俺は自分の胸に手をあてる。
あいつは,俺の中で,今でも生きてる。
「不思議だよな,ホント。」
かるく笑いながら,空を仰いだ。
「ねぇ,れん。あたしね,れんのことだぁいすきだよっ」
「おれも!りんのことだぁいすき!」
「りんのほーがもっともーーーーっとだいすきだもんっ!」
「おれのほうがずーーーーーーっとだいすき!」
「じゃあ,やくそくして!」
「なにを?」
「れんは,りんとずーーーっといっしょにいるって!」
「なぁ,お前は覚えてるか?・・・リン。」
「心配しなくても,ずっと・・・,一緒だよ。」
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