屋上のフェンスの端にいる帯人の元へグミは近づいていった。
「今のどうしたの?何か須藤君にからまれてる様に見えたけど……」
「…別に、君には関係ないでしょ」
心配して声をかけたのにぶっきらぼうに答えて眼も合わせてくれない帯人にグミはムッとしてしまった。
「…こっちは心配して言ってんのにその言い方は無いんじゃないの?帯人」
「俺は君に心配してくれなんて頼んでないよね」
グミは何も言い返せなくなりむぅ、と唸ってしまった。
「そんなんじゃ友達出来ないよ」
「ご心配どうも。でも余計なお世話だね」
何だか言い合いに決着がつきそうも無いのでグミは適当に話を切り替えた。
「あー…、そういえばさぁ、あたしショートケーキ買ってるんだけど………、いる?」
「いらない」
あっさりと断られてしまった(しかも即答)。それでも何だか一人で食べるのは帯人に悪い気がしたのでグミは帯人に食い下がった。
「一口だけ!ね?ね?」
「だからいらないって……」
「ね?(超ウルウル上目遣い)」
「……………」
今にも泣き出しそうなグミの眼を見て観念したのか、帯人は仕方なさそうに溜め息をついた。
「…じゃあ一口だけ」
「本当に!?ありがと!帯人」
グミと帯人は屋上の端に座り、グミはおもむろに足元にあったバックから小さなケースの中に入ったショートケーキを取り出した。
「…………ちょっと待った、何それ?」
「何それって…ケーキだけど?」
「えっ、…この世にそんな全面オレンジ色のケーキなんかある訳?」
見るとグミの膝の上に乗っているケーキらしきモノは確かにショートケーキの形をしているが、何やらオレンジ色の生クリームが均等に生地に塗られている。正直言ってあんまり食欲をそそらないし美味しくなさそう。
「えーっ!?ここのお店のにんじんケーキ、本当においしいんだよ!?」
帯人はグミの話を聞いて色々ツッコみたくなったが、敢えてそれを飲み込んだ。
「はい、じゃああーん」
「ん」
帯人はグミが差し出したプラスチックのフォークを口に入れた。
…なるほど、味は悪くない。甘さも控えめでカロリーを気にする女子にはうけそうだ。
ただこの状況……、
恋人みたいだな。
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