リンはおばあちゃんの家に向かった。

そこで、お茶を入れるのが好きだった。
おじいちゃんとおばあちゃんが好きだった。
この二人だけは、レンよりも、自分を見てくれていると感じたからだった。
この時だけ、レンのことを忘れられた。

お菓子も、おもちゃも。
買いに行くのはこの二人との方が多かった。
一緒にお菓子を食べる。お茶を飲む。
自分が入れたお茶を、おいしいと飲んでくれる。
その笑顔がリンは好きだった。
人形遊びをして、ご飯も食べて。いつの間にか眠ってしまっていた。

家ではなく、おばあちゃんの家による。

これはリンのちょっとした反抗だった。

私を見てほしいという、表現だった。




今、君に送る -2-




朝、リンの目が覚めると、自分がよく知っている天井が見えた。

きっと、6時を過ぎても帰ってこない娘に両親は焦ったのだろう。
リンが来ていないか、と電話をおばあちゃんにかけたのだ。
迎えに来た二人に連れられて、リンは家に帰ってきていた。

のそのそと、布団から起き上がると

「おはよう」
と、父親に声を掛けられた。

『おはよう』と返すと、自分の背丈よりも大きな椅子をずらして、
座った。足はもちろん、床に付かない。

「昨日、どうしておばあちゃんの家になんか行ったんだ?」

『ヒミツ』

「パパ達、心配したんだぞ」

足をパタパタさせ、リンは、出されているトーストとヨーグルトの
ヨーグルトだけ食べる。
リンはご飯を多く食べない。小食なのだ。
パン一枚も入らない。サンドウィッチも、一つも食べ切れない。
クロワッサン一つ、やっと食べれる様な位、リンは食べない。
お菓子をほおばった後の夕食は、ご飯が3口、おつゆが半分、おかず2口。
これだけしか食べない。
お弁当もいつも残している。
入ってる卵焼きには必ず手をつけなかった。
唯一と言っていいほど嫌いなものだった。

「リン?聞いてるのか?これからは…」

『ごちそうさま』

パンの中だけをくりぬいて、「パンの耳」だけが残っていた。
今日はよく食べたらしい。

洗面台に走って行ったリンの姿は、少し、切れている感じだった。


わたしは、わるいことをしたの?
ただ、ふたりにみてほしかったのに。

今はもう、仕上げの歯磨きもしてもらっていない。
辛いけれど、大人のよりは甘い、歯磨き粉で歯をシャカシャカと磨く。
髪もとかす。サラサラのロングだ。
台に乗って鏡を見る。
少し、大人になった感じがした。

『わたし、おねえさんになれてるの?』

その日、保育園に行ったあと、リンは、母親の方のおばあちゃんに会いに行くことになった。
いとこからのお土産のラッコのパペットと、
アライグマの人形、クマの人形。抱きしめて。
車に揺られて、リンは眠ってしまった。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

今、君に送る2

「今、君に送る」の続き。 

閲覧数:142

投稿日:2010/06/02 22:56:28

文字数:1,166文字

カテゴリ:小説

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