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 村に滞在した三ヶ月間、二人は、全力でルディのことを調べ上げた。ルディから生まれたハーニィを育てていくために、なるべく多くの資料が必要だと思い立ったからだ。

「まず、ルディは、湖から現れるというけど、誰も現場を見たことがないんだ」

 アルタイルは、役場の役人に掛け合って、出来る限りのルディの生態研究を閲覧させてもらった。

「湖に近い村や街に、ルディの出現が集中しているというだけで、誰も、湖から、本当にルディが上がってきたところを見たことはないんだ」

 アルタイルは生態情報のメモをめくってゆく。

「大鷲、大狼、大トカゲ。三種類の出現頻度は、それぞれ同じ。出現回数が圧倒的に多いのは春で、被害の規模が大きいのは秋。ルディの子供の表記は、五十年の間に一度もないけれども、おそらく、成体になるまで、人里に出さずに、大事に育てているのかもしれない」

 レティシアは、人間たちの、ルディ退治の動きについて調べていた。

「今の、ルディ退治の制度ができたのは、最初のルディが発見されてから、一年後だね。
全国にセルの養成学校が配備されて、ルディ殺しが、正式な職業となった。
 機関の整備としては、かなり速いね。それだけ対策が必要だったからかな。湖の漁業や運送業は、国によってほとんどこのとき撤退させられているね。保障もずいぶん受け取ったみたい」

レティシアが、ルディ退治の歴史を紐解いてゆく。

「実際に手を下すゼルは、民間に任されているけど、セルやゼルの手帳とか、役場の管理の助けがないと、一切退治は行えないことになっているね。これは、少し、変かな。
 役場の機関のルディ対策課は、実際にルディ殺しは行わないで、管理ばかりに特化している。情報を持っているなら、すぐにでも機関として退治に乗り出しそうなのに、なんでそんなまどろっこしいことをしているんだろう?」

 ハーニィは、夕食のあとで、すっかり眠っている。最近のお気に入りは、『風の加護』のすべすべした感触らしい。

「大事なものだから、守ってね」

というレティシアの言葉にうれしそうにうなずき、いつも肌身離さず握っている。
 レティシアの調べた歴史の報告に、アルタイルは首をひねった。

「そもそも、なんで湖から出てくることになっているんだ? もし出所が分かっているなら、ルディの季節になったらぐるりと取り囲んで、一日中見張っていればいいのに」

 ルディ出現区の地図に、×印がついている。
「今は湖の周りの、歩いて半日の圏内に人は住んでいないんだからさ、すぐ出てきたところを、やっつければ、街や村に入って被害が出ることもないのにな」

 今度はレティシアもうなる。
 レティシアの村も、確かに湖のそばではあったが、岸辺までは歩くと一日かかるような距離であった。それだけあれば、空を飛んで侵入してくる鷲型のルディにも対処できそうなものを。

 と、部屋の扉が叩かれた。

「セディン・アノールです。資料を持ってきました」
「どうぞ」

 顔なじみとなった役場の役人が、秋の深まった夜の冷気と共に部屋に入ってくる。緑色の髪と尻尾をもつ、トカゲ族の好青年である。丸腰でアルタイルをルディからかばった、あの案内者の役人だ。

 このトカゲ族の役人、セディン・アノールの訪問が、重大な転機をもたらすことも知らず、いつものようにレティシアは穏やかな微笑みとともに彼を部屋に迎え入れた。



続く!

ライセンス

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【オリジナル】夢と勇気、憧れ、希望 ~湖のほとりの物語~ 17

オリジナルの17です。

【オリジナル】夢と勇気、憧れ、希望 ~湖のほとりの物語~ 1
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↓ボカロ話への脱出口

☆「ココロ・キセキ」の二次小説
ココロ・キセキ ―ある孤独な科学者の話― 全9回
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投稿日:2010/02/27 15:11:04

文字数:1,434文字

カテゴリ:小説

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