初恋メロディー 過去巡り そのろく



10月の秋の夜。自分の部屋のベッドでガク君と電話で話していた

「来週の土曜が生徒達だけ日で、日曜が一般公開の日だからね?」

大丈夫?来れる?部活休めるの?」

ガク君とは週に3~4回電話で話をしている。

本当はもっと電話したいけど、ガク君も夜遅くまで部活をやっているため

なかなか電話することができない。

まぁ…そうゆう日はメールを送って少しだけお話する

 『分かった日曜な。部活は大丈夫だよ。今から先生に言えば休めるから。』

絶対に行くよ。と言うガク君の言葉に

「本当?良かったぁ~~、絶対に来てねっ!?楽しみにしててね!

みんな一生懸命に練習したんだよ!?

中学の時と同じぐらいの練習を毎日やって頑張ったんだからね!

だから楽しみにしててね!中学のよりももっともっと上手くなってるの!」

私はたまらなく嬉しくなって少し興奮してる

久しぶりにガク君に会える~

ガク君に会うのは中学を卒業した3月に別れて以来の7ヶ月ぶりだ

夏休みもガク君、合宿とかでこっちに来れなかったから嬉しい~

 『分かった分かった。楽しみにしてるよ。』

「うん!楽しみにしててね!私もガク君に久しぶりに会えるから嬉しい!

そうだ!舞台の上からガク君のことを見つけたら合図するね!何がいい!?」

 『えぇ?流香から合図するの?俺が手を振るだけでいいんじゃない?』

「ううん!私も何か合図する!合図したいの!何がいい!?」

 『う~ん…そう言われてもなぁ…手を振るなんてできないでしょ?』

「それは流石にできないけど……しよっか?手ぇ振ろっか?」

小さく手を振れば大丈夫かな?みんなに見えないように…

私が真面目に考えていると 

 『いいって!しなくていいよ!恥ずかしいって!他の方法で!』

ガク君に駄目と言われた

「え~いいの?じゃあ…………そうだ!手を合わせるってのはどう? 

歌ってる間にガク君を見つけたらこう…胸の前で手を合わせる…みたいな?」

携帯を肩で挟んで手を胸の前で合わせ、鏡の方を見た。

鏡の中の自分は祈ってるようで…

 『あぁ…それならいいんじゃない?それがいいよ』

「うん!じゃあガク君を見つけたら手を合わせるからね!見ててね!?

ガク君も私に手ぇ振ってね?流香ー!って言いながらね!」

 『無理だって!できないって!普通に手を振るよ!』

「ちぇ~…分かった。絶対に手ぇ振ってね?お願いね?」

 『分かった分かった…手ぇ振るよ…あぁゴメン流香、もう寝なきゃ。』

「え?」

ガク君の言葉に名残惜しさを感じながら…

もっと話ししたいなぁ…と思いながら…

「…そう…だね。明日も早いんだよね?」

 『うん。だから…おやすみ流香』

「うん…おやすみガク君。話せて嬉しかったよ…早く会いたいね…」

 『うん…会いたいね』

「私…楽しみにしてるからね…来週…ガク君に会えるの…」

 『うん…俺も楽しみだよ。絶対に行くよ。じゃあね』

「うん…じゃあね」

プッ、ツッー、ツッー

恋人との電話を切った

そして部屋の電気を消して眠ろうとしたけど

来週までの時間が待ち遠しくて…早く会いたくて…

久々に会えるのが嬉しくて…久々に自分を見せたくて…

久しぶりに彼の顔を見たくて…

色々な想いが胸の中で膨らんで、苦しくなっていって…




なかなか眠れずに…窓の外の月を見てた





次の日の昼休みにハナとお昼ご飯を食べてる時

「んで?ガク君は文化祭に来れるの?」

ハナが牛丼の特盛りを食べながら私に聞いてきた

よく入るね…

「うん。日曜日の朝に電車に乗ってくるんだって。」

「へ?土曜の夜に来れないの?」

「ガク君はそう言ったんだけど私がいいって言ったの。

部活の後で疲れてるでしょ?って…それに合唱部の出番は2時半でしょ?

だから10時ぐらいの電車に乗れば1時ぐらいに着くから平気だよって…」

ハナは牛丼の中の玉ねぎを私のお弁当箱に入れながら

「え~?でもそれじゃあガク君とお店を回れないでしょ?いいの?

せっかく久しぶりに会うんだから、楽しまないと…」

心配げな顔で私に言ってきた

なんだかんだ言うハナだけど、私とガク君のことを心配して色々と考えて

くれていて嬉しく思う

いつもありがとね…

「ありがとねハナ。でもガク君に無理して欲しくないし…

それに結構クラスの出し物とかでバタバタして忙しいじゃない?

だから結局は時間を取るのが難しいと思うし…平気だよ?」

そう言いながら弁当箱の玉ねぎをハナに返した

「時間を取るのが難しいから…だからだよ…だから少しでも…」

少しだけ悲しげな顔をするハナに

「大丈夫だよ。ガク君に歌ってる姿を見てもらえれば十分だよ…」

「そうなの?ん~流香がそう言うならいいけど…」

ハナは再び牛丼を食べ始めた

本当は…

ハナが言ったとおり本当は…

ガク君とお店を見て回りたい…

2人で色んなお店を回って…美味しいもの食べて…笑って…

その後に歌を聴いてもらいたい…

「うん…だから文化祭…頑張ろうね?」

「おし!頑張ろう!」


いつも優しい友人と決意した




そして一週間後の日曜日。文化祭の一般公開の日。

朝から私のクラスの出し物で忙しかった

そして自分の担当時間が終わり、私は急いで部室に行くが

「おまたせー!……あれ?サキとヒロは?」

部室にはハナと優希しかいなかった

「まだ自分の担当が終わんないんだって」

「ヒロ…まだかかりそう…私に…先に行ってて…って」

そっか…まぁでも…

「そっか…じゃあ3人で練習してよっか?」



サキとヒロが来るまで3人で練習をして、その後2人が来てみんなで

最後の練習をして、私が

「じゃあそろそろ体育館に行こっか?」

「おう!」「そだね」「うん…」「頑張ろう…」

と、みんなで体育館に行った


舞台袖で合唱部の出番が来るのを緊張しながら待ってると、ハナが

「流~香?緊張してるの?」

後ろから私に抱き着いて聞いてくる

「だ、だってさ~、やっぱり不安だよ…」

ハナの手をぎゅっと握り不安を口にする

「大丈夫だって。あんなに練習したじゃん?平気だって。」

「でもさ~、うぅ…分かってるけど~」

ハナは私を見て笑いながら

「流香は中学のときから変わんないな~大会前も…文化祭も…こんな風に

緊張してたっけ?何度も練習してるから大丈夫って思わないの?」

「大丈夫って思おうとしてるんだけど……なぜか緊張しちゃうの…

不安になっちゃうの……慣れないのよ…どうしても…」

「そっか~~まぁでも大丈夫だよ?今までだってそうじゃん?平気だよ~」

ハナは私を抱きしめながら前後にゆ~らゆ~ら揺れる

「それに今日はガク君と…」

「あぁそっか…久しぶりに会うんだもんね…そりゃ緊張するか」

「うん…しかも…さっきメールしたけど返事が無いから余計に…」

練習をする前に『ガク君まだ?着いたの?』とメールを送ったが、

いまだにガク君から返事が来ないのだ

ガク君どうしちゃったんだろ…

「そうなの?でもガク君のことだからちゃんと来てるでしょ?

そうだ!ガク君を見つけたら合図してみたら?愛してるー!って叫ぶとか」

「それ合図じゃなくて公開告白じゃん!?」

「それともガク君の為に歌います!って言うほうがいい?」

「だからそれも公開告白だって!それに…合図みたいのは…もう決めてる…」

私は顔が赤くなった

「え?本当?どんな?」

「手を…胸の前で…合わせる…って」

うぅ…恥ずかしい…

後ろのハナは優しく笑いながら

「そっか…じゃあガク君を見つけないとね…」

「うん。でもガク君来てるのかなぁ?メールが無いから…」

どうしたのガク君?

なんでメールくれないの?

私の不安を感じ取ったのか、ハナがぎゅっ、と抱きしめてる腕に力を入れて

「大丈夫だよ!ガク君きっと来てるよ!流香をビックリさせる気なんだよ!

だってガク君あんたのことすっごい好きなんでしょ?大丈夫だって!」

私を励ましてくれた

「…うん…そうだよね…ありがと…」

ハナにお礼を言うと

「流香ー?ハナー?出番だって~行くよー!」

実行委員と話してたヒロが私達を呼ぶと、ハナが私を解放して

「出番だって、行くよ!流香!」

昔からの笑顔で私を誘うので

「うん……行こう…」

そして合唱部は舞台に上がったが





私が胸の前で手を合わせることは無かった。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

初恋メロディー 過去巡りその6

初恋メロディー過去巡りのその6です。

ある意味ここからが本編…

閲覧数:35

投稿日:2011/11/09 15:20:35

文字数:3,581文字

カテゴリ:小説

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