学校から出た私たちは妙な空気に思わず黙り込んでしまった。
今までの談笑が嘘のように途切れ、みんな強張った顔をする。
たしかに自分たちが知っている風景なのに、どこか違う感じ。その具体的なところまではわからないが、なんとなく何かを察していた。
「ねぇ、この箱の中、どこで見る?」
妙な雰囲気を壊すように発せられたリンの声に各々が場所の提案を次々と出す。近くの公園、誰かの家、カフェでお茶しながら。
歩みを進めながら、気を紛らわすように出される言葉を裂くように後ろからの声に6人が振り返る。
「あ、みんなー! 久しぶりー!」
緑の髪にゴーグルが目印のグミが向こう側から大きく手を振って走ってくる。無邪気な笑顔と軽そうな走り方は見慣れたものだったが……。
「あ、あの子、ちょっと……大人っぽくなってない?」
「ルカの言う通り、ちょっと何か違う、かも?」
ミクも苦笑をしつつ今も走ってくるグミを見ながらそう言った。
「本当久しぶりだね! 認知度高くなってからは都会に行っちゃったから寂しかったよ!」
「え、都会?」
「そうそう! あ、でもテレビでは応援してたよ! ……でも、1年くらいでぱったりだったから何かあったんじゃないかって心配したけど……まさか帰って来てたとは思わなかったよー!」
ころころと表情を変えながらミクたちの知らない事実を話すグミ。頭が混乱してきた6人は一旦グミに喋らすのを止めさせ順々に質問をしていった。
「えーっと……まず、都会って言った?」
メイコが眉間に皺を寄せ、悩んだ末に言葉を絞り出した。
「うん! いってきます! ……ってわざわざあたしの家に来てくれたの、覚えてないの?」
「んー……まあ、とりあえず次。テレビ?」
「ネット活動からテレビへ行ったじゃん! 初放送はそこの集会場に集まってみんなで見たんだよー!」
グミは楽しそうにそこにある集会場を指差してはしゃいでいた。その時のことを思い出したのか、続けてその時のことを細かく説明し始める。
「り、リン。これってもしかして、未来へ来ちゃったってヤツかな!?」
「なんであんたは楽しそうなの!」
妙にわくわくしているレンの頭をリンがぽかっと叩く。叩かれた部分をなでながらもレンは「絶対そうだよ~」と言っていた。
「……グミ」
ルカがレンの言葉を聞いて今日の日付を聞いた。グミは「えーっと」と瞳で上の方を向きながら思い出す。
「たしか……4月30日、かな」
「年は?」
「2017年」
「ほらぁー! やっぱり僕の言う通りだったでしょ! 殴られ損だよ!」
「うるさい!」
「いたい!」
混乱と動揺がミクたちを襲い始めた。知っている場所だけど知らない場所。妙な感覚がやっとわかった今、さっきよりも頭が真っ白になっていくのが誰でもわかった。
「あー……もしかして、ミクたちが急にいなくなった3年前って今日のことだったんだー……」
「え、それ、どういうこと?」
「3年前の4月30日、ミクとルカ、カイト先輩、メイコ先輩、それとリンレンが突然どこかへ行っちゃったの。みんなは誰かに拉致られた! とか、神隠しだ! とか言ってちょっとした騒ぎになったんだけど、3日後には帰って来たんだよね」
「そ、それで、その時私たちは何か言ってた!?」
「みんな当然、何があったの? って聞いたよ。そしたらさ、6人共口を揃て覚えてないって言うの」
「何があったのかは謎のまま、なのね……」
「でも心配することはないと思うよ。何があったのかは覚えてないみたいだったけどみんな笑顔だったし。その時、Viewの中で何かあったみたいだけど、その問題もなくなったようだし。普通に都会行っちゃったし」
グミのセリフの中にあった問題、について6人には思い当たる節があったが。誰もが声を出すことはなかった。
「……とりあえず、私たちが帰って来たあとのこと、教えてくれる? ちょっとは戻る方法の参考になると思うからさ」
メイコがそういうと、グミは「まかせて下さい!」と胸に手を当てた。
7人は移動し、新しく出来たという喫茶店でのんびり話を聞くことにした。
VOCALOID Project-なかたがいのうた-
第2話です。
ここの欄には前回出てきたキャラの情報をちょちょいっと書いてこうかな……なんて思ってます。
決してどのキャラがどんなヤツだったかわからなくなるわけじゃないですよ。……ホントです……。
初音ミク
大人気アイドルグループ、Viewのリーダー。明るい性格でグループのみんなを引っ張っていく。ルカとは中学の頃から高校卒業までずっと同じクラスだった。
巡音ルカ
Viewの1人。大人っぽい性格・容姿・声で人気を集めている。自分とは正反対なリンやレンの世話をよくしている。
カイト
Viewの1人。主に女性から人気。メイコとは幼馴染。
メイコ
Viewの1人。幼い頃から歌手を目指していたが、高校在学中View結成の話をカイトから聞き入ることになった。
鏡音リン
Viewの1人。レンとは幼馴染だが友人からは双子のようだとよく言われている。そのせいかレンとセットにされることが多いが、本人は不服そう。
鏡音レン
Viewの1人。リンの幼馴染で昔からなにかといじめられていた。リンとセットにされることはなんとも思ってないが、そのせいで不機嫌になるリンから攻撃されるのでやめてほしいと思ってる。
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