ミキ:す・・・・凄い威力・・・・

<Run! Run! Run! ボカロット猛レース! 最終話 ゴール!>

(東京 ネオアキバサイバーシティレース場 第4直線出口付近)

ミキのボカロット『ラブリースター』が、先ほどの☆型ビームを撃ったマシンだった。☆型発射口から熱を持った煙が立ちこめていた。コクピットで操縦桿を握って、冷や汗垂らしているミキの所に、AHSチームのピットにいるテルから無線が入った。

テル:ミキ、無事か!?
ミキ:ぶ、無事だけど、これが“いろはさん”が用意していた『最終兵器』なの?
テル:いや、その、それがね…、僕が出力の調整をするとき、間違って、2つ桁数が大きい数値で設定しちゃったらしいんだよ。つまりいろはが設定していた出力の“100倍”のエネルギーのビームが発射しちゃったんだ…、いやーごめん、てへ☆
ミキ:てへ☆、じゃないですよ!!!! 暴発してたら、このレース場ごと全部吹き飛んでいたんですよ!!!!
テル:まー、いーじゃないですか。ちゃんと発射できて、悪党をやっつけて、ミクさん救えて、結果オーライですよ♪
ミキ:あぅ…(はぁ~、やっぱり専務を呼びつけての急ごしらえメカニックじゃ、だめだったみたいね…)

***

(東京 ネオアキバサイバーシティレース場 最終バンク付近)

『ラブリースター』の☆型ビームの直撃を喰らった、ジャックの『ヨーモノ改』は、バンクの外側の外壁にめりこみ、全身から煙をあげて、大破していた。とりあえず今の状態では動きそうもなかった。

 『ネギロイドZ』のコクピットから、それを呆然と見ていたミクに、ジャックから無線が入った。

ジャック:や・・・・やるじゃねーかよぉ~・・・・ちーとぉ、痛かったぜぇ~・・・・それより、こっちは動けねーぜ? トドメ差したらどうだよぉ~、え~ミクさんよぉ~
ミク:トドメって…
ジャック:俺はこのレースを中止寸前まで追い込み、お前の命を狙い、アペンドとその娘を殺し、誘拐した連中も殺し続けた『殺人鬼』だぜぇ~。この国から“死刑”は撤廃されちまったから、いい弁護士雇えば、刑も軽くできるし、巧くいけば『心神喪失』とかになって、無罪だぜ? 俺を殺せる機会は、もうここしかねーぜ?

ミク:う…う…

 ギーーー ガチャ!

 『ネギロイドZ』の左腕に装備されている電磁誘導式の銛『パイルバンカー』が作動し、大破している『ヨーモノ改』のコクピットの前に銛の先が移動して止まった。

ジャック:そーそー、それでいいんだよぉ~。この国のザル法にかかるくらいなら、殺しちまった方がいいだろぉ~。やっちまいなよ、ザクッとよ~

 ガチャ

 ジャックは右手で左下のレバーを握った。

ミク:こ・・・この外道・・・おまえなんか・・・おまえなんか・・・
ジャック:そうそう、一気にやっちまえって!

 ギュイーーーーーーン!

 パイルバンカーの銛が電磁式スライドを伝って上にせり上がった。発射準備の動作だ。

ミク:お前なんかーーー!!!
ジャック:かかったな! ナイフでひと突きだぜ!

 ズガン!!!!!

ミク:うわ!!!!
ジャック:なに!?

 どこからか飛んできた実体弾が、『ネギロイドZ』の左腕を直撃し、銛を発射寸前になっていた『ネギロイドZ』の左腕ごと吹き飛ばしていた!

 その実体弾の発射地点は、最終バンクを越えてすぐの所にある、センターの特殊ボカロットのガレージ前だった。開かれたガレージの手前のコースに、警察用特殊ボカロットが、遠距離ライフルを構えて立っていた。発射口からは、まさに先ほど撃ったときの煙が立ち上っていた。

ミク:な・・・なんで私が撃たれるの・・・

 『ネギロイドZ』と『ヨーモノ改』のコクピットにあるメインモニターに、映像交信可能の緊急用スクリーンが浮かびあがった。そこにはコクピットに乗っている“アペンド刑事”が映し出されていた。

ジャック:アペンドのやろう、何のマネだ?
ミク:アペンド刑事・・・なんで・・・

アペンド:ミクさん、『ヨーモノ改』の右手を見てみなさい

 ミクは頭部を回して、『ヨーモノ改』を見た。そこには、もしそこに『ネギロイドZ』がいたら、確実にナイフでコクピットを貫かれていたであろう位置に配置された、“ナイフを握った右手”、があった。

アペンド:ジャックは、その残り一撃分動ける事を知っていた。だからキミを挑発して、攻撃範囲までおびき寄せ、カウンターに近い攻撃で、キミを殺そうとしたんだよ
ジャック:くっ!
ミク:あ・・・・あぅ・・・・

アペンド:ミクさん!!! こんなクズ野郎を殺して、一生を棒に振ってはダメだ! キミには明るい未来が待っているんだろ? 殺しなんてやっちゃだめだ! それに、私と約束したでしょ、このレースに優勝するって

 アペンド刑事はスマートフォンのアイコンをクリックした。姿がモザイクに代わり、一人の女性に戻った。

ミク:咲子さん!!!!
ジャック:な・・・・・なんだとぉぉぉ!!!!!!!

 センターでも叫んでいた人物がいた。

コーシー:咲子さん!!!!!

ジャック:や・・・やっぱり、アペンドの野郎は俺が確実に殺したんだ
咲子:そう、私はアペンドの妻の、“豊田咲子”。夫が殺された後、お前を捕まえるまで、変装していたのよ…。ミクさん、さっきはあなたをそいつから引き離すため、そして、こいつの機体を爆発させないために、あなたを撃っちゃってごめんなさい。でも、壊した武器はあなたには不要な武器よ
ミク:咲子さん・・・
ジャック:お・・・お前を殺さなかったのは、最大の失策だ・・・くそぉぉぉおおおお!!!!!!
咲子:これまでの交信記録は全部警察が記録している。ボカロットをプロ以上に操縦でき、交信も出来る、そんなヤツを“心神喪失”で逃がしてたまるものですか! 私の夫、そして、娘や被害者のためにも、お前を最大の極刑にしてやるから、楽しみにしていなさい!!!!
ジャック:くっ・・・・

咲子:ミクさん、この攻撃は保安上の事で、まだレースは続行しているの。このクズの事は、私たち警察に任せなさい。あなたが向かうところは、殺人者ではなく、あのゴールラインよ

 咲子のボカロットは、少し先にある黄色い“ゴールライン”を指さした。

ミク:で、でも、まだAHSグループのミキさんが・・・

 そこにミキの『ラブリースター』から無線が入った。

ミキ:ミクちゃんごめーん~! テルのアホが間違って設定しちゃっていたビームを撃っちゃったから、私の機体、エネルギー0で、もう動けないの~!
咲子:センター! ミキさんを助けてあげて! 残念だけど、AHSグループもリタイヤよ

 センターから救護車が『ラブリースター』が立っている位置に向かい、救護を始めた。

咲子:このレースで最後に残ったのは、あなただけ。だから、レースも、アナタがあのゴールラインを踏めば、終了になることになったの
ミク:咲子さん・・・みんな・・・

咲子:さぁ、立ち上がって、ゴールラインに向かいなさい。全てに決着をつけるためにね♪
ミク:はいっ!!!

 ガッチャ!

 ミクの『ネギロイドZ』は左手損傷とはいえ、走行できる状態だったので、ゆっくり立ち上がり、そろそろとコースに戻って、最終バンクを抜け、最終直線に入っていった。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

Run! Run! Run! ボカロット猛レース! 最終話 ゴール!

閲覧数:258

投稿日:2011/07/27 17:52:22

文字数:3,042文字

カテゴリ:小説

  • コメント4

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  • tamaonion

    tamaonion

    ご意見・ご感想

    今晩は!終わりまで読ませていただきました。

    最終話、読んでいて、不思議な感覚がありました。

    ネギロイドの腕が撃たれて、悪役のジャック、ミク、そして咲子が会話をしているとき、
    それまで緊張していた気持ちが緩み、あたたかい気持ちが湧いてきたのです。

    きっとそれは、ゲームや勝負で「勝ち負け」を競うより、もっと大事な何か、なのでしょうか。
    enarinさんの筆力で、そんな何というか、“マインド”が表現されたように感じました。

    (妙なたとえですが、“スポーツマンシップ”というような感覚ですネ)

    こんな感覚を味わっただけでも、すごく読んでよかったと思いました。

    また、期待しています!

    2012/10/08 19:43:58

    • enarin

      enarin

      tamaonion様、こんにちは!

      > 終わりまで読ませていただきました

      有り難うございました! とっても嬉しいです!

      > 読んでいて、不思議な感覚がありました

      娯楽向け、と言って置いて、ちょっとシリアスで、最後はちょっと違うノリ、そんなお話でした。

      > それまで緊張していた気持ちが緩み、あたたかい気持ちが湧いてきたのです

      今回は最後は、レース=モータースポーツ、って原点を持ってきました。このお話はブロック単位で違うノリにしてましたね。レース、事件、アペンドさんの正体、ミクの決意、ジャックの事、全部違う味なんですが、それを1つのお話に持ってきました。

      > きっとそれは、ゲームや勝負で「勝ち負け」を競うより、もっと大事な何か、なのでしょうか

      そうですね、レースの勝ち負けより、もっと大事な事を含んでいたのが、今回のレースだったのだと思います。

      > enarinさんの筆力で、そんな何というか、“マインド”が表現されたように感じました

      有り難うございます! 出来る限りの想像力と筆力で、頑張ってみました♪

      > (妙なたとえですが、“スポーツマンシップ”というような感覚ですネ)

      実際、事件とか殺人とか入ったレースだったら、途中で問題になって止まってしまうのが現実なんですが、今回はそれを全部ひっくるめて、ある意味綺麗な終わり方にしました。

      > こんな感覚を味わっただけでも、すごく読んでよかったと思いました

      本当に有り難うございました! とっても嬉しいです! ”すごく読んでよかった”、これは最高の賛辞だと思います♪

      > また、期待しています!

      はい、最近遅筆ですが、頑張ります!

      これまでのご閲読、コメント、まことに有り難うございました!

      2012/10/09 15:48:00

  • 日枝学

    日枝学

    ご意見・ご感想

    遅ればせながら読了! こ れ は 良 い 大 団 円 !
    決着が着いた後、それで終わるのではなく、ミクが約束通り自分のこれからを自分の意思で決めれるようになり、刑事の道を目指すことに決断するその流れが良かったです。今まで咲子がこの物語にアペンド刑事として大いに関わってきていた分、その咲子と同じ道を選ぶミクの心に共感を覚えました。
    最後のガレージでの場面も良かったです。刑事の道を選ぶことにした場面が『これからのこと』であるとしたら、こちらの場面は『これまでのこと』ですね。
    これまでとこれからのミクの道が変わることを強く意識させられました。学校生活でいう卒業式の時みたいな、新たな道に進む直前の妙な気持ちを感じました。こういうのって、良いですね。
    そういうわけでシリーズ完結お疲れ様です! 良いシリーズでした。面白かったです!!

    2011/08/01 00:12:30

    • enarin

      enarin

      日枝学様、今晩は!

      > これは良い大団円!

      有り難うございます! 今回の最後3話は久々に頭に展開が流れ込んできて、一気に書き上げました。

      > 刑事の道を目指すことに決断するその流れが良かったです

      有り難うございます!! ミクは自分が誘拐事件に荷担したこと&プチ家出&アペンド刑事=咲子さんの影響を受けた事、から、刑事の職に感動したのだと思います。

      > その咲子と同じ道を選ぶミクの心に共感を覚えました

      ありがとうございます!! ミクさんの心を揺らしたのは、レースのパイロットとしての優勝より、自分を助けてくれた咲子さんの心だったのかも知れませんね。

      > 刑事の道を選ぶことにした場面が『これからのこと』であるとしたら、こちらの場面は『これまでのこと』ですね

      有り難うございます! はい、こういう最後もしくはシーンは、これまでの作品でも何回か使ったことがあるんですが、今回の意味合いは、貴方の言われる意味合いだったので、これまでとは違う感じですね。ミクにとっても、レースとしてのボカロットは、この場で卒業になります。『ネギロイドZ』の声は、ミクの心が作った物かもしれません。

      > 新たな道に進む直前の妙な気持ちを感じました。こういうのって、良いですね

      有り難うございます! はい、卒業式で感動しなかったことがない当方なので、こういうシーンはドラマティックにしたほうがいいと思って、こんな感じにしました。新たな道とこれまでの道が混在する場所が、このピットなのでしょう。

      > そういうわけでシリーズ完結お疲れ様です! 良いシリーズでした。面白かったです!!

      本当に有り難うございます!!! 今回はこれまでで一番執筆期間が長い作品になってしまいましたが、最後5話くらいで、ようやっと勘が戻ってきた感じがします。次回もこの感じを維持して、また新しい設定を作っていこうと思います。

      最初で”レース”って言って置いて、途中レースでなくなったのですが、最後にレースが書けてよかったです。

      これまでのご閲読、コメント、本当に有り難うございました!

      2011/08/01 19:45:41

  • ayuu

    ayuu

    ご意見・ご感想

    こんにちは。ayuuです^^
    一気に拝見させていただきました!

    ラストすごくよかったです!
    こう・・・・・・それぞれが強い精神を持って戦うのがかっこいいなあ、と思いました
    ミクもちゃんと自分の将来を決めてよかったですね。

    次のお話も楽しみにしています!

    2011/07/29 11:08:41

    • enarin

      enarin

      ayuu様、今晩は!

      > 一気に拝見させていただきました!

      有り難うございます!!! 嬉しいです?! ここまでの3話は怒濤の如く進行していたので、一気に読める内容だったと思ってます。というか、まとめられるなら、1話に収まるのかも???

      > ラストすごくよかったです!

      有り難うございます!!! 今回はハッピーエンドであり、ミクの決断が重要なキーだったですね。本物のミクの事が語られるのが残り5話ですから、前半は変装したアペンド刑事のミクのこと。後半が本物のミクの事、って分けられますね。

      > こう・・・・・・それぞれが強い精神を持って戦うのがかっこいいなあ、と思いました

      咲子さん変装のアペンド刑事の存在が、なにより大きかったと思ってます。そしてそれを継ぐ意志を伝えたミクさん。こういう関係って、師弟関係ですね。いいですよね、これ。

      > ミクもちゃんと自分の将来を決めてよかったですね

      ここまではっきりと明言するのは、現実では難しいですが、今回のミクさんは決断が早かったですね。レースパイロットにならず、警察のボカロット隊を希望する。なかなか出来ないことです。

      > 次のお話も楽しみにしています!

      有り難うございます!!! ラジオドラマの小説をやりながら、構想を練っていこうと思います。もちっと遅筆を直さないと行けませんね、私は(倒置法)。

      これまでのご閲読、コメント、本当に有り難うございました!

      2011/07/29 21:43:35

  • オレアリア

    オレアリア

    ご意見・ご感想

    enarinさん今晩は!
    おお、遂にボカロットレースシリーズ完結ですね!
    長期間に渡る執筆、本当にお疲れ様でした!

    全ての真相が明らかになり、アペンド刑事…もとい咲子さんの因縁も晴れて、最後は大団円のハッピーエンドで本当に良かったです!
    ミクの命を懸けたジャックとの戦い、その曲がらない決意が凄く印象的でした。

    次回からは何を執筆されていくのでしょうか!?変わらず楽しみにしていまね!

    2011/07/27 22:16:07

    • enarin

      enarin

      オセロット様、こんにちは!

      > おお、遂にボカロットレースシリーズ完結ですね!

      はい、今回は期間が長すぎました、遅筆で申し訳ないです?。

      > 長期間に渡る執筆、本当にお疲れ様でした!

      有り難うございます!! おかげさまで今回のシリーズも無事、完結する事が出来ました!

      > 全ての真相が明らかになり、アペンド刑事…もとい咲子さんの因縁も晴れて、最後は大団円のハッピーエンドで本当に良かったです!

      ジャックの過去は謎のままにしましたが、とりあえず全部コネクトさせて、明らかにしました。最後は結局、咲子さんはアペンド刑事として、そのまま警察に残る事になりました。ミクさんという後輩が出来て。

      > ミクの命を懸けたジャックとの戦い、その曲がらない決意が凄く印象的でした

      この3話分の展開は、小説の時間としては非常に短いと思います。雪崩の如く終わっていきました。ミクvsジャックというかボカロットパイロット全員vsジャックですが、命をかけた戦いでしたね。そして、ミクの決断は、結局変わらなかったけど・・・

      > 次回からは何を執筆されていくのでしょうか!?変わらず楽しみにしていまね

      有り難うございます!!! 続・駅前商店街(ラジオドラマも同時進行)も続いてますが、小説単騎の新シリーズに関しては、”さーて、何にしよう”、って感じです。最初の初期設定は非常に大事なので、色々考えようと思います。毎回約10話完結で書いてますが、毎回6000文字オーバーなので、そこそこの長編としては続けられるので、頑張ろうと思います!!

      これまでのご閲読、コメント、本当に有り難うございました!

      2011/07/28 16:36:54

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