しかし、彼の胸襟にはどこか満たされぬ思いがあった。キャンパスライフは充実しているし、友人も普通にいる。
趣味がピアノの他にギターも弾いているためにバンドサークルから勧誘され、ギターとシンセサイザ、キーボードを担当している。ちなみにバンド名は真意という意味の『AEMEATH』である。
それなのに満たされぬとは、どこに原因があるというのか。
「お疲れ様」
季節は既に冬。スタジオでのバンドの練習後、ドラム担当の石神が缶ジュースを幸宏に手渡した。幸宏は俯いていて、突然渡されたものだから微かに驚いた。
「ああ、すまない」
「これから皆で飯食いに行くんだけど、乃木も一緒にどうだ」
「気持ちはありがたいんだが、新曲があと少しで完成なんだ」
幸宏はバンドの曲も手がけている。AEMEATHは、コピーとオリジナルを奏でるバンドである。
「そうか、それは悪かった。ただでさえ大変なのにな。だが、気晴らしや息抜きは大切だぞ」
「こちらこそ悪いな。じゃあ、みんなお疲れ様」
幸宏はメンバー四人に別れを告げて足早にスタジオを出た。
Fragile angel 2
続きです。ミクはあと少しで登場します。
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