しかし、彼の胸襟にはどこか満たされぬ思いがあった。キャンパスライフは充実しているし、友人も普通にいる。

 趣味がピアノの他にギターも弾いているためにバンドサークルから勧誘され、ギターとシンセサイザ、キーボードを担当している。ちなみにバンド名は真意という意味の『AEMEATH』である。

 それなのに満たされぬとは、どこに原因があるというのか。

「お疲れ様」

 季節は既に冬。スタジオでのバンドの練習後、ドラム担当の石神が缶ジュースを幸宏に手渡した。幸宏は俯いていて、突然渡されたものだから微かに驚いた。

「ああ、すまない」

「これから皆で飯食いに行くんだけど、乃木も一緒にどうだ」

「気持ちはありがたいんだが、新曲があと少しで完成なんだ」

 幸宏はバンドの曲も手がけている。AEMEATHは、コピーとオリジナルを奏でるバンドである。

「そうか、それは悪かった。ただでさえ大変なのにな。だが、気晴らしや息抜きは大切だぞ」

「こちらこそ悪いな。じゃあ、みんなお疲れ様」

 幸宏はメンバー四人に別れを告げて足早にスタジオを出た。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

Fragile angel 2

続きです。ミクはあと少しで登場します。

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投稿日:2010/08/11 15:14:37

文字数:473文字

カテゴリ:小説

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