メロディア

Wow... Wow...
la la la la...
いつのまにか　周りが見えなくなって
温かいものも　冷たく感じていた
優しい人も　お節介だと厭って
差し伸べた手を　冷たくあしらった
飛び出した私は　行き先も決めずに
満たされる場所を　ただ探し回った
そこは静かでまた　あたたかい場所
雨が降る...

私は貴方と歌いたい
私は貴方と笑いたい
私は貴方の愛が欲しい
※
貴方にとって 私は堕天使
壊れて会った 私は堕天使
貴方は泣いてる 心で泣いてる
私には分かるの 貴方の心が
初めて会った あの夕暮れ
貴方は私を 呆けて見ていた...

このまま　なにもかも消えてしまえばいい
何か残ってしまうのは　どこか辛くって
消えたあともいつか　耽って思うことはあるのかな？
今までの思い出は　きれいな抜け殻のように
透き通っていて　もの足りなくて
忘れられてしまうよね　ベッドに倒れて泣いていた
綺麗な思い出も　忘れたい悪夢も
みんな浄化して　全...

なにもかも 癒されて
甘い優しさ とてもここちよくて
僕への思慮に 心を支配されて
苦しまなければ私は幸せです
僕はひとつの 矮小な人間で
君のような人に 会えたのは
甘い気持ちにさせて そして後悔させてくれる
Bad pain 潤うだけ
締め付けられる 僕の淡い恋慕
Fallin' breake ...

(イントロ)
消えてゆく この夢を
離さないで ずっと持ってたい
ゆらめく幻想に 私の心が映る
燻る夢を抱いていた
だけど その夢は
どこか現実味がある
何故映すの？ ただただ卑しいのに 苦悩する私をさらに責める
苦しくて叫びそう このまま苦しみに果てていくの？
だけど中には 幸福が微かにあった 縋...

〇　〇　〇
　数日後の、夕方のやや暗い喫茶店。授業が全て終わり、幸宏は由佳里に頼まれていた講義の不明点を解説し、昨夜即興で作曲したインストゥルメンタル曲を、モバイルパソコンを介して彼女に聴かせてあげていた。
「今までの乃木君の作った曲にしては、角々しくないというか、少し余裕を持たせているというか、と...

　一曲を歌いきり、ミクは再び幸宏に語りかける。
「幸宏さん、如何でしたか」
「素晴らしい、素晴らしかったよミク。お前に、いや、君にはまず謝らなければならない。今まであねような酷い扱いをしてしまって、本当に申し訳なかった。好きなだけ殴っていい。許してくれ……」
　幸宏はベッドから床に座り込み、立ち塞が...

　間奏に差し掛かった。ミクは片手で頭を抱える幸宏のもとへ歩み寄った。
「幸宏さん、私は腐っても、歌う種族、『ボーカロイド』です。ボーカロイドは、自分の歌声に自身の感情を乗せて歌うことができるのです。嬉しい気持ちを乗せれば聞き手は嬉しい気持ちを、暗い気持ちを乗せれば聞き手も暗い気持ちになります。私はボ...

「貴方にとって 私は堕天使　壊れて会った 私は堕天使　貴方は泣いてる 心で泣いてる」
　ミクは語尾を伸ばし、フェードアウトさせて瞼を閉じた。
　歌唱力は相変わらず並以下である。歌いだしのキーが合わず、ブレスが遅れ、旋律を時折間違えている。
　しかし、今までの彼女の歌う姿とは、はるかに違っていた。
(...

〇　〇　〇
　デスクトップパソコンを起動し、ジュークボックスのアプリケーションを起動させる幸宏。彼女が何故あの条件を飲んだのか分からずにいた。
(何故だ、何故条件を飲んだんだ)
　暫しすると、アプリケーションを制作した企業のロゴが現れて数百ある楽曲が五十音順にリストアップされた。
「さて、ここから自...

「俺は俗に言う完璧主義者なんでね。自分が納得した音楽を試行錯誤して作り上げてる。だから歌う人間も上手いヤツにしか興味がないんだ。お前のような音痴なんぞに構っている暇もなければ、お前をここ住まわせて養う義務も無い」
「そんな排他的な考え方を持っていて、よくあのような素晴らしい音楽を作れますね」
　幸宏...

「幸宏さん、貴方は歌うことについて、間違った解釈をしています」
　振り向き様の幸宏の足は止まった。
「幸宏さん、以前私に『歌を歌う者はそれなりの歌唱力が必要だ』と教えてくれましたよね？　確かに、それは一部正論だと思います。ですが『音痴は歌う才能は皆無であり、クズだ。上手いヤツだけが良い歌を届けられる...

「うちは孤児院でも、保護施設でもない。まして音痴の異世界から来たワケの分からない女なんて尚更御免被る」
「やっぱり私、幸宏さんと一緒に住みたいです。保険証や戸籍謄本もこちら側のコネであらかじめ作ってますし……」
　幸宏は突然ミクをつまみ上げた。
「出ていけ！」
　玄関から冷たい風が吹く外へ放り投げ、...

　それはある夜。今日はライブの帰ってすぐの玄関にて。
「お帰りなさい、幸宏さん」
　新婚の新妻のように彼を迎えるミク。可愛らしい青緑のフリルをあしらったエプロンを纏い、カレールーのこびりついたお玉を持ち、満面の笑みを浮かべている。
「ただいま」
　それだけ言って、幸宏は靴を脱ぎ、ミクを避けてリビング...

「ほ、本当ですか？　あ、ありがとうございます！」
　ミクは自らが負う彼への詫びと感謝の気持ちを込めて、精一杯頭を下げた。
　是認した幸宏は、とんでもない女を自ら掴んでしまったと心から悔やんだ。
〇　〇　〇
　だがしかし、ミクは一向に幸宏の家から出ようとはしなかった。彼女曰く、「無銭兼音痴はどこも雇っ...