「貴方にとって 私は堕天使 壊れて会った 私は堕天使 貴方は泣いてる 心で泣いてる」
ミクは語尾を伸ばし、フェードアウトさせて瞼を閉じた。
歌唱力は相変わらず並以下である。歌いだしのキーが合わず、ブレスが遅れ、旋律を時折間違えている。
しかし、今までの彼女の歌う姿とは、はるかに違っていた。
(なんだ、これは……?)
幸宏の身体に、今までに感じられなかった衝撃が走った。暫しの間奏の後、再びミクは目を開き、息を吸い込んだ。
「私には分かるの 貴方の心が
初めて会った あの夕暮れ
貴方は私を 呆けて見ていた
私はただの 人形だったから
最低限の言葉しか 言えずにいた 貴方は 私を厭って「不良品」と言って 頬を叩いた 私は 心が小さかったから ただ貴方を 見つめていた」
彼女の酷い歌声から、優しげで暖かな手が現れて幸宏を抱擁する。彼は、幼少の頃に味わった我が母親の抱擁を思い出したのだ。柔軟剤の良い匂いのする母親の服からも伝わる、母親の深い愛情が、幸宏の記憶の片鱗から掘り返された。
(こいつ、一体なんでこんな力があるんだ!?)
幸宏は混乱する。彼女は今までこの謎の力を隠してきたのかと、最初に歌わせた時の歌声は今の『本当の力』を出していなかったのかと、彼女の歌声に宝石の原石のような成分があったのかと。
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