「うちは孤児院でも、保護施設でもない。まして音痴の異世界から来たワケの分からない女なんて尚更御免被る」
「やっぱり私、幸宏さんと一緒に住みたいです。保険証や戸籍謄本もこちら側のコネであらかじめ作ってますし……」
幸宏は突然ミクをつまみ上げた。
「出ていけ!」
玄関から冷たい風が吹く外へ放り投げ、幸宏は玄関のドアを繁雑な様子で閉めてしまった。外は約四度ほどか。ミクは大きな身震いをしながらドアを叩いた。
「そんなこと言わずに中に入れて下さい! 私、寒くて死んじゃいます~!」
「五月蝿い、悪質なぬらりひょんが。近所迷惑だ」
ドア越しに幸宏の声が伝わる。
「私は妖怪じゃありませ~ん!」
風が吹き、ミクは一層身震いする。薄手の長袖にミニスカート、オプションで黒のニーソックスではやはり寒い。
「勝手に野垂れ死ね。家事は俺が元からできるっての」
「そ、そんなこと言われたら私の立場がありません!」
「家事手伝いの仕事でも探せ」
ミクは急に黙り込んだ。もうガキのような反抗は諦めたのだと幸宏は思い、玄関から去ろうとしたとき、彼女は微かに口を開いた。
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