いつからだろう。

リンが女、僕が男ということがハッキリしてきたのは。

リンは中学に入った途端、僕と同じベットで寝るのを止めた。

僕とお揃いのTシャツを着なくなった。

そして、僕に触れようとしなくなった。

普通のことかもしれない。

僕もリンも思春期なのだから。

僕もずっとそう思っていた。

これが僕たち双子の“普通”なんだと。

でも、リンの笑顔を見る度胸がキュッと音を立てるのだ。

それは実の姉に対するものであるのはおかしいのだと分かっている。

分かっているがいくら静めようとしても静まらない。

「レン!あんた私の靴下食べたでしょっ!?」

「食うわけないでしょ…」

「じゃあどこ行ったのよ!?」

「……はぁ…洗面台にあったものは何なの?」

「洗面台…?あ、あった!!」

「毎回そこに置き忘れるよね。いい加減もの整理したら?」

「う…。仕方ないじゃん…」

「何がどう仕方ないの。」

「うぅ…っ。レンの鬼畜っ!!」

「鬼畜って…」

「とりあえず!私デート行くからっ!!」

──デート…─?

「クラスの男子がしつこいからさ。付き合ってないけどね!」

付き合ってないのに、リンはオシャレするのか。

普段制服以外のスカートなんて着ないのに。

「……へぇ…良かったね。」

「うんっ!」

いつもならキュッとなる笑顔なのに、今日はギュッと締め付けられた。

「……値札、付いてるよ。」

「え?あ、ホントだ!」

少し恥ずかしそうに値札を外そうと試みる。

だが、リンは苦戦していた。

「レン…」

「…何。」

大体わかってる。

「値札、取って?」

「…後ろ向いて。」

リンは言われるまま後ろを向いた。

僕より少し小さい背に柔らかい素肌。

同じ母親から産まれて同じ環境に育ったのに男女だとこんなに違うのか。

僕より細い首。

僕よりさらさらな金髪。

僕より純粋なこころ。

「取れた?」

リンが振り向く。

「もう少しだよ。」

「早くしてよ。」

リンのこころごと僕のものになればいいのに。

リンの笑顔が僕だけのものになればいいのに。

「取れたよ。」

「ありが──!?どうしたの!?」

抱き締めて繊細さが分かる。

もう、壊してしまおうか。

リンが僕を、男の僕を見てくれるなら、すべてを壊してしまおうか。

「レン──?」

「あ、ごめん。ちょっとぼうっとしてて。」

でもそんな勇気は僕には無くて。

多分、僕はリンが他の男のところへ行く姿を見守るしかないのだ。

「やば、こんな時間!!じゃ、いってきまーす!!」

笑顔で出ていく。

そんなリンを僕は見ることすら出来なかった。

──いつか僕はリンを兄弟としての笑顔で送り出すことが出来るだろうか。

もしそれが出来たなら僕は他の人を愛せているだろうか。

この気持ちを笑顔で思い出せるだろうか。

「値札、捨てなきゃ…」

握っている値札をゴミ箱に入れた後に残ったのは虚しさと寂しさだけだった。





fin.

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

only mine

咄嗟に思い付いた。
ごめん何か……うん。
虚しいの書きたかった。
あとたいとる適当

閲覧数:168

投稿日:2011/08/18 13:52:37

文字数:1,279文字

カテゴリ:小説

  • コメント2

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  • 魔熊

    魔熊

    ご意見・ご感想

    切ない…
    レンも新しい出会いがあると良いな。
    二人が幸せになれると嬉しい。

    その文才が欲しい!!

    2011/08/18 14:11:59

  • 檸檬飴

    檸檬飴

    ご意見・ご感想

    咄嗟に思いついて書けるってスゴい!
    さすがに靴下は食べないよねww
    最後切ない(>_<)

    連載は投稿しないの?

    2011/08/18 14:05:48

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