緊張が消えた訳じゃない。だけどもう震えは止まっていた。自分の単純さに感謝するべきかも知れないなぁ…。

「準備出来たらカメラ回すから、最初はそのまま歌って、歌の後に呼び掛け、
 で良いかな?リヌちゃん。」
「はい。」
「じゃあ…。」
「…っ!」

曲が流れる寸前だった。微かに、本当に微かに耳に届いた。

「どうしたの?リヌちゃん。」
「歌…誰か…誰か歌ってる…。」
「…聴こえないけど…?」

空耳…?ううん、違う!遠いけど確かに聴こえる…高く高く澄んで真っ直ぐな…私知ってる…この声は…!

「ユウ先輩…?」
「え…?」
「リヌさん、歌っている曲は判りますか?」
「んっと…はい、判ります。」
「………。」
「翡翠?」
「リヌさん、同じ歌を歌えますか?もしかしたら彼女の場所を辿れるかも
 知れません。」
「は、はい!」

微かにしか聞こえないけど…この歌は知ってる。私が凄く落ち込んだ時ユウ先輩が歌ってくれた。泣くの我慢してたけど、それで一気に涙出ちゃって、先輩を困らせたんだっけ…。

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 私は願う 恵みの光 砂の大地よ 緑あれ
 枯れた草木よ 咲き誇れ 種よ芽吹かん 命の光

 私の歌は届いているの?私の声は響いているの?

 どうか全てに光が満ちて
 どうか全てに歌が溢れて
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「わっ?!何?!地震?!」
「違います…これは…!共鳴してる…?」
「どうするの?!良いの?!」
「そのままカメラ回せ!いっそテロップでも良い!歌を…この歌を聞かせろ!」
「わ、判った!」

聴こえる…遠くだけど…側に居るみたいな…ユウ先輩…?

『助けて…助けて…』

そうか…これもBSの力なのかな?だから聴こえるのかな?

『助けて…助けて…!』

歌える…歌えるよ先輩…ねぇ、翡翠さん…私も…戦える…!

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 私の歌よ届いていてね 私の声よ響いていてね

 どうか全てに光よ満ちて
 どうか全てに歌よ溢れて


 私は紡ぐ 祈りの歌を 地に降り注ぐ 恵みとならん
 緑を揺らす 恵みとならん 種よ芽吹かん 命の歌よ

 私の歌が届いていると 私の声が響いていると

 信じてる もう 迷いなど 断ち切ったのだから
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『信じてる もう 迷いなど 断ち切ったのだから』

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

BeastSyndrome -96.共鳴-

牙も爪も無くても、それでも戦える

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投稿日:2010/07/06 01:21:18

文字数:1,166文字

カテゴリ:小説

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