>>01
『子供から大人まで、誰もが楽しめる仮想現実(バーチャルリアリティ)』
それが、その体感ゲームの宣伝文句だった。
――ヤバイな。
ショーウインドウの向こう側に貼られたその大きな宣伝ポスターを見て最初に思ったのはそれだった。
その体感ゲームの名は、『Elysian(エリュシオン)』。確かギリシア神話か何かの理想郷とか何とか・・・まぁとにかく、それと同じ名前だった気がする。おそらく。
Elysianは、自分の理想郷を求めて戦いを繰り広げていく・・・そんなゲーム。勝者が自分の望む世界を手にすることができるというものだと友人に聞いた。
機械の中に入り、様々な機器を取り付けて脳波から細部の行動に至るまで全てを仮想現実に持ち込み、パートナーとなるキャラクターを選んで共にゲームを進めていく。パートナーとして登録できるキャラクターは一人につき一人と決められているらしい。若干二人で一人と換算されるキャラクターもいるようだが、詳しくは知らない。
年齢、生年月日、キャラクターの名前を入力すると、機械が勝手に身体能力を測定して、その結果に基づいたステージでプレイすることができると聞いた。年齢が低いほど簡単で残酷な表現はカットされているらしい。話によれば低年齢だと魔法を使ったり空を飛んだり、難しいところはヒントが出たりするようだ。高年齢の人がプレイする時もそういう風になっていると聞いたことがあるが、高年齢でプレイする人間がいるのかどうかは甚だ疑問だ。好きな人もいるかもしれないが。
年齢の上に身体能力測定の結果も上乗せされるということは、難しいコースは適度に若くて身体能力が高い人間じゃないと最初からプレイすることはできないということになる。どうやって作ったのかは知らないが、とんでもないゲームができたものだ。
プレイしたことがある友人の話によれば、セーブもできるらしい。この辺は確かにゲームだと思う。実際に自分が戦うということからすると、アトラクションと言ってもいいような気もする・・・それでも、やはりゲームの要素が強いと思うが。大体アトラクションとかゲームとかどういう定義なのか俺は知らないから、あまりこういうことは言わない方がいいだろう。
何となくだが、俺はこのゲームに危機感を抱いていた。ほとんど現実世界と変わらないリアルな世界。触れることまでできてしまう・・・そんな世界。もしかしたら、戻ってこなくなる人が出てくるのではないのか・・・どこかでそんな危惧があった。実際には「24時間以上のプレイを禁止します」「24時間プレイした場合、8時間以上次のプレイまで時間をあけてください」等のルールがあり、24時間プレイし続けようとすると強制離脱するように設定されているらしいが。
今そのゲームは、随分広まっている。最初はElysianの名の付く大きな本店が一件だけだったが、予約でいっぱいになってくると支店が増え、それだけに留まらず小さなゲームセンターでも三台ほど完備されるようになった。一応管理するシステムがあって、そこからプレイしている映像を見ることもできる。一度見たことがあるが、本当の世界がそこにあるんじゃないかと思うほどリアルだった。
興味がないというわけではなく、どちらかと言うと興味がある方で一度はやってみたいと思っていたが、人も多かったしもう少し落ち着いてからプレイしようかと思っていた。
「お前だったら絶対SSいけると思うんだよな」
「だぶるえす?何だそれ」
今まで携帯の話をしていたというのに、何の脈絡もなくそんなことを言ったハルに、俺は意味もわからず眉を寄せた。
「んー?」とカチカチと携帯を弄りながら、ゆっくりと俺に視線を合わせると、また携帯に視線を戻す。つい三日ほど前にできた彼女にメールしているのだ。これからデートだったらしいが、彼女に急な仕事が入ったとかで来れなくなったらしい。
メールを打ち終わったらしく、ハルは携帯を閉じて俺の背中をバンッと勢いよく叩いた。
「ELY(エリイ)だよ。お前頭脳明晰だし運動神経も人並み以上じゃん?」
「ああ・・・Elysianなー」
絶対お前だったらいけると思うんだよなー、だってゲームとかも上手いじしさ?と付け足して笑うハルに、「さぁ、どうだかな」と肩を竦めてみせる。
ゲームは確かに苦手じゃない。勉強も苦手じゃないし、運動も苦手じゃない。でも、ただそれだけだ・・・完璧にできるわけじゃない。
「で、SSってのは何だ?」
「SSってのはSSランクステージのことだよ。
GとFが低年齢高年齢向けのコースで、普通がE,D,C,B,Aの5コース、
そこよりももっと上にSとSSがある」
Aランクの奴もあんまりいないんだけど、SSなんて言ったらもう別格なんだぜ。何故か誇らしげなハルに、何でお前が威張ってんだよと笑う。
因みに、ハルはBランクをクリアしたから次はAランクにチャレンジするんだとか。普通のゲームのように上に上がることはいくらでもできるらしい・・・年齢制限をクリアしていればの話のようだが。能力だけじゃなくて慣れとかも重要だろうし、当然と言えば当然か。
「っつーわけで、今日はELY三昧にしようぜ。仕事休みだしな!」
調子の良いことを言うハルに、「よく言うよなー、俺もお前も仕事見つかってねぇじゃん」と言ってみれば、「それを言うなよ」と落ち込んだ声で肩を落とした。
ハルの話によれば、夏休みは何かキャンペーンをする予定だと店の人に聞いたらしい。丁度昨日からほとんどの学校は夏休みに入ったところだ。もしかしたらあまりお金がかからないかもしれない。
とりあえず俺たちは本店に行ってELYをプレイすることになった。
本店の中に入ると、綺麗な女の人がいて空いている機械へと案内された。驚いたのは、一つの部屋に随分と多くの機械が置かれていることだろうか。小さい一部屋に一つずつというイメージがあったのだが、その予想ははずれた。
一時間500円・・・高いのか安いのかよくわからないが、これだけの機材を使っているということから考えれば破格の値段だろう・・・と思う。
毎日遊んでる奴もいるらしいが、そこまでのめり込むゲームなのかどうかはわからない。それは今から体験すればわかることだろう。
「本日からSSランクステージキャンペーン中です。
年齢制限さえクリアしているお客様でしたら、
どなたでもSSランクコースにチャレンジすることができます」
「え、マジっスか!?」
ラッキーとはしゃぐハルを尻目に、俺は機械の画面に従って年齢と生年月日、キャラクターの名前を入力していた。年齢、生年月日・・・それから、キャラクターの名前は・・・・・・本名をそのまま入れても問題ないだろう。苗字も入れないし、生年月日も年齢も表示されないらしいし・・・。
「S・Y・U・N・・・シュン、と」
画面に入力完了しました、という文字が流れる。そうかと思った瞬間、カシャンと手首に何か機械が撒きつき、ゴーグルのようなものが装着される。全身を何かに掴まれるような感覚だ。ただ、それは装着されたというだけで、体の自由は奪われてはいなかった。多少動きにくいが。
次に、画面にパートナーを選択してくださいという文字が出てきた。画面を指示のまま操作すると、KAITO、MEIKO、初音ミク、鏡音リン・レン、巡音ルカという6人が映し出される。この画面の説明によれば、性格はランダムらしいが外見だけは選べるらしい。画面を見つめて小さく息をつく。
「野郎・・・と一緒に動くってのはちょっとなぁ・・・」
ただでさえ毎日ハルとばかり会っているのだ・・・こんなところまで男と一緒にいたくはない。ということで、このKAITOって奴は除外。初音ミクと鏡音リン・レンはちょっと年齢が低いしな・・・一緒に歩いてると兄妹、もしくは兄弟って感じだろうか。性格はどれも底抜けに明るそうな気がする。あんまり賑やかすぎるのもアウトだ・・・ということでこれも除外。あとはこのMEIKOってのと巡音ルカって奴だが・・・どちらかというと俺はMEIKOのが好みなんだけどな。たまにはお嬢様っぽいキャラもありか。
「じゃあルカってやつにするか・・・」
呟きながら選ぶと、設定完了しましたという文字が映し出された。これで全て終わったらしい。
隣の機械を見ると、既に準備が終わっているハルと目が合った。ワクワクという言葉がぴったりのその表情を見ていると、自分も鼓動が高鳴った気がした。
「キャンペーン中にSSランクステージをクリアしたお客様には、
プレイ代金を返却しておりますが、チャレンジされますか?」
マジで!?とまたもやハルの声が響く。
周りの機械に入っている人たちに思わず目をやったが、当然聞こえているわけもなかった。耳にはヘッドフォン・・・聞こえているわけがない。
「・・・あの、これってどういう機械なんですか?」
「精神体を電子化する機械といいますか・・・
このゲームに入られた皆様は、ここに在ってここにはいないのです」
ゲームの中に本当に入ってしまうんですよ、と優しい声で女の人が言う。幽体離脱みたいなもんだろうか。といっても幽体離脱なんかしたことがないし、結局よくわからんが、とりあえずプレイしてみるか。
このお姉さんの話によれば今回キャンペーン中のSSランクステージは特別製のものらしく、早ければ24時間以内にクリアできるらしいし。
ただし、普通のSSよりも難易度が高いのだという。利益を出すためには仕方のないことだな。それを知った上でも、これだけプレイしている人間がいるというのは驚きだ。俺もその例に漏れず、クリアする気満々なわけだが。おそらく隣にいるハルも、だ。・・・あ、ここにいる奴ら全員がSSをしてるわけではないのか。
お姉さんはメインシステムに繋がっているらしいパソコンに何かを打ち込んで、にこりと微笑む。
「SSランクステージに設定いたしました」
「お、言ってないのに気が利くね?お姉さん」
ハルにそう言われ、彼女はまたにこりと笑った。こういう男の扱いには慣れているのか、何か言葉をかけることはない。相手にするだけ調子に乗る男だとバレバレなようだ。
お姉さんの手がもう一度パソコンを触ると、キュウンと耳元で稼動音がした。
「では、良いダイブを」
その声が妙に響いて聞こえたかと思うと、お姉さんが畏まったように礼をする姿が映る。それが、ダイブ前に最後に見たものだった。
>>02
Elysian 01
夢を元に始まったElysian・・・実際にゲームの話でした。タイトルは後付けですが。
よくわからないのに普通にスルーしてプレイしてました。ルカさんパートナーで。
MEIKOさんとルカさん、どっちがいいと言われたら自分は悩み続けます・・・(笑
夢の場合はゲームに入った瞬間に決まってたしなー・・・。
注意書き書くの忘れてました。
必要になったら付け足しておくことにします。
プロローグでわかると思うのですが、戦闘多くなると思うのでグロテスク描写注意です。
一応軽くするつもりですけどね。
まぁ・・・そこまで書ければの話ですが(お前
今回はゆっくりマターリやっていきたいと思います。
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ご意見・ご感想
+KK
その他
>>ちくろさん
こんにちは、ちくろさん。
騙されたというのは、エイプリルフールの注意書きのことですね!ニヤリ
イベントがあるたびに言葉だけ言ってスルーしてたので、エイプリルフールぐらいは・・・とちょっとやってみたのでした(笑
ありがちだから皆騙されたという・・・笑えない。
そ、そして・・・!またイメイラ挑戦したいと!おぉぉっ!
E・Bのイメイラの際は宣伝までしていただいて・・・本当に頭が上がりません。
もうご自由にいくらでも描いてやってください!こっそりお待ちしてます(笑
まったり頑張っていきますのでこれからもよろしくお願いしますね。ではでは。
2009/04/03 15:22:59
こか
ご意見・ご感想
こんにちは。思いっきり騙されちゃいました☆ちくろですw
今回もまったり頑張って下さいw
もしかしたらまたイメイラに挑戦させて頂くかもしれません。よろしくお願いします。
2009/04/03 12:43:46
+KK
その他
>>鈍痛さんv
わーい、いらっさーい!ドンツー☆さん!←
こっちではお久しぶりです。最近他の方からもめっきりメッセージ減ってしょげてました・・・少し。
メッセージのためだけにやってるわけじゃないですが、やっぱり感想いただけるのって嬉しいことですしね。
電波で~云々言いながらちょっと不安だったり。
しかもエイプリルフールネタに思いっきり騙されたとか・・・!ニタリ(悪そうだな
本当なら最終話だったら2パターン用意したりできたんですが、最初だったのでできませんでした。残念。
タイトルはゲームの名前でした・・・らしいです。
自分だったらパートナーは・・・最近の流れ(前2作)から言って、やっぱり兄さんかめぇちゃんかルカさんになるわけですなー・・・何も考えなかったら明らかに二人とれる鏡音双子がお得かと!(笑
シュンとハルとか・・・名前安易でサーセン・・・。
序章につくまでまた長くなりそうで怖いところですが、またゆっくり見ていただければ嬉しいです。
いやいや、マターリと次回まで待っていただければ幸いです。
ではでは~。
2009/04/02 08:42:15
痛覚
ご意見・ご感想
エイプリルフールも過ぎたところで…
思いっきり騙されました\(^o^)/
どうも、ピアプロではお久しぶりです。鈍痛です。
すっかりエイプリルフールの事を忘れてました(笑
題名はゲームの名前だったんですね。
私だったらパートナーは間違いなくレン君を選びます!!
レン君と一緒に異世界ランデブー(笑
あとは、何気にシュンとハルの展開が気になります。
Elysianの序章では何も残っていなさそうでしたので、もしかしたらハル君は…!?
とても次回が気になります!!
それではマターリと次回もお待ちしております♪
2009/04/02 01:25:12