＃３４



ミクが黒い塊の中にはいって姿を消した

すると今頃、非常用の電灯がついて、部屋の中をうっすらと明るくする……


メイコは辺りを警戒しながら、倒れているカイトに駆け寄る


「カイト！カイト！しっかりして！」

「ん……んん？」


カイトが反応し、メイコはほっと胸をなでおろす

カイトはまだ目を覚まさないようだが、ちゃんと息をしているし、外傷もなく、心配はなさそうだった



メイコはカイトを壁に寄りかからせて、立ち上がる

そして、斬った相手の血が地面に付いているのを見つける


「……やっぱり、あの子は……あの時の……」


歯を食いしばって、ゴンッと壁を殴るメイコ





「メイコさーーん！！」


その時、遠くからミクの声が聞こえる

メイコは刀を握る


「はぁ、はぁ、はやいですよ……メイコさん」


そこに息を切らしてあらわれたミク


「なんで戻ってきたの……」

「え？なんでって……？」


ミクがきょとんとする

が、次の瞬間、おびえた顔になる

メイコがものすごい気迫と形相で、ミクを睨んでいたからである


「……あ、あの……えっと……す、すみませんでした！」


とりあえず、ミクが頭を下げる

けれど、次の瞬間、ミクの体はドーンと音をたてて壁に押し付けられた


「かっ！……く、くるしい……です。メイコさ……」


ミクの体を宙に浮かせて、首根っこをわしづかみにするメイコ

ミクは脚をバタバタとして逃れようとするが、後ろは壁……しかも、メイコの力で首が固定されてしまっていてはどうしようもない


「やっぱり……あなたを信用しなきゃよかったわ」


怖い顔で刀をミクにつきつける


「……や、やめてください！」


ミクは涙目になる


「今更、演技はいいわ！！」

「かっ！がっ……ぐ……」


メイコの手に力が入る

ミクの細い首がさらに締まる


「あなたの狙いは何！！言いなさい！言わないなら、このまま……」


メイコの殺気あふれる目……

ミクの目が虚ろになっていく……





「めーちゃん！！！何をしてるんだ！！！」


そこに気がついたカイトが止めに入る

メイコの手がミクから離れる


「おい！ミク！大丈夫か！」

「げほっ！！げほっ！！！……が、がはっ！！……はぁ、はぁ、はぁ」

「ほら……ゆっくり、息をすって……」


せき込むミクをカイトが優しく介抱する


「ちょっと！カイト！何考えてんのよ！そいつは……」

「馬鹿野郎！！」


パシンと頬をぶたれたメイコは、目を丸くする


「めーちゃんこそ、何考えてんだよ！仲間を自らの手にかける気か！」


カイトが大声でメイコにむかって怒鳴る


「え……だって……そいつは……」

「冷静になるんだ！こんなのめーちゃんらしくない！」


真剣な表情のカイトと、困惑するメイコ


「めーちゃん……この子は、あの時の【アイツ】じゃない」


カイトが静かにそういった