それは遠く遠い昔の話。
世界を支配する神々がいました。
神々は四神と呼ばれていました。
朱雀、青龍、白虎、玄武。
神といえども歳をとる。そして人間に神の力を宿すことにしました。
彼らは神の力を手に入れ、今もどこかで生きているそうです。
悲しいことに、朱雀と青龍の力を宿す人間は姿を隠すことで、現代の人々の記憶からは消えかけています。
ある場所に異能者が集まる組織が存在しています。彼らの目的は四神を守ること。異能者としての能力を使うことで、四神の力を利用しようとする者から神を守る。
その組織は新泉組と呼ばれています。
これから語る物語は、彼らの人生の軌跡。
ピピピピピ
部屋中に鳴り響くアラームの音。
時計のスヌードボタンを押せば二度寝しようとする少年、名前は荒瀬九。
ドドドドド
その直後に鳴り響く足音。
障子を開ける音がする。
「いつまで寝てんだ!今日は白虎様がお越しになるんだぞ!」
大きすぎる声を出す男性、名前は久方駿河。
九はむくりと起き上がれば、目を擦りながら駿河を見上げる。
「すいません、夢の中で白虎様にはご挨拶してました。」
九は目を擦るのをやめれば目尻を下げて、続けた。
「んなわけあるか、ドアホ!!」
駿河は拳で九の頭をコツンとすれば、「はやく、支度しろ」と言えば、ズカズカと外へと出ていった。
出ていったのを確認すれば、九はゆっくりグラグラと立ち上がり、布団を畳む。その後、障子を開ければ、厠へと向かった。
ガラガラと扉を開けると、目の前にいたのはアホ毛が一本ピンと立ち上がっている少年だ。彼は、吉野賢(ヨシノケン)。
「あ!九君、おはよー!今日も寝坊?」
吉野は九を頭から爪先まで見ると、いつもの明るめの声で言った。
「はい…。」
「さっきの駿河さんの怒鳴り声はそれだったんだねぇ〜」
吉野は鏡の前へ行き、歯ブラシを持てば、そう言った。
九は用を済ませば、吉野の隣まで行き、手を洗い始めた。
そして、自分の顔を鏡で見る。
濡らした手で寝癖を治しつつ、前髪が目を隠すようにセットする。
「僕は九君、オン眉とかの方が似合うと思うんだけどなあ。」
九の前髪の長さはここ新泉組では1番だ。
巷でもここまで長い人はそういないだろう。
背後に束ねることはできるのだが、九はあえてそうしない。
「どゆことですか、吉野さん…」
あははは、と吉野は笑った。
そして時は経ち、夕方ごろ。
新泉組隊員たちは全員大広間に集合した。
シャリンシャリンと鈴の音が遠くから聞こえてくると、先ほどまで騒がしかった大広間は静寂に包まれた。
両耳に大きな鈴をつけ、金色の髪と髭を有した図体のでかい男性が、大広間に入ってくる。
「白虎様!お待ちしておりました!」
白虎を先頭で待ち受けたのは、新泉組局長の遠藤光良だ。
「うむ。」
白虎は低い声でそう唸るように言えば、用意されていた位置にあぐらを掻き座った。
「早速ですが、白虎様。今日いらした理由をお聞かせください。」
遠藤の隣に座っていた久方が白虎の方へ向いて、会釈をしてから言った。
「今日来たのは、今後のことだ。」
「今後のこと?」
久方は首をかしげて、白虎の唐突な発言に疑問を呈した。
「現代では我ら四神の存在を脅かそうとしている輩がいる。それは皆周知の上。だが、今その中でメキメキと頭角をあらわしてきている組織がある。---ブラックキャット。」
「...黒猫。」
遠藤と久方の後ろで話を聞いていた一人が、口を開く。
彼の名前は、沖風李誠。
「ほう、李誠、何か知っているようだな?」
白虎は、じとっと目を李誠と合わせて、何か深い意図があるような声で言った。
「ただ日本語訳にしただけです。初耳でした。」
李誠は、ふふっと軽く白虎に向けて笑えば、そう言った。
「おいっ、わきまえろ。」
久方は李誠に向かって、鋭い目を向け笑いのこもった発言を注意した。
「いいじゃないですか、白虎様に対してフランクな発言なんてそう並大抵のやつはできないんだから。白虎様も、堅苦しい返答しかしてこないやつだけだったら、面白くないでしょう。」
李誠は、久方のその視線をしっかりと受け止めた後言った。
その発言に白虎は眉毛をピクッと動かす。それを見た遠藤が「もっ、申し訳ありま---」と言いかけた時、大広間に大きな笑い声が響いた。
笑っているのは他でもない、白虎だった。
「面白いことを言う、李誠。確かにわしをそのような緩い態度で接してくれるやつはお前だけだったな、《《昔から。》》」
「はい。」とどこか寂しげのこもった表情で李誠は返答して、次の発言はあなたですよと言いたげに久方を見た。
「話を戻しますが、ブラックキャットは、どのような組織なのですか?」
「神の力を利用し、支配しようとする。その目的を果たそうとしている組織の最先端にいる者、それが「王」だ。その王の下で働いている一部の者たちが集まった集団がそう呼ばれているらしい。彼らは名の通り、動きが猫のように俊敏、夜目も効き、匂いにも敏感、お前ら異能者も太刀打ちできるかわからないほどの身体能力を持ち合わせた集団のようだ。」
異能者でさえも叶わないかもしれないという白虎の発言に、隊員たち皆が、ザワザワと音を立てた。お互いに顔を見合わせたり、背筋をぞっとさせる者がいたりした。
「静まれ。大丈夫だ。」
先ほどの言葉に対して真逆のことを言おうとしている白虎に対して懸念を抱く隊員たち。しかし、その後に続く白虎の言葉に皆は気を引き締める。
「お前たちはわしがわしのために任命したガードマン。わしのため、つまり神のため、世界のため、、、お前らには期待しかしとらんぞ。」
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