とは言っても『腹が減ってはクエストができぬ』とゆう、ことわざが幻想世界には存在する。何事も物事に取り組むときは、エネルギー補給をしておかないと駄目なのだ。
 それにクエストを受注した彼女らは、まだ10代で育ち盛りなため、モノを充分に食べておかないとクエストの途中で『ばたんきゅ〜』すなわち全滅してしまう。

「パンを食べながら聞いてちょうだい。貴女たちに向かって貰いたいのは、私の屋敷から約2メートル17センチ離れた場所に在る1件の御屋敷。そこは通称、青薔薇屋敷……と私たちヴァンパイアから呼ばれているの」

 依頼主のレイヴァン・ヘルシングは“青薔薇屋敷”と書いてブルーローズ・レジデンスとよんだ。
 そして、ティーカップに淹れた紅茶を嗜みながら説明をはじめた。朝顔のように広がるティーカップの飲み口へ、穏和に唇を乗せてから顎を上げずに紅茶を啜るのだ。

 妖艶さばかりに注目してしまうが、レイヴァンがする仕草やマナーは上品である。

「ムシャムシャ…。で、そのブルーローズ・レジデンスってところにはさ、なにがいるのよ。ムシャムシャ」

「バスヴァンパイア、屋敷の主の名はフーガ・バーンシュタイン……」

「そのバスヴァンパイアさんって、なにものなんですか?。ムシャムシャ…お口が乾いてきちゃった」

「あっそれ、わかる〜っ。メロンパンたべてると口が渇いちゃうよね。紅茶でも飲んだら?」

「うん、そうする♪」

 クエスト依頼主から提供されたとはいえ、あまりにもマイペースすぎる仲間の2人に冷や汗を垂らして唖然とする少年の姿があった。
 絶対にこのヒト怒ってるよ、口調もだんだん重苦しくなってきてるし、声のトーンも低くなってるし……と思っているのだ。

「その昔ね、あの御屋敷には“ブラムの帝王”と呼ばれるヴァンパイアが住んでいたの。帝王って呼ばれていたけど、バーバレラ・バーンシュタインって名前の女ヴァンパイアだったわ。バーバレラはすこし風変わりなヴァンパイアでしてね。彼女はこの町のヒトや私たちマモノから慕われる人柄だった……」

「あ〜っアンパンおいしかった。ごちそうさま」

「私もメロンパンと紅茶をいただきました。ありがとうございます」

「ピキッ……私のだしたお茶とお菓子、気に入ってもらえてなによりよ♡」

「※&#〜ッ!?」

 ──2人が真面目に話を聞いてないからマジでヤバいよっ!。苦笑いしながら眉間にマンガの怒りマークでちゃってるよっ!。

「それで…そのバーバレラはね、どれだけ風変わりなヴァンパイアだったかと言うと……。民警団を組んで町で悪さをする不良マモノを素手でスコボコにしたり。たまにクエストへ行ってはボスモンスターを素手でバチボコにしたり。海を渡ってイルヴァルス大陸という地域に行っては、争う国同士の仲裁に入って悪ノ親玉をこれもまた素手でブチのめして平和にしたりと、やっていることがヴァンパイアのイメージからかけ離れた女ヴァンパイアだったのよ」

 レイヴァン・ヘルシングが語る、ブラムの帝王と呼ばれた女ヴァンパイア伝説は、常に拳ひとつで揉め事を解決する武勇伝であった。

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G clef Link 孤独なバスヴァンパイア4

拳ひとつの武勇伝
ファイナルファイト

次話
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投稿日:2020/01/06 01:34:59

文字数:1,305文字

カテゴリ:小説

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