第十八章   

翌日の朝、私はいつもの様に気怠く起き、携帯へと目を通してみる事にした。
きっと、瑞希からの連絡はないだろうに。
そんな私の思考とは相反する様に、瑞希からのdmが来ていた事に驚いていた。
彼は私よりもずっと早起きし、「おはよう陽菜!大好きだよ!」そう伝えてくれていたのだ。
「恋人ごっこ」をしていた時と何ら変わりない様子で、
相変わらず、元気一杯といった感じに。
彼はきっと本当に私と「恋愛」がしたいのだろう、そう感じた瞬間だった。
私はどう応えて良いのか分からず、5時間は放置してしまった。
やっと返事が出来たのが、14時を廻ろうとしている時間だった。
遅過ぎたかな、と思ったのだが彼は私の「おはよう」に直ぐに返事をしてくれた。
「ありがとね瑞希」「dmは来ないと思ってたから、ビックリしちゃった!」等と、
少しばかり茶化してしまったが、彼は「俺は本気だよ」そう伝えてくれた。
しっかり考えて応えなければ、そう思った瞬間でもあった。
一週間の間、彼は毎日連絡をしてくれていた。
その一週間、私は当たり前の様に日常を過ごし、彼の連絡にも応えつつ
彼が疲れて眠ってしまった夜には好きな香水を纏い煙草を吸いながら、考え事をする日常を過ごしていた。
パートナーは帰宅して、夕食を済ませ風呂に入り、眠る様子だった。
「おやすみ」そんな当たり前になってしまった簡潔な言葉を交わし
私は自室で「私なんかと恋人になりたい…かぁ」なんてぼんやりと考えていた。
なんの変哲もなく、詰まらなく日常を過ごしている間に
あっという間に一週間が過ぎようとしていた。
今日がその待って貰っていた一週間の日だ。
どう応えようか、私は考えに考え抜き、「正直に」私の気持ちを話してみる事にした。
彼へとdmを送る、ほんの少しの緊張感を持ったままで。
「私ね、人が信じられないんだ…勿論瑞希の事もね…」
彼は即答する様に、「どうして?」と私へと問う。
インスタで信じられる人との出逢いが無かった事を私は彼へと伝えた。
彼を傷付けてしまったかも知れない。
それでも、私は「本音」で応えたかったのだ。
彼からの返事は「俺が陽菜に信じてもらえる様に頑張る」
諦めてくれるだろうと思っていた私の考えとは違って、彼は「努力する」と、
そう言ってくれたのだ。
「私の考え方を聞いても瑞希の気持ちは変わらない?」
私がそう尋ねると彼は「何も変わらないよ!」そう言ってくれる彼に
私はやはり「安堵感」を覚え、彼と「恋人」になれるかは分からないが、
私なりに不安ではあったものの、「恋人になってみようか」そういった結論を出す事にした。
「ありがとう」お互いに伝え合い、「また明日ね!」そう言って深夜帯迄dmをし続けてしまった。
彼が眠ってしまった後、私は煙草を一本取り出し、外へと出てみた。
生温い暖かな風が心地良く吹いていた。
この日は朧月が出ていて美しかったのを今でもハッキリと覚えている。

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月は嗤い、雨は鳴く

「恋人になりたい」そう言ってくれた彼との一週間が過ぎようとしていた。

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投稿日:2024/06/29 01:15:18

文字数:1,228文字

カテゴリ:小説

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