初日の出を見ながら願ったことは、現実になるんだとか。マスターから聞いたのか、姉たちから聞いたのか、兎に角それを楽しみにしていたリンと、それに付き合わされている俺がいる場所は屋根の上。
「さむぅ…」
リンが漏らした言葉は、正に俺も思っていることで。何しろ夜明けを見るためにここにいるのだから、日は登っていない。それにしても、目の前で寒さに震えているリンは――…
限り無くバカだ。
だって考えてもみろ、夜中だぞ夜中。日の出を控えたこの時間のしかも屋外。雪でも降るんじゃないかと思うくらいの気温の低さ。ダウンジャケットを着てきた俺でも凍えそうだっていうのに、リンはアウターを何も着ずに公式服のままで来た。そもそもリンの公式服は露出が高い。ノースリーブのセーラー服は丈が短くてへそ出し状態。ズボンの長さも短くて、レッグウォーマーがカバーしてくれるのは膝から下だけ。寒いに決まっているのだから、何かしらの準備をしてこいよ、と思う。
「リン、何か着てきたら…?」
「いや! 家の中に入ってる時に日がのぼっちゃったらお願いごとできない!」
まだもう少し時間はあるだろうし、服を取りに行くのにそう時間はかからないだろう。それでも、妙に頑固というか我が儘なリンはきっと聞く耳をもたない。そのことはわかりきっているから…さて、どうしようか。
「じゃあ俺が取りに…」
「それもダメ! 一緒にお願いごとするんだから」
だったら俺にどうしろと。
こうやって会話をしている間も、リンは肩を抱いて身体を固くしている。言葉と共に零れる白い息は闇夜に溶けて消えていった。全身で寒いと語るリンを放っておくことは、やっぱりできなから。
「うわ、さみ」
寒いけれど、俺は着ていたダウンジャケットを脱いで、リンの背中に羽織らせる。振り返って俺を見たリンは目を丸くして、そして心配そうな顔をした。
「え、レン。いいの? 寒いよ」
「…いい」
寒さのあまり呂律が回らない。沢山話すと舌を噛みそうで、短い返事を返すのが精一杯だった。リンはよくこんな状況でペラペラと喋れたもんだ。
それにしても寒い。どうにかならんのかこの寒さは。夏の暑い日には、早く冬になれ、と思うが、実際冬が来たならこの寒さが恨めしい。気温が低いのに合わせて、風も少しあるから、体感温度はかなり低いんだろう。ただ、いい、と言ってしまった手前ジャケットを返してもらうわけにはいかないし、リンが寒い思いをするのは嫌だから、結局俺が耐えるしかない。
でも、リンよりはマシだろう、俺の公式服は。セーラー服は袖があるし、丈も長い。ズボンはハーフパンツでこれもリンに比べれば随分良い、膝が冷たいけど。
「ねぇ、やっぱりそのままじゃレンが寒いし、このジャケット一緒に着よう?」
「………は?」
思わず胡乱げな声で聞き返す。リンは大真面目な顔をして言うけれど、一体どういう意味だ。当たり前なことを補足すると、そのジャケットは勿論一人用。
「だから。レン、あたしの隣に座って」
言いながらリンはトントンと屋根を叩く。少し躊躇ったけれど、とりあえず素直に従ってリンの横に座る。くっつき過ぎるのもどうかと思って、少しだけ隙間を開けた。拳一個分、というその距離に果たして意味があるかどうかについては置いておく。
するとリンはもっと近く、と言って俺の服を引っ張った。されるがままにしていると、リンとの距離はなくなっていて、2人でくっついた状態でジャケットを着た。着た、といってもファスナーは閉められないから、背中に乗せるだけになっている。
それでも2人分の体温があるから、1人でジャケットを着ているよりずっと温かい。この密着した状態で、体温が急激に上がっていることも、寒さを感じない要因か。プログラムがショートしないといいけれど。
リンは大して気にしていない様子で、まだ日ののぼらない空を見上げている。でも俺にとってはキツい。距離が近すぎる。これじゃ願い事どころじゃない。
そうだ、リンは何を願うんだろう。あれだけ震えて、それでもここを離れようとしなかったのだから、よっぽど叶えたい願いなんだと思う。
「リン。リンの願いって何だ?」
「え? 秘密!」
そうきたかー。
まあ、リンの願いを聞いたなら、俺も話すハメになっていただろうから、結果としては良かったのかもしれないけど。でもリンから誘っておいて秘密、てオイ。少しくらい教えてくれたっていいんじゃないか。
「ね、レンはあたしのこと好き?」
「…何、いきなり」
「あたしのこと好き?」
「えっと…」
好きだけども。そりゃもう大好きだけれども。言えるか、好きなんて。そんなんだから『ヘタレン』って言われる? わかってるよ、それくらい。大体リンも、言わなくても察してくれ、てそれは無理か。
望んでいる言葉を中々言わない俺に苛立ってきたのか、リンは俺を睨みながらズイ、と顔をよせる。思わず目を逸らせば、ピキ、と何かにひびが入るような音が聞こえた気がした。ついにリンは大声で叫ぶ。
「好きか嫌いかどっちか選んでっ!!」
「好きだって! わかってるだろ、言わせんな!」
しまった、これじゃただの八つ当たりだ。
でもリンを見れば、満足そうに笑っていて、怒らせなくてよかった、と少し安心した。怒らせるだけなら兎も角――それも十分悪いが――泣かせてしまったら、それこそ最悪の正月になる。リンは笑顔が一番似合うし、ずっと笑っていてほしい。ただ、リンが機嫌を損ねるのはほぼ毎回俺が原因だから悲しいところ。
「つか、何で急にそんなこと…」
「えっとね、レンがあたしのこと好きって言ってくれるなら、多分あたしとレンの願い事は一緒だよ」
お互いの願い事を話していないのにどこからそんな自信がくるんだ。でも、リンの言っていることも間違ってはいないかな、と思う。リンも俺と同じことを願ってくれるなら嬉しい。そしてそれが本当に叶えばいい。
しばらくすると、辺りがすうっと明るくなった。遠くに見える山や、町の建物の間をぬって、太陽の眩しい光が届く。その白い光は、優しくて温かくて、そして何故かとても強く頼もしいものに思えた。願いが叶う気がした。それとも、初日の出に頼らず自分で叶えてみせようか。
「お願いごと、レンはできた?」
「ん…まぁ、一応」
「今年もよろしくね」
「あぁ、よろしく」
――リンも俺と同じことを願ってくれるなら嬉しい。そしてそれが本当に叶えばいい。
その願いは。
「 」
願い事【お正月】
願い事、というより拝む感じですが。レンの願い事の内容は一応決めていますが…まあいいか(コラ
改めて、あけましておめでとうございます、ミプレルです。まとまりのないお話になりましたが、これが今年第一号です。…いいのか自分、記念すべき1つ目が即席文章で\(^0^)/
ガキつかを見て、ジャニカンを見て(紅白は録画)、そして同時に鏡音紅白を見ていました。良い年越しでした!
全てを見終わって時計を見ると午前4時。うわーこれ頑張ったら日の出見れるんじゃ?…起きていよう!← ということで眠気覚ましにこれを書いていました。
そして元旦の朝のうちにうpしたかったのですが、初詣やら何やらで結局夜。しかも日付が変わってるよ!だってサ●ケ見てたら11時半になったんだもん。
それでは読んで頂いてありがとうございました!感想、アドバイス、誤字脱字の指摘等、お待ちしております。
今年も小説カテに地味に出没すると思います。よろしくお願いいたしますー!
皆様今年もよい鏡音を!今年が皆様にとって良い1年でありますように。
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