大学生になったら、女の子とコンパしまくりぃぃ!
夏は海へ!冬はスキーへ!リア充生活を満喫するんだ!!

そんなふうに考えていた時期が俺にもありました('A`)

現実は部屋にこもってアニメとゲームの毎日・・
大学は週に一度行くくらい
深夜アニメ見てると昼まで寝ちゃうしね

さて今日は水曜日
例のごとく昼下がりに目を覚ました俺は
裏路地にある怪しいゲーム屋に足を運んだ

人気のない通りの中でさらに人気のないゲーム屋
店の中で他の客と会うことも稀だ
当然バイトなどはおらず、店長がずっと一人で店番をしている
今日は大作ゲームの発売日だというのに相変わらず店には店長しかいなかった

俺はいつもの調子で漫然と店長に声をかけた
「すいません、テイルズオブムエタリア下さい」
「えっ 何だって?」
同じくらいやる気のない声が帰ってくる

「テイルズオブムエタリアですよ!今日発売ですよね?」
「発売日は明日だが」

ちっ、そんなことは分かってるんだよ!面倒臭せぇ野郎だ、いちいち言わせんなよ・・

「いや、わかってますよ。いつも1日前には売ってくれるじゃないですかっ」
必死な俺の態度とは裏腹に店長はそっけなく言った
「最近いろいろ厳しいんだよ、明日来てくれ」


糞がっ!
お前の店はフラゲできること以外なんの価値もないんだよカスがっ!
発売日に買うなら値引き率のいい尼で買うわっ!

俺は心の中で捨て台詞を吐き店を後にしようとした
その刹那、可愛い女の子のイラストが描かれたパッケージが目に映った
あまりの可愛さに俺は
そのソフトの前でだらしなく口を開けたまま立ちつくした

「へへっ お客さん、お目が高いね」
「!?」
その声に我に返った俺は店長の顔を見た

店長はさっきまでのそっけない態度とは一変
カウンターから身を乗り出して言った

「そいつは最近流行りのボーカロイドってやつさ!
しかもボーカロイドの中でイッチバン可愛い・・・」

「鏡音リンちゃんとレンきゅんだ!!」
「っ!?」

・・・・
・・・
・・


ついつい勢いで買ってしまった
2万8千円か・・・高い買い物だった
なんでも鏡音リンレンは他のボカロソフトと違って2人いるから値段も倍らしい


・・・<30分前>

「そいつは最近流行りのボーカロイドってやつさ!
しかもボーカロイドの中でイッチバン可愛い・・・
鏡音リンちゃんとレンきゅんだ!!」
「っ!?」

俺と店長は見つめあったまま、お互いが何か話すのを待っていた
先に口を開いたのは店長の方だった

「お前さんも話くらい聞いたことあるだろう」

そう、聞いたことがある・・確か・・
「確か・・ネットのどこかでボカロPと呼ばれる人達が
自らの腕とセンスと財力の全てを注ぎ込んで再生数を競い合うという・・・」

俺は息を飲んだ、知っていても口にするだけで恐ろしい・・
「死の・・バトル・・・」

店長は真剣な目をして言った
「そのとおりだ」
店長は慎重に言葉を選ぶようにゆっくりと言葉を続けた
「お前さんが見ているそのボカロソフトは単にリンちゃんとレンきゅんを歌わせるためのものではない
その果てしないバトルへの招待状でもあるわけだ
お前はその戦場で戦い抜く覚悟があるのか?」

「・・・・」
「・・・」

どれほどの沈黙だったろうか
やがて店長は天井にぶら下がった薄汚い電球をぼんやりと見つめながら
どこか寂しそうな目をして言った

「ボカロPは遊びじゃねぇ、生半可な覚悟では務まらねぇ
毎日のように数多の新人ボカロPがデビューし、
そして消えてゆく・・・
覚悟がないのなら、そのコ達のことは忘れろ」

俺は黙って鏡音リンちゃんとレンきゅんを見つめた
リンちゃんは明るく元気そうなカワイイ女の子だ
レンきゅんはちょっと大人しそうだけどリンちゃんに負けないくらい愛らしい
俺はいつのまにかボカロソフトを手に取っていた

店長の言うようにボカロPとは簡単な職業ではないだろう
でも、この子達とならやっていける
まったく根拠はないけど・・・
そう思った

「店長・・これ下さい」

その言葉に店長は少し驚いた様子だったが
俺の覚悟をしったのか、口元に穏やかな笑みを作り
優しい目をして言った

「27800円だ」



家に帰ると今日のあったことを思い返していた
あのゲーム屋の店長とあんなに話したのは初めてだった
ボーカロイドソフトを買っのはいいが、どうやったら曲を作れるのかイマイチわからない
そこらへんのことは明日考えるとして
とりあえずソフトをインストールしてみよう

パッケを取り出し、そこに描かれているイラストを見下ろした
そうか、リンちゃんとレンきゅんの二人がいるんだった
俺は初心者だし、どちらか一人を選んでプロデュースすることにしよう
どっちもカワイイな・・どうしようか

俺は悩んだ、人生でこれほど悩んだことは今まであったろうか
俺はただひたすらにリンちゃんとレンきゅんのパケ絵を見つめた

・・・・

3時間ほどそうしていただろうか
時計の針は既に12時を回っている

結局リンちゃんをインストールすることにした
ディスクトレイにボーカロイドソフトのROMを挿入し
自動的に立ち上がるウィンドウ
その中にある実行ファイルをダブルクリックした

しばらくして俺は異変に気が付いた
「うん?」

PCの様子がおかしい
スイッチのLEDが有り得ないほどに輝いている

「おいっ!故障か?」
そう思った瞬間、モニターが輝きだし、その光はモニターからその外へと拡大していった

「なんじゃこりゃぁぁあぁぁあ!!」

部屋中が眩い光で満たされ、僕の視界は白一色になった

「うぼぁぁああああ!!!」

俺は目を閉じて床にうずくまり顔を覆った
どれほどの時間がたっただろうか
それはきっと一瞬の出来事だったに違いない
しかし永遠にも等しい静寂のあと俺はゆっくりと目を開いた
まるで嵐が過ぎ去った後、始めて窓を開け外の景色を見るように・・・
俺は部屋を見回した
そこには信じられない物が立っていた・・

僕はかつてないほど大きく目を見開き言った

「リンちゃん・・・」

第1話 「出会い」 完

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

リンちゃんと俺 第一話「運命の出会い」

すいません、曲もちゃんと作ってます('A`)

リンちゃんと俺がボカロPを目指して頑張るSSです
3話か4話で完結する予定です
暇で暇でしかたない方はどぞ~

※私パトリチェフと主人公はいっさい関係ありません

閲覧数:888

投稿日:2011/08/15 16:04:26

文字数:2,562文字

カテゴリ:小説

  • コメント2

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  • きろ

    きろ

    ご意見・ご感想

    なんて俺得…!
    これからリンちゃんとのボカロP生活が始まるんですね!
    続きを楽しみに待ってます!
     余談ですが、テイルズオブムエタリアが気になりました←

    2011/08/15 17:14:06

    • パトリチェフ

      パトリチェフ

      ああっ!わざわざ私のSS読んでくださってありがとうございますー

      satさん
      ニコ動のボカロカテは地獄だぜ!ヒャッハー

      きろさん
      君と首相撲から膝蹴りを応酬し合うRPG テイルズオブムエタリア!

      鳳架
      レンきゅんルート楽しみにしてますw


      あまり長い話じゃないので、最後までお付き合いいただければ幸いですm(_ _)m

      2011/08/16 20:00:51

  • sat(頑なP)

    sat(頑なP)

    ご意見・ご感想

    ボカロPとは修羅の道・・・言うなれば地獄への "One way chicket"

    血肉と引換にPlug-inを手にした瞬間に堕ち果てるDAW・・・そんな世界だ・・・

    クックック・・・続きが楽しみだせ!!

    2011/08/15 16:57:46

    • パトリチェフ

      パトリチェフ

      ああっ!わざわざ私のSS読んでくださってありがとうございますー

      satさん
      ニコ動のボカロカテは地獄だぜ!ヒャッハー

      きろさん
      君と首相撲から膝蹴りを応酬し合うRPG テイルズオブムエタリア!

      鳳架
      レンきゅんルート楽しみにしてますw


      あまり長い話じゃないので、最後までお付き合いいただければ幸いですm(_ _)m

      2011/08/16 20:00:51

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