メイコお姉ちゃんが結婚した。
「お姉ちゃん、おめでとう!」
「ありがとう。ミクも早く幸せになってね」
「うん!」



数十年後――

「幸せ・・・・ね」
メイコ姉さんとの幼い頃の写真を見て、自分の無邪気な笑顔にふっと笑う。
ふとテレビのリモコンを手に取り、テレビをつけた。
『話題の双子のアイドルユニット、鏡音リンさんと鏡音レンさんのCDが売り上げ20万冊を突破し、今、大きな社会現象を巻き起こしています!』
『今日は、そんな鏡音リンさんと鏡音レンさんをスタジオにお呼びしています。鏡音リンさ~ん!レンさ~ん!』
『はぁ~い!』
アナウンサーの明るい声にも負けない、高くて可愛らしい少女のような声と少年のような声が響く。
『お二人がアイドル歌手になろうと思ったきっかけは何ですか?』
『えっーと、幼い頃から仲のいい、Mちゃんっていう年上の女の子がいたんですけど・・・』
『Mちゃんはとっても歌が上手くて、よく一緒に歌ってたんです。それで、あたし達も歌が大好きになって、それからアイドルになろう!と思ったんです』
『実際、Mちゃんの方が僕らより歌が上手いんですけどね』
少年が言うと、スタジオは笑いに包まれた。
『では、そのMちゃんに一言!』
『はい!えーっと、今はなかなか会えないけれど、今度一緒に飲もうね!今のあたし達は、Mちゃんのおかげであるようなものです』
『Mちゃんには本当に感謝しています。ありがとう!』
『きっと、Mちゃんも喜んでいると思います。それでは、次の質問・・・』
ピッ
たまらなくなって、テレビのチャンネルを変えた。
寂しさを紛らわせるために、高校時代の先輩にメールをする。
『巡音先輩元気ですか?たまには会いたいです。お仕事頑張ってください!』
テレビからロックな曲調の音楽が聞こえてきた。
『今、鏡音リンさんレンさんに続くクリプトンからの大物歌手が人気急上昇中です!』
そのロックな曲調の音楽とともに、ロングヘアーのセクシーな女性のプロモーションビデオが流れる。
『鏡音リンさん、レンさんに続き、グーグルの検索ワード2位に急上昇した巡音ルカさん。ハスキーな歌声だけでなく、日本人離れしたスタイル、顔立ち、ミステリアスな雰囲気に憧れる女性が増えているそうです』
また、たまらなくなってテレビを消す。
はぁ、と、私の口からため息が漏れる。
その時
ピンポーン
「宅急便でーす」
「はぁーい」
思い身体を立たせ、玄関に向かう。
「ありがとうございましたー」
「お疲れ様です」
届いた両手に収まるほどの小さな箱を床に置いて開けた。
「わぁ・・・・」
中には足に日付が書かれてある、ドレスを着た小さなテディベアが入っていた。
「可愛い・・・誰からだろ、コレ・・・」
伝票には『差出人メイコ』と書いてある。
テディベアと共に送られてきた小さな封筒を開けた。
『ミクへ
元気?あたしは相変わらずよ。二人目の子が産まれました!女の子です。ミクも早く幸せになってね★メイコより』
メイコ姉さん、幸せそう・・・
(今度、赤ちゃんにも会いたいし、メイコ姉さんにも会いたいなぁ・・・)


みんなそれぞれ成長していってるのに。

それなのに、私はいつもでも変わらない。

変わったのは、少し伸びた身長と、少し大人になった顔立ちと、少しずる賢くなった頭だけ。

みんな、私を置いて行く。

みんな、私を忘れてく。

みんな・・・・・


「行かないで・・・」























「行かないよ」
私の身体を、優しい香りが優しく包む。
「・・・・カイト兄」
どこから来たのか、幼い頃仲の良かったカイト兄が私を後ろから抱きしめていた。
「久しぶり。元気か」
「久し・・・・・」
ぽろっ
一筋の雫が私の頬を伝う。
幼い頃と少しも変わらない笑顔と優しい温もりに身をゆだね、私は幼い頃と変わらなくカイト兄に抱きついて泣いた。


「なんか食うか」
カイト兄が冷蔵庫の中をがさがさと漁る。
「うん。カレーあるよ」
「おっ」
私は残り物のカレーをお皿に二人分盛って、カイト兄の前に出した。
「ぶっ」
「何がおかしいのよ」
突然吹いたカイト兄に少しイラッとしながら自分も椅子に座った。
「いや、お前昔からおばさんの手伝いとかでカレー盛ると、絶対汚くなるんだよな。ほら、こことかだばだばカレー垂れてるし」
「嫌なら食べなくていいんだよ」
「いやいや食うよ。食わせろよ」
私は何年、いや、何十年ぶりにカイト兄とカレーライスを食べた。
「おぉ、やっぱおばさんのカレーと同じ味だ。さすが親子」
「美味しいでしょ」
「うん。美味いっつーか、変わんねぇな。昔と」
「ははは・・・」
昔と少しも変わらない私が作った、昔と少しも変わらないカレーライスを、昔と少しも変わらないカイト兄が食べる。
昔と少しも変わらない私もカレーライスを食べた。
昔と少しも変わらない夕日が、昔と少しも変わらない私とカイト兄を優しく包み込んでいた。






ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

【読みきり】昔と少しも変わらない【ですよ】

最後がくどいような気が・・・w
変わっていくものもあれば、変わって欲しくないものもある。
そんな気持ちをこめて、この読み切りを書きました(´▽`*)
今、周りが変わりすぎて自分を見失ったあなたにこの読みきりが心に届きますように。

閲覧数:305

投稿日:2010/04/18 21:47:33

文字数:2,068文字

カテゴリ:その他

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  • 華龍

    華龍

    ご意見・ご感想

    超泣けるんですけど!!!!
    そうですよね、世の中は変わってしまうもの変わって欲しくないもので溢れていると思います。
    カイトが居てくれるところとか、優しさがひしひしと伝わってきます。(TmT) 
    変わってしまうモノと言えば、友達とか新しい環境に入ると変わっていっちゃいますよね。
    私は中学で転校してしまったんですが地元の友達に夏休みとかを利用して会いに行ってますが、色々話すとやっぱり変わってるモノです。
    ふみゅさんはどうですか??中学に上がって友達が変わったりとかしましたか??

    ?!最後どうでも良い!!!!ごめんなさ~い>< 次回作楽しみにしてます!!

    2010/04/19 23:53:10

    • どーぱみんチキン

      どーぱみんチキン

      泣けますか!?ありがとうございます!!
      華龍さんは転校したんですか?・・・私は無いですが、成長してくると共にやはり周りの友達が好きな人ができたとか、異性に興味を持つようになったりすると、やっぱり変わったなぁと実感します・ω・`
      中学で離れた友達から手紙が来たんですが、やっぱり変わったなぁとか・・・
      今、自分は変わりたくない、自分は自分のままでいたいとか思うけど、やはり自分も親や家族に反抗したいとか思っちゃうし、前まではそんなこと無かったのに・・・と、自分自身も変わって欲しくないのに変わっていくのが少し悲しいです・ω・`
      人だけでなく周りの景色とかも変わってくると少し胸が痛く・・・(ずきん
      でも、変わっていくものもあれば変わらないものもあり、新しくなっていくものもあれば新しい出会いもあると思って頑張ります!!
      長々と失礼しました!
      コメントありがとうございました(´▽`*)

      2010/04/20 21:33:56

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