「では皆さんグラスを持って~……メリークリスマス!」
ミクの一言で、ミクの家に集まった八人は一斉に乾杯した。
そしてシャンパンの入ったグラスを傾ける。
未成年が八人中四人もいるというのは秘密だ。
「うん、やっぱり、クリスマスイヴよりクリスマスだよね! お祝いは」
「ね。何でイヴにみんな盛り上がるんだろうね?」
「イヴの方が夜って感じだからじゃない? クリスマスって昼間って感じじゃん」
「そんなもんなのかな~」
「きっとそうだよ。……まぁ、昨日、職場でもわーわー盛り上がってたけどもね」
サンタ服を来た女性陣はすっかりはしゃいじゃっている。
そんな五人を尻目に、カイトとがくぽとレンは端の方で椅子に腰掛けていた。
「なぁ、誰が一番サンタ服似合うと思う?」
「……レンお前口開くとすぐそれだな」
「んー、僕はみんな可愛いと思うけど」
そういう男性陣も、ほぼ無理矢理サンタ服を着せられた状態である。
カイトとがくぽはまだいい。長袖長ズボンのオーソドックスなサンタ服だからだ。
が、レンに至ってはトナカイの角まで装着させられている。
「てか、俺らいつまでこんな八人でクリスマスを祝うんだろう……」
「がくぽそれ言っちゃダメ。僕だって言わないようにしてるんだから」
「俺はこれでいいと思うけど。女子より男子のが少ないし」
「「……大人の事情を知らないなお前」」
カイトとがくぽは小さくため息をついた。
「……付き合うとかいう話が全く出ないよなここ」
「出ない出ない。何でだろ」
そんな二人を尻目に、ミクは突如マイクを持って歌い出した。
「Rudolph the red nose reindeer~♪」
「あ、酔ってる酔ってる」
「ミク何杯酒飲んだの……」
「にゅふふ~五杯だけだよ~♪」
「え~私まだ三杯! もう一つ飲も~」
「ちょ、飲み過ぎ、リンちゃん」
男性三人はため息をつくと、こっそりと笑い合って女性集団の中に混ざった。
「う~……レン~……気持ち悪い……」
はしゃぎまくって、数時間後。
リンはレンの肩にもたれかかった。
「ちょ……リン、吐くなよ」
「酷い……レンってばぁ……心配してくれないのぉ……?」
すっかり酔ってしまっている。
顔は赤く染まり、目には涙が溜まっていた。
「……リン、」
「いつもっ……心配、してくれな……うー……リンはぁっ……レンのことぉ……いつも……心配……してるぅ、のに……」
レンは何も言わずに、リンの帽子をとると、頭を自分の方に引き寄せた。
「リン。外の空気吸おう?」
ふらふら状態で頷いたリンをかつぎ、外に連れて行く。
レンはちょっと戸惑いながらも、弱気でへろへろ状態の自分の双子の姉を可愛いと思ったのであった。
「カイトお兄ちゃん~♪」
「ちょお、ミク、触んなって! バカイトぉ! ミクに甘えさせんなし!」
そのちょうど対角線に当たるところで、メイコとミクはカイトの奪い合いのようなことをし始めた。
二人とももう酔いつぶれる寸前である。
「カイトお兄ちゃんはミクのだもぉん」
「いつどこであんたのになった! 昔っからバカイトと一緒にいんのは私だよっ!」
しかし、耳元でぎゃーぎゃー叫ばれて、カイトにとってはいい迷惑であった。
何とか逃げ出そうと試みるが、両腕に二人がしがみついて離れない。
「ちょ……誰か! 助けて! 誰かっ!」
その声に、ルカとがくぽが振り向く。
グミはルカの膝に頭をのせてうつらうつらしている。
「がっくんヘルプミー!」
「え~……」
「えーじゃなくて助けて! 僕が襲われる! これ僕完全に襲われるからっ!」
「うん、頑張れ」
「ちょ、酷い、ルカっ! お願いしますルカ様っ!」
「お願いしますって手錠かけたまま土下座してくれるならいいよ~」
「待て待て待て待て! なんだそりゃ! ちょっとみんな酷すぎる!」
「嫌だったらグミでも叩き起こせば~?」
そんなことができないとわかっていて、ルカはくすくすと笑う。
カイトは困り果てたようにその場に座り込もうとして失敗した。
「た、助けて!」
そのときである。
「……ん~……」
グミがごにょごにょと起き出したのは。
「ルカちゃん大好き~」
「んー、ありがと、グミ」
「がく兄~」
ふにゃふにゃと二人に甘えるようにすり寄っていたが。
何が気になったのか、ふっと後ろを向いた。
「……カイトさん……何やってんの?」
カイトは涙目でグミを見た。
「あれはね、ほっといていいんだよ」
「うん。グミが気にすること無いって」
「ちょ、ルカ、がっくんっ! 酷いっ!」
「ルカちゃん……眠い……」
「そう、じゃあ、あれは無視して寝ようか」
「え、ちょ、待って、誰かっ、誰かっ……グミちゃんお願い! お願いですこの人達どうにか……!」
グミは小さくため息をつくと、がくぽの方を向いた。
「……がく兄、代わりにお願い」
「えー……」
「……じゃあ、あたしが行く」
ふらふらと起き上がって、目をこすりながらグミがそっちへと進むと、今度はがくぽがため息をついた。
「はいはい。俺が行くよ」
「ありがとぉ、がく兄」
ミクとメイコはまだカイトにしがみついている。
「おーほらほら。お前ら離れろ~」
「がくぽさんうるさいっ! カイトお兄ちゃんはミクのなのっ!」
「ちーがーうー!」
「どっちのものでもないっ!」
「はい、ストップストップ。飲みすぎ」
ぐっとミクとメイコからカイトを引き抜くと、カイトはぐったりしたようにその場に座り込んだ。
「疲れた~……」
「はい、ルカ、こいつ」
「やめろおおおおおおっ!」
がくぽがルカの方にカイトをほうり投げる。
ルカは突然くすくすと笑い出した。
「どうしようかしら……」
「やめろやめろやめろ! どうしてそうなるんだ!」
そしてふっとグミはカイトの方に頭をもたせかけた。
「……え」
「ルカちゃん……やめてあげて……おやすみ……」
そのまま、カイトの膝の上ですやすやと眠り始める。
カイトは苦笑すると、そうっとグミの頭を撫でた。
「その子可愛いでしょ」
ルカが不意に優しい顔になる。
カイトもルカの方を見てにこっと笑った。
「ねーカイトお兄ちゃんはぁ~?」
「カイトは疲れたってよ」
「バカイトぉ、力弱すぎだし」
メイコとミクはまだぎゃーぎゃー何かしている。
がくぽが小さくため息をつくと、不意にぎゅっとメイコはがくぽに抱きついた。
「……メイコ、何やってんだ」
「いいなぁ、紫色の髪、さらさらぁ。私も欲しい」
それを見て、ミクも真似するようにがくぽの髪の毛をいじり始める。
「あーほんとだぁ。がくぽさん髪の毛綺麗~」
「というか、体つきいいよねぇ。脱いでみて欲しい」
「確かに~」
「……おいおい」
いつも端でカイトの慌てっぷりを見ているせいか、対処に慣れているというか、さっくりと二人の相手をしていく。
「何考えてんの~?」
と思ったら、ふと見るとメイコの顔があごのすぐ下にあったことにがくぽは驚いた。
それからメイコの髪を手ですき、にっと笑う。
「あれだな。グミ以上ルカ以下? サイズ」
「……変態」
「男だもん、しょうがない。脱いで欲しいなんて言ってないしね」
「……うわ、むかつく」
「はいはい。じゃあ離れろって」
「がくぽさん~ミクの相手もしてよ、寂しいじゃん」
「何だよ」
「ぎゅー」
「……はいはい」
がくぽは苦笑しつつ、カイトの方をちらりと見やった。
とりあえず、ルカの犠牲にはなっていないようである。
グミがカイトの膝に寝転がっているのが気になったけど、お互い様だ。
「……女子陣全員酔ってるからなぁ」
「酔ってないってー」
「はいはい」
がくぽは笑った。
まぁ、いつもと全然違うけど、たまにはいいか。
翌朝。
「……頭痛い……」
ミクとリンはふらふら状態で起き上がった。
結局、全員ミクの家に泊まり込んだ形である。
「カイトさんごめんなさい! 一晩中座ったままって……」
「いやいや大丈夫だから。よく眠れた?」
「爆睡してた……ほんとごめんねカイトさん!」
「平気平気。座りながら眠るの、慣れてるし」
グミは申し訳なさそうな顔でカイトにぺこぺこと頭を下げている。
朝起きて、カイトの膝に頭を乗せていたことに気がついたグミは大慌てしたわけである。
「がっくん……昨日私変なこと言ってた?」
メイコはがくぽに不安げに聞いた。
「あぁ……脱いでみて欲しいとか?」
「え!?」
「嘘だよ。気にすんな」
うっすらと言った記憶があるメイコは、咄嗟にそう嘘をついたがくぽをちらりと見た。
「……嘘つき」
がくぽは小さく苦笑すると、横でまだ爆睡中のルカの頭を撫でた。
「レン……頭痛い……」
「そりゃだってリン、昨日グラス十杯は飲んだじゃん」
「あー……大声でしゃべんないで……」
「あ、ごめん」
レンはくすっと笑うと、リンの耳元で小声で囁いた。
「心配したんだよ。もうめっちゃ酔って俺にはりついてくるから」
「……っ!?」
リンの顔がとたんに真っ赤になる。
いつもの逆襲とばかりにレンは笑った。
「まぁ、可愛かったからいいけど」
「……レンの馬鹿っ! ……っ頭痛い……」
その後、カイトとがくぽは端の方で話しはじめた。
「……昨日の前言撤回するわ」
「僕も。地味に、八人で祝うの楽しいね」
「あぁ。今までもっと子供っぽくはしゃいでただけだからな」
「酒入ると違うね」
「今度から飲ませるか」
「それでもいいと思うよ」
「何~? 何の話?」
ミクが割り込んで来たとき、二人は笑った。
「何でも無い」
なんだかんだいって全員楽しめたようだから、よいクリスマスだったんだろう。
というわけで、改めて、メリークリスマス。
コメント0
関連動画0
オススメ作品
ガラス色のカフェ歌詞(テキスト)
イントロメロ
私ガラス張りの窓サロンのようなミニオルガンの音色
シンデレラみたいな靴を私に履かせて
Aメロ
ランチタイムはハプニングだらけのメニュー
乙女心で燻(くすぶ)ってドキドキの梃子嵐
フラットな気持ちじゃ君とは話せない
落ち込んでいる時でも君のことが脳裏に走...ガラス色のカフェ歌詞(テキスト)
ベトベンだったらいいのに
Hello there!! ^-^
I am new to piapro and I would gladly appreciate if you hit the subscribe button on my YouTube channel!
Thank you for supporting me...Introduction
ファントムP
<配信リリース曲のアートワーク担当>
「Separate Orange ~約束の行方~」
楽曲URL:https://piapro.jp/t/eNwW
「Back To The Sunlight」
楽曲URL:https://piapro.jp/t/Vxc1
「雪にとける想い」
楽曲URL:http...参加作品リスト 2017年〜2021年
MVライフ
天の川で出会う約束歌詞(テキスト)
Aメロ
真っ白な紙にペンで君のビジュアル再現一体どこまでゆくのもっと可愛いのに
君をメロメロにしてぼくのプロデューサー締め切りまで間に合わなかった超絶スキャンダル
Bメロ
シンクロするなんて壮大な未来図はいつーも
天空の青写真が君なのかまだわからない(もうわかって...天の川で出会う約束歌詞(テキスト)
ベトベンだったらいいのに
ありえない幻想
あふれだす妄想
君以外全部いらないわ
息をするように嘘ついて
もうあたしやっぱいらない子?
こぼれ出しちゃった承認欲求
もっとココロ満たしてよ
アスパルテーム 甘い夢
あたしだけに愛をください
あ゛~もうムリ まじムリ...妄想アスパルテームfeat. picco,初音ミク
ESHIKARA
命に嫌われている
「死にたいなんて言うなよ。
諦めないで生きろよ。」
そんな歌が正しいなんて馬鹿げてるよな。
実際自分は死んでもよくて周りが死んだら悲しくて
「それが嫌だから」っていうエゴなんです。
他人が生きてもどうでもよくて
誰かを嫌うこともファッションで
それでも「平和に生きよう」
なんて素敵...命に嫌われている。
kurogaki
クリップボードにコピーしました
ご意見・ご感想