兄さんはいつも笑顔だった。
僕が笑顔でいられるように。
兄さんが僕に涙を見せたことはなかった。
それを知った後、僕も兄さんに涙を見せたことはなかった。
5年あと、兄さんが死んだ。
長男だった兄さんは、どうしてか事故で死んだ。
僕のもう一人の、次男の兄さんは、そのときちっとも泣いていなかった。
でも、僕はその時は、とにかく、とにかく泣いた。
でも、兄さんは写真でも笑ってる。
だから、僕も笑わなくちゃ。
兄さんが、心配しないように―――
「不謹慎だからやめなさい、帯人」
それは、兄さんも、喜ばないことだろうか…?
考えれば考える程、僕の頭でぐるぐるまわった。
だから僕は、ずっとずっと笑わないことにした。
誰も、悲しくも、苦しくも、涙を流すことも、無いように。
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