僕はゲンガー。
いつもこうやって、後ろ向いて指を咥えて
どうせ僕は何処に行っても
誰かの影に隠れたまま。
私は鏡音リン。
ガタンゴトン…と響く電車の中、私は学校へ行く途中だ。
周りは朝の通学時間だけあって人が多い。
私はその中、なんとか座席に座れた。
「はぁ…」
無意識にため息をついてしまう。
学校に行くのが憂鬱だから。
私みたいな引きこもりが学校に行ったって邪魔者扱いされるだけ。
私は周りから見れば引きこもりに分別されるのだろう。
今日だって学校に行くのは久々だし。
だけど、母さんがいつもいないくせにいちいち言ってくるから、たまに行くくらいならいいかなとか思ってみたり…
何せ母さんは私を女手ひとつで今も私を育ててくれているから。
私の家族は母さんだけ。
父親は母さんが私を産む前に事故で亡くなったと聞いている。
何もしてない父親に思い入れも何も無いし、私にとってはどうでもいい。
だから母さんは仕事であまり帰って来ない。
最近は顔も見ていない。
私ももう中二だし、いい加減慣れた。
それに私は内気な性格でクラスにも馴染めなく、
家でも学校でも孤独で楽しいことなんてありはしない。
だからいつの間にか私は家に引きこもっていた。
そんなのだから最近の若者達は、なんて言われちゃうんだろうな。
私こそが、その最たる例なのです。
「おばあさん、この席どうぞ」
聞いたことあるようなないような声が聞こえてきた。
ふとその声が聞こえた方向に目を向けると、
見たことある女の子を見つけた。
確か同じクラスの初音ミク。
クラスで人気者だったから覚えていた。
「あら、どうも助かりました」
初音ミクの前にいた老婆が席を交代していた。
私は座ったまま、
見て見ぬフリ。
駅から10分のところ、学校に着いた。
久々に学校に来るものだから、クラスの人達は私のことなんて覚えてないだろう。
久しぶりの自分の机、クラスの雰囲気は変わらなく、私は誰の目にも入らない。
何時間か授業をボーっと過ごして皆が移動し始めた。
次の授業は体育らしい。場所は体育館。
種目は高飛び。
運動もしてなかったからなまってるだろうな。
皆が次々跳んで、私に順番が回ってきた。
走って跳ぼうとした瞬間、
「あッ!」
足をぐねって思い切り転んでしまった。
こんなになまっていたのか…。
すると、後ろから皆の笑い声が聞こえてきた。
きっと皆、こんな私の姿を見て指を指して笑っているに違いない。
でも私は無言で戻るしかなかった。
何を言っていいのか解らなくて、ただ後ろのほうで黙って座っていた。
「大丈夫?」
声が聞こえた。
朝に聞いた声だ。
顔を上げると初音ミクがいた。
「足ぐねってたでしょ?保健室行ったほうがいいんじゃない?」
「初音…さん…」
「あ、ほらここ赤くなってる」
そう言って初音ミクが私の足をさすった。
「い…ッ」
私は小さく呻き声をあげる。
「やっぱり痛いんだ。支えてあげるから、一緒に保健室行こう?」
確かに最近怪我をしていなかったから、その痛みは尋常じゃない程感じていた。
だから初音ミクのその言葉にコクンと頷いて、支えてもらいながら保健室になんとか着いた。
そして先生に手当てをしてもらい、先生は用事があると言って職員室に行ってしまった。
今は初音ミクと私の二人きり。
「皆ひどいよね。誰だって転ぶことはあるのに笑ったりして!ちゃんとはっきり言ったほうがいいよ?」
君も私を笑ってたんじゃないの。
はっきり言うことが出来ないから困っているのに。
「…まあ、あとの時間はここでゆっくりしてていいって言われてたし、休んでてね。私そろそろ戻らなきゃ」
「…うん」
「じゃあまた教室でね。鏡音さん!」
と言って初音ミクは保健室を出て行った。
…あれ。
私の名前知ってたんだ。
全く話したことなかったのに。
私は日の光を浴びないから、
その場で何度も影踏みしてる。
慣れているなんて嘘。
本当は私はさみしがり屋で、誰かに側にいて欲しくて、
本当は初音ミクがすごく羨ましくて…
あんな子になれたらいいのにな。
でも。
「君みたいになんて…なれないよ…」
ほら、君との距離が開いて、
追いつけないんだ。
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