そして次の日。
珍しく早朝に目が覚めた九。というより目を覚まさなければならない理由がそこにあった。
九は、屯所の隅にある部屋の襖を開ける。そこにかかっている札には「新泉組 監察」と書かれている。
襖を開けると、そこには監察の二人のメンバーが座っていた。監察班の朝は早い。
「お〜、今日は遅刻しんかったなあ。」
なれなれしく声をかけてくる少年は九より四つ年上の石井拓馬。関西弁と明るめのジーンズ、万年半袖tシャツが特徴だ。
「早く座れ。今日は大事な話がある。」
相変わらずの無表情で九に命令する男性。沖風桐李。一番隊隊長の李誠の弟であり、拓馬の一個上だ。監察隊長を任されている。
九が、二人の近くに座る。すると彼を待ちわびてたかのように、さっさと桐李は地図を取り出した。
「何ですか?これ。」
九と拓馬はその紙を覗き込んだ。そこには、屯所のある町と複数の隣町の地図が詳しく書かれていた。
「ここ近辺の地図だ。この赤印のところを探索しろとのことだ。」
監察は、殆どのケース局長の遠藤や副長の久方から命令が下されてそれに従うことになっている。
「例のブラックキャットの拠点か何かか?」
拓馬がそう桐李に尋ねた。桐李はこくりと頷く。
「ブラックキャットは、もう近くまで迫っている。これは、おそらく四神の力を得ようとするために、まず俺ら新泉組を亡き者にしようとする作戦だろう。」
九は、さすがだ、と感じた。ここまで頭の切れる人はそうそういない。桐李のことを尊敬し、遅刻をしないように心がけているのも、桐李への尊敬の心があってこそなのだ。
「赤印の横に星がついているのは何ですか?」
九は、地図のある場所を指差して桐李に問うてみる。
「ここは、一番鍵になるところらしい。おそらく、敵の集合場所とか、敵たちの住まいなのか。」
「全体的に隠れた組織なのかもしれん。ほら、結構危険な位置を示しとる。」
拓馬の言う通り、赤印のところは今は使われていない工場や商店街の奥の名も知れないような飲食店のようなところついている。敵が集まるには最適であろう。
「そうだろうな。今から俺らは、この場所を一斉に確認していく。」
「今日で全部ですか?」
「あぁ。副長に至急頼むと言われたからな。」
「それは偉いこっちゃ。ったくこういう時に監察の人数が足らんねんもんなあ。」
「石井は単独行動をとれ。九は俺と行動しろ。」
「え?何で俺が一人なん!?寂しいやんか!」
拓馬は桐李にしがみつく。それを鬱陶しそうに桐李は振りほどく。
「黙って従え。これには俺なりの考えがあるんだ。」
「まあ、しゃあないわ。」
拓馬は、しゅんとして、ひとりぼっち嫌やなあとブツブツ言いだす。
「じゃあ、地図を渡す。くれぐれも注意しろよ。解散。」
そんな拓馬を無視して、地図のコピーを渡せば、九に桐李は、早く行くぞと催促する。九はそれに従って、場をあとにした。
「桐李さん。」
「なんだ?」
九は前を颯爽と歩く桐李を呼び止める。
桐李が振り向くのを見ると、九は疲れた表情をしながら、再び口を開く。
「あの、ちょっと休憩しませんか。大分場所見られたし。」
あれから、2時間。ほのかと桐李は地図に従って、印のあるところの半分くらいを見て回った。ちなみに収穫はゼロだ。
「そうだな。」
桐李は地図をチラッと見た後、頷き、丁度側にあったベンチに座った。
九も隣に座る。公園で子供達がはしゃいでいるのが見える。
すると、桐李のポケットの携帯がピロリンと鳴った。意外にも可愛らしい着信音だ。
桐李は携帯を開いて言った。
「なんだ?」
『俺や!』
電話の相手は拓馬だった。
『地図の26番の喫茶店なんやけど、店員さんに聞くと、何やら怪しい顔つきの4人ほどの客が先ほどまでいて、その1人が店員さんと喧嘩をしかけてきたらしい…』
「ほう…」
『そしたら、「我らがブラックキャットを舐めるなと」言ったそうや…』
「ビンゴか。」
桐李は軽く口角を上がて、続けた。
「拓馬は店員にもう少し深く話を聞け。その4人について。」
『任しとき!』
そうして、拓馬の電話は切れた。
桐李は、携帯をポケットにしまう。
「桐李さん、どうします、これから。」
九は、引き締まった表情をして、桐李に尋ねた。
「26番か・・・その近くにある27番を見に行こう。」
地図の27番を指してあるところを指で触れて桐李は言った。先程26番にブラックキャットがいたなら、今27番の位置にいてもおかしくないのだ。
「わかりました。」
27番の印がつけられたところは、高層ビルの間に挟まれる小さな道にあった。
「なるほどな。」
桐李が小さく呟く。
27番へと辿り着いた九と桐李。
二人は、薄暗い路地裏を側にある高層ビルの屋上から見ていた。
「何かわかりましたか?」
「どうやら、やつらがブラックキャットで間違いない。」
路地裏に屯していたのは、先ほど電話で拓馬が言っていた怪しげな4人組であったようだ。
4人とも黒い服装をしている。
九は桐李の行動を静かに見守る。
桐李は、ブラックキャットと呼ばれる集団に注意を注いでいる。
その後、ポケットから小さなメモ帳を取り出せば、せっせとメモ帳になにやら言葉をつづりだす。
九はそれを見ようとしたが、擲り書きだったのでよく分からない。だがそれはどうやら、ブラックキャットの行動の一部始終のようだ。
沖風桐李の特殊能力。
それは、目で、視界にある相手の思っていることを読み取ることができるという能力だ。
桐李本人によれば、視界に入ってくる対象に凝視すれば、相手が思っていることが、まるで漫画のような吹き出しとして、目に映るらしい。
その時の彼の瞳は緑色になるため、今相手の心を読んでいるかどうかが分かる。
この能力が評価され、桐李は監察隊長となった。
しかし、これにもデメリットがある。
心を読んでいる間は、目以外の意識がなくなる。
だから、敵が攻撃したりしてきた時に、避けることができない。
また、目を使うのにエネルギーを使いすぎるため、しばらく目が痺れてしまい、視界がぼやけてしまう。
そのため、桐李の傍にはできるだけ彼を補助する人がいた方がいいのだ。今は九がその役割を果たしている。
「よし。」
桐李はメモを取るのをやめた。
九が下を見下ろすと、ブラックキャットの姿はなくなっていた。
「いくぞ、至急屯所だ。」
コメント1
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びび
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初めまして•̀.̫•́✧ 続きが気になります〜!
登場人物がたくさんいて、わかりにくいです(つД<。
でも、これから慣れていきますね、フォローいいですか〜?
2021/04/23 18:09:11
LASHA
@びび様
ありがとうございます。登場人物が多くてわかりにくいですよね・・・
それぞれのキャラが惹き立つように努力していきます。
フォロー大歓迎です、ありがとうございます。
2021/04/23 18:27:33