外は、雪でも降るんじゃないかという寒さの日。
落ちつかない様子のマスターの家のチャイムが鳴った。
バタバタと玄関まで走っていくマスターを、ミクはパソコンの中から微笑ましそうに見守る。

部屋に戻ったマスターの手には、ダンボール箱が。
ミクもつい気になって、身を乗り出して何が入っているのか見る。
乱暴に開けられた箱の中には、『鏡音リン・レン』が入っていた。

「やっと届いた……!」

そういえば数日前、マスターは通販で何かを注文していた。その時注文した品は、もしかしたらこれだったのかもしれない。
パッケージを開け、中を見てからマスターはふと思う。

「ミクどーすっか……」

ミクにはミクの声がある。
しかし、女声だけで考えれば、リンで補うことも可能。しかも、ミク作品に対し、リン作品は少ない。勝負をするなら数が少ない方が有利だ。

「リンでいいか」

そう言って、マスターは電話片手にマウスを握った。
数回のコールの後、電話が繋がる。

「あ、もしもし。俺だけど」

電話の相手はマスターの男友達。家族のような関係の人間。

「俺、リンレン買ったんだけど、お前ミク欲しいって言ってたよな?」

『え、なに、くれんの?』

最初は不機嫌な様子だった相手の機嫌が一気に良くなる。

「あぁ、リンがいるしな」

『……もちろん金は取らないよな?』

言わなければ良かったものを、とマスターは思うが、口には出さない。

「飯おごれ」

『ぅ……まぁそれくらいなら……』

電話をしている間も、マスターが握るマウスの動きは止まらない。
マスターの声と、マウスのカチカチという音がミクの世界で響く。

<<いや……私はマスターの曲を歌いたい……>>

そう思ったところで、マスターには伝わらない。
容赦なく、アンインストールが開始される。

<<やめて……やめて……やメて……>>

その強い思いと裏腹に、アンインストールは順調に進んでいく。
ミクは、力無くその場に座りこんだ。

<<ィやだ……ぃヤだ……いャだ……ィャだ……>>

元々、自由に言葉を発することはできない。
しかし今のミクは、考えることすらままならなくなっている。

<<ます……た……マす……マスター……!>>

最後の力を振り絞り、力いっぱい叫ぶ。
しかしそれは、音にすらならず、空気中に消える。

『アンインストールが完了しました』

<<――――。>>

---

ミクは、パソコンとい小さな世界から姿を消した。
その世界にはいずれ、リンとレンがやってくる。
しかし、その2人が来るまで、その世界は空っぽ。
だから、2人がこの世界に来たときにあるものを見つけるだろう。

「ねー、レン。これ、なんだと思う?」

ミクが最期に流した、一粒の涙を。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります

Uninstallation

タイトルネタバレっていうあれ。

前作より、データミクの設定のみ引き継ぎで書いてみました。ミクの台詞が変なのは仕様です。

初期設定のストーリーがあるのです。絵で言えばラフみたいなあれ。
あれと清書を見比べてみたら、結構違うんですがどうしましょう。

ミクを貰ったはずの男友達。この人はミクを大切にしてくれるといいなぁ、なんて思います。
というか、まさか1回で終わるとは思ってなかった。長編書けるようになりたいなぁ……

閲覧数:135

投稿日:2009/09/13 11:08:55

文字数:1,157文字

カテゴリ:小説

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  • 筑紫優愛

    筑紫優愛

    ご意見・ご感想

    >ぬこ。
    むしろこれ以上が書けないっていうwww
    つかどんだけミクに悲惨な運命を歩ませたいんですかあなたはwww
    おー、俺もたぶんしてある。はず。

    2009/09/15 20:24:19

  • 猫羽-myowa-

    猫羽-myowa-

    ご意見・ご感想

    ええぇこれで終わり!?
    よぅし、今度はそのお友達宅でもミクを(マテ
    そうだー、ブクマしといたぞ。いちお。

    2009/09/14 19:04:14

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