もう一度、その声を聴かせて――
***
「マスター!!」
緑の髪をツインテールに結った少女が猛烈な勢いで駆けてくる。
「ミク、久しぶりだね」
「二ヵ月ぶりですよ、ミク、さみしかったです」
「ごめんね」
マスターと呼ばれた漆黒の髪と瞳を持つ優しげな面立ちの青年は微笑み、ミクを抱き締める。
「ミク、またお歌うまくなったですよ」
拙いながらもメロディを口ずさむ。やや滑舌も不安定で、声というよりはまだ音に近いが、透明感のあるそのメロディは純粋さを想起させた。
「本当だ、とても上手になったね」
満面の笑みを浮かべ、ミクはその場でクルリと回った。
外見は10代半ばに見えるが、中身は子どものような振る舞いをする。
それもそのはず彼女はボーカロイドなのだ。
ボーカロイドとは歌を歌わせるために創られたアンドロイドのこと。もちろん声帯も機械だ。
ミクは創られてからまだ3年ほどしか経っておらず、幼児と同じようなものなもので、まだまだ何も知らない。
知っているのは、歌うことだけ。
日々、歌の練習をしてボーカロイドとして自分を磨きあげていく。
いつしか人と同じように歌うことができるように。
「ごめん、ミク。僕は一旦研究室に寄らないといけないんだ」
「えー、もっとマスターとお話ししたいのに」
拗ねたように口を尖らせる。こういう仕草をみると本当に人とは区別がつかない。だが、ミクは紛れもなく機械なのだ。
「あとでもう一度会いに行くよ。他のみんなにも会いたいしね」
「わかりました。ミク、お歌の練習して待ってるです」
「いい子だね」
ここはボーカロイドが暮らす場所であり、ボーカロイドを開発する研究所でもある。
大規模な施設のため僻地に存在しており、その存在はあまり知られていない。
「お疲れ様」
厳重にロックされた扉を開き、中にいた女性に声をかけた。
「室長、お疲れ様です。と言いたいところですが仕事が山積みですよ」
「帰ってきてそうそう、それかい?」
「今回はどこに行ってらっしゃったんですか?」
明るめの茶色のウェーブがかった髪を後ろでひとつに束ねた少し気の強そうな女性はやや呆れ顔で問う。
「医療機関だよ。声帯の研究資料を見せてもらってたんだ」
「またえらく研究熱心なことで」
「当然だよ。僕は完璧なボーカロイドを創らないといけないんだからね」
「……そうですね」
to be continued...
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悲しいから歌った。
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こんな...君の神様になりたい。
kurogaki
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