サイトでの宣伝も手伝ってか、学園内は随分な賑わいを見せていた。参加者は出来るだけ目立つ格好で、1人にはならず信用出来る人と居る事、と言う指示の下で表向きは祭を楽しむ事になっていた。でも当然心中穏かで居られる訳も無く、避難する様に医務室に溜まっていた。

「はぁ…折角のリコリス祭が…。」
「でも楽しむ気にもなれないしね…。」
「一箇所に集まってる分俺は目が届くけどな。」

勿論全員ではない。自分が居ると巻き添えになるんじゃないかと緋織は此処に来ようとはしなかった。

「あれ?日向と澤田は?さっきまでそこに座ってだろ?」
「え?お手洗いかな?」

些細な事すら気になって2人に連絡を入れると、日向から直ぐに返信があった。

『彩花がどっか行っちゃったっぽいので探して来ます。』

澤田が1人で何処かに?控え目な澤田はそう言うタイプには思えないし、この状況下で1人フラフラするとも考え難かった。

「先生?」
「いや、一応連絡して置く、七海からも少し様子がおかしかったって聞いてるしな。」

各自に連絡を回してから数分後、何故か真壁から電話が掛かって来た。

『日高を見失ったんですが…どうします?』
「日高か…了解、一応気を付けてて。」

急にもやもやと不安が膨らんで行った。此処に人が集まっている以上俺も身動きが取れない、だけど居なくなった奴等を探さないとまずい気がしたのも事実だった。全員で移動する訳にも行かない、かと言って女だけで残すのも危険だろうし…どうするか…。

「取り敢えずパートナーの人呼んで一旦解散にした方が無難かもね、男性陣も1人にすると危ないかも知れないし。」
「そうだな。」

浅木の提案に乗る形で各々パートナーと2人、無いしいずれかのペアと4人以上で行動する事になった。

「その時はまさかあんな事になるなんて~とか流れそうだよね。」
「縁起でも無い事言うな!」
「ひゃっ!」

思わず自分の口を覆った。何やってるんだ俺は…焦ってどうする、益々悪化するだけだ、まだ何も起こってない。

「悪い…。」
「あ、ううん、私もごめんなさい…。」

そして、その場は気まずい空気のまま解散した。

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いちごいちえとひめしあい-132.焦りと空気-

閲覧数:88

投稿日:2012/07/25 16:20:50

文字数:906文字

カテゴリ:小説

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