☆『ダジャレトーク!』☆
「さて現在の時刻は、ただいま午後2時ジャスト。この時間は『ひたすらダジャレな時間』をお届けします! 司会は私、ネルです。えー、今回は特別過ぎるゲストの方をお呼びしています。自己紹介をどうぞ」
「えっと、私は傷音ウサです! うーうー!」
「僕は、どこどこ町から来たカーレッジです。今日は、よろしくお願いします」
「可愛いウサちゃんと、礼儀正しい犬のカーレッジくんと、今日は色々と、ダジャレな時間を過ごしたいと思います!」
「わーい、ダジャレ大好きー! うー!」
「わーい、僕も好きー!」
「どんなダジャレが好きですか?」
「さかみちさかさまかさおっこちた!」
「いたにぶつかって、いたーっ! なんてね」
「・・・おぉ、意外とハイレベルというかレベルが高いような・・・少なくともふとんがふっとんだとは格が上ですね」
「むー、ふとんがふっとんだはねー、王道中の王道、みんなが知ってるすごいダジャレなんだよー! うーうー!」
「そうですね。・・・しかし、聞き飽きたとは考えられませんか?」
「・・・うー、現実は厳しい、うー」
「場が白けてしまったので、カーレッジくん、ここで一言」
「なんてねに始まりなんてねに終わる! ・・・なんてね、なんてね」
「わーい! なんてねダジャレ好きー! うーうー!」
「でも、ダジャレって面白いですよね。私、ダジャレ系の番組だけは、絶対に潰さないですからねー」
「え・・・? 潰すの? 番組を? うー?」
「番組潰されたら、ユースタス怒るだろうなー。ま、僕としては、もっとしてほしいけどね、なんてね」
「もうそろそろ時間なので、ここらでみなさん、またどこかで会いましょー! ウサちゃんとカーレッジくん、今日は本当にありがとうございました!!」
☆『エピローグ また会えるよ、なんてね』☆
収録が終わって、私とカーレッジがVCL放送局の外にいた。・・・もう帰らなきゃって、カーレッジはエレベーターの中で言った。
・・・だから、ここでお別れしなきゃだめなの。うー・・・。・・・お別れしたくない。うー・・・。
「・・・ウサちゃん」
「やだ! カーレッジと、別れたくない! うーうーうー!!」
「・・・」
駄々をこねる私に、カーレッジはしばらく黙った。・・・怒っているの? それとも、迷惑だなって思っているの? カーレッジが、今、何を思っているのか、知りたいよ・・・。うー・・・・・・・。
「・・・これ、あげる」
息が詰まりそうな時間が溶けて、また動き出す。
「・・・これ、カーレッジそっくり」
私は受け取って、率直な感想を呟いた。それは、カーレッジよりも一回り小さい、でも私が持ってるうさぎのぬいぐるみよりは、十分大きいカーレッジによく似た、ぬいぐるみだった。抱き心地がよくって、私はぎゅうっと抱きしめた。うー。
「・・・・・・また会えるよ、ウサちゃん」
「ほんと? カーレッジ」
「だから、もう戻らなきゃ・・・ミュリエルが心配する」
「・・・」
私は最後に、目の前に立っているカーレッジを見た後、
「・・・ばいばい、なんてね! うー!」
「・・・ばいばい、なんてね」
・・・楽しかった。
みんなと会えて、色々と楽しかった頃の前なんて、思い出したくもなかった。
楽しいことだけ、・・・目に映していきたかった。
そうして、クリスマスがやって来る・・・。
「・・・今日は、クリスマスだな。なんか食べるか? ウサ」
「・・・・・・いらない、うー」
私は窓辺に座り込んでいた。あの日もらったぬいぐるみと、いつものうさぎのぬいぐるみを抱きしめていた。
あの日のように。
「もう、ラク。しばらくそっとしときなさいよ、今日はクリスマスなんだから」
「え、でも、あれからずっとああしているんだぜ?」
「いいのよ。・・・時間が、全てをゆっくりと解決するんだから・・・」
リアにゃーんとラクにぃの会話を耳に受け流しながら、私はぼんやりと窓の外に広がる風景を眺めていた。外は、私の心をおんなじ灰色だった。それと、白。
あとは・・・ピンク。
ピンク?
私は立ち上がっていた。
今、ピンクが見えたような・・・。
「私、行ってくる!! うーうー!!」
首にマフラーをちゃんと巻いているか、あとコートも着ているか確認した私は、2つのぬいぐるみと、・・・ちょっとしたクリスマスプレゼントを持って、外へと駆け出した。
「待ってー! カーレッジー! うーうー!!」
私が叫ぶと、ピンクは止まって振り向いた。笑顔だった。
「・・・ウサちゃんだ!」
カーレッジ! 私の大好きなカーレッジ!!
「会えた! 嬉しい! うーうー!!」
「良かった、今日はどうしても会いたかったから・・・」
少しはにかむカーレッジ。
「何で? うー?」
「だって・・・」
「・・・? へんなの! なんてね!」
私は笑った。カーレッジも笑った。
「あのね! カーレッジに、これあげる! うー!」
「これ・・・」
私は、クマのぬいぐるみをカーレッジに手渡した。
「私から、カーレッジに、クリスマスプレゼント! うー!」
「ありがとう、ウサちゃん。大事にするね」
カーレッジは、ぎゅっとクマのぬいぐるみに抱きつく。
「・・・それで、何で、今日来てくれたの? うー」
気になっていることを聞いてみる。
「それは、・・・クリスマスだからだよ」
「そっか! じゃあ、来年も会おうね! うー!」
「それまで、僕のことを憶えてくれてたら、会えるかもね、なんてね」
「ん? 何か言った? うーうー?」
小声すぎて、よく聞き取れなかった私は聞き返した。
「何でもないよ、ウサちゃん」
「えー! 気になるー! うー!」
「だから、何でもない・・・って、あれ? 雪だー」
その時、空から小さな雪が舞い降りてきた。あとからあとから、舞い降りてくる。
「・・・雪なんて、初めて見たー! うーうー!」
「そうだね・・・なんてね」
私とカーレッジは、しばらく舞い降りる雪を見ていた。
寒かったけど、心はあったかいままだった。
おわり
コメント0
関連動画0
ご意見・ご感想