戦火の燃えさしも消え果てて
全てがひっそりと静まった世界で
寒々とした空に向かって生えた
一本の灰色の樹
熱を失った色のない太陽
きのこに似た梢(こずえ)が覆い隠す
造り物のように命を感じない枝に
転がる骨の色の 白い鳥が巣をかける
懐かしい街並みも 飛行機の残骸も
みんな一緒くたになって融けて固まった
モノクロの大地の上 折れて突き出た鉄管から
細々と流れる水だけが 私以外の動くものでした
白い灰の花びらが降り積もる大樹の下
ただ一人座りこんで空を見る 惑星の午後
勝者も敗者もいなくなって
最期の日常も消え去った世界で
息づくものの代わりにただ一つ残された
一本の灰色の樹
血まみれの母親にすがって泣いていた
幼子の泣き声ももう聞こえない
オゾン層すらも吹き飛んだ黒い空に
今日は七色のオーロラがよく見える
独裁者の像も一瞬で砕け散った
思想に焼かれて死んでいった人々の山
これが これが望んでいた世界なのですか
この絶望という言葉すら奪われた世界が
虚ろな哀しみだけが残された大樹の下
それでも空しく待ち続けた 惑星の午後
去った人々の青白い魂の
囁く声だけを私は聴いている
哀しみの白い鳥の羽音に混じって
早くおいでと私に呼びかける
多分 そう長くかからずに
私も彼らの仲間に加わるだろう
屍骸の山に埋もれ 青い光となって
息絶えた“生命(いのち)の星”を眺め続けるだろう
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