君は何に悩んでいるの?
私には分からないよ。
だから教えて。
「ねぇ、最近私歌ってないんだけど。」
「………。」
「だから、私歌いたいの。」
「………。」
彼は何も言わない。
私の話を聞いているのか分からない。
「ねぇ、聞いてる?」
彼の服を引っ張る。
「…勝手に歌ってればいいだろ…」
そうじゃない…
私は君の作る曲が好きなの。
だから、君の曲を歌いたいのに。
「…分かった。」
拗ねたように返事をしても彼はこっちを見ない。
彼の横顔は、思い詰めたような悲しい顔だった。
私は彼のことが好きなんだ。
もちろん恋愛対象として。
でも、私は人間じゃない。
歌うためだけに作られた機械、「VOCALOID」。
だから、私のこの感情が彼には伝わらない。
どんなに言葉を並べたって、全て戯言だと思われる。
言葉以外の感情表現が知りたかった。
そうすれば、彼は私を愛してくれるかもしれないから。
彼は泣いていた。
広い部屋に一人で。
私にはかける言葉が分からない。
泣いている彼を見るのは初めてだった。
私は黙って見ていることしかできなかった。
すると、唐突に彼が机の引き出しから何かを取り出した。
鈍く光るそれは…刃物だった。
彼は表情を消し、刃物を手首に押し付けた。
彼の行動を理解した瞬間、彼の手から刃物を奪い取っていた。
「何やってるの!!」
私を見る彼の瞳はとても冷たくて、寒気がした。
「うるさい…機械には関係ないだろう!!」
「っ!?」
信じられなかった。
優しくて、大好きな彼が私に憎しみの感情をぶつけるなんて。
そして何より、私を「家族」と認めていてくれたのに、「機械」と物扱いしたことに。
「…何があったの?私だって、話を聞くことぐらいできるよ。」
「…お前に俺の気持ちなんて分かるわけない!!」
「そんなの分からないよ!!だって、私は――」
私は気持ちを伝える前に電源を切られた。
意識がなくなっていく中で彼は泣いていた。
いつか君が心の痛みを分けてくれるまで、私はずっと待ってるよ。
君が優しく微笑んでくれる時を。
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禀菟
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俺のよりは暗くないよ。
だって希望があるし。
スランプまた入ったのかwww
楽しいヤツ書けばいいよ。
俺が言うのも何だけど…
2011/08/07 00:52:14