「・・・で、また医務室へ行くんですか?」
うさ耳をつけた執事はうさ耳をゆらゆら揺らしてアリスに訊ねました。
「そうよ。王子に直接聞いた方が一番てっとり早いもの。・・・また戻るしかないわ」
アリスの動きに合わせて頭につけたうさ耳は揺れました。
「・・・そうですか」
アリスの言葉を聞いた執事は少し残念そうに頷きました。
「どうしたの、執事?」
「あの、アリス様。・・・もしかしたら、この件に関わることで貴女は傷つくかもしれません。・・・僕の勘ですが、そう思えてならないのです。そしたら僕は・・・」
「・・・最近なんかマシになったように見えたのに、やっぱりバカね、執事は。これだから呆れちゃうのよねー」
執事の言葉を遮るようにアリスは言いました。
「執事、私を誰だと思っているの?私は不思議の国のアリスよ。こう見えて冷淡で残酷なお姫様なのよ?少なくとも、誰かさんにフラれるよりかは断然マシだわ。それでも、この私を止めるとでも言うの?」
アリスは楽しそうに言いましたが、その瞳は全く笑ってはいませんでした。
さすが代々続く不思議の国のアリスだなと、執事は改めて思いました。・・・ただ1つうさ耳をつけていて、いまいち迫力に欠けることを除いて、ですが。執事は心の中でそっとつけたしました。
「・・・それでこそアリス様です。そう言うと思っていました」
「全く、執事は頼りにならないんだから。私の執事だったらちゃんと私を守ってみなさいよ」
そう言って上目遣いで執事を見るアリス。その瞳は先程までの残酷なお姫様という感じ・・・ではなく、優しさが満ち溢れた感じでした。
「分かりました・・・執事として全力でアリス様をお守りします」
そう言うと執事は胸に手を当てて一礼しました。うさ耳もぴょこんとお辞儀します。
「・・・・執事として、ね・・・・・」
アリスは少し悲しそうに小さく呟きました。
「・・・では、」
執事は聞こえないフリをして言いました。
「行きましょうか、アリス様?」
「・・・そうね」
アリスは少し元気がなさそうに頷いて、2人はその場を出たのでした。
長い長い長い廊下を歩いて、ようやく医務室にたどり着いた2人はへとへとでした。・・・特に、アリスの方が。
「・・・はぁ~~~~・・・、もう二度と書庫へは行かないわ。・・・はあ」
うさ耳もバテ気味に揺れています。一方、執事は爽やかに笑って、
「何度も行けば、その内慣れてきますよ」
と、爽やかにに言って医務室のドアの取っ手に手をかけました。
キィと、軽い音を立ててドアは開きました。
すると、そこには信じられない光景が広がっていました。
「ちょ・・・みんな!?どうしたのっっっ!!?」
医務室にいた、腕のたつと言われる医者達は皆、床に倒れ伏していました。そして多くの者達は気絶していてそれはそれは凄惨な光景でした。しかし、中には気絶していない医者たちもいましたがほんの数人しかいませんでした。
「・・・ああ、アリス様・・・・・」
その中の1人がアリスと執事に気付いて声を吐き出しました。
「ねえ、どうしたの!?っていうかちょっとレン王子大丈夫っ?!一体、何があったの!!?」
アリスはそう叫んで、レン王子のいるべットに駆け寄りました。レン王子は俯いたまま、何も言いませんでした。それが、なんだか不気味なもののように思えてアリスは得体の知れない恐怖を感じて、身体を震わせました。うさ耳も震えます。
「・・・・・何が、ありました?」
冷静に執事は辛うじて話せる医者に声をかけました。
「・・・・・突然、レン王子が・・・暴れ出しまして・・・もちろん私たちは・・・止めようとしました・・・っ・・・。でも・・・無理でした・・・。・・・それで、・・・こんな有様に・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
執事はやはりあの書庫で調べた事となにか関係があるのでしょうか、などと心の中でぶつぶつと呟きながら、
「そうでしたか。ご迷惑お詫びします。あとで、誰か呼んできますので、それまでここで休んでいてください。」
と、謝罪と指示の言葉を医者に言いました。
「・・・」
医者は微かに頷いて眠りの中へ溶け込むように目を閉じました。
それを見届けてから、執事は表情を引き締めてアリスの方を向きました。それで、
「・・・アリス様。今すぐレン王子から離れてください!!」
「・・・・え?」
アリスは執事の言葉にきょとんとしました。もちろんうさ耳もアリスの真似をしてきょとんとします。
その一瞬の隙を突いて、レン王子はアリスの手を引っぱり走り出しました。
「えっ・・・ちょっと、離してよ!!」
どれだけ努力しても、アリスの右手はレン王子の左手から解放されませんでした。
「アリス様・・・っっ!!」
執事はアリスに向かって手を伸ばしました。アリスも空いている左手を執事に向かって伸ばしました。しかし、お互いの手はお互いをつかむことはなく、あともう少しのところで届きませんでした。
結果、アリスはレン王子にどこかに連れ去られてしまい、執事が医務室を出たときには、2人の姿はどこにもありませんでした。実に足が速い王子です。
「・・・っ」
執事は追いかけようとしましたが、その足は立ちすくむだけでした。理由は元々の状況を思い出したからです。
レン王子はアリスのお見合い相手です。それと、アリス。アリスはなかなかその気にならないようですが、よく考えてみればそこに執事は入る隙がないような気がしてなりません。
しかし。
やっぱりレン王子にはなにか得体の知れないものを感じてそんなのにアリスを渡すわけにはいかないな、と執事は思い直して追いかける事にしました。
アリス様、どうかご無事でいて下さい。この僕が必ず、貴女を助けますので・・・。
END ?
コメント4
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ご意見・ご感想
もごもご犬
ご意見・ご感想
>ホガワさん
こんばんわ!
毎回うさ耳とアリス&執事のやり取りは書いててぶっちゃけ楽しいです。
・・・うさ耳に意識を乗っ取られるってどんな感じなんでしょう・・・?
催眠効果期待(←ちがうようさ耳にそんな効果ないよ
祝いの言葉、感謝です!
これからも予測不可能な展開を期待してて下s(蹴
・・・こほこほん。
アリスの行方はまだどうやって探すか決めてないんですが、多分執事の愛の力でこう自然と見つかる・・・みたいな(笑←
次回の投稿はちょーっとばかし遅れるかもしれませんが気長に待ってて下さい!
楽しみにしてくれる私の嫁のためにがんばりますy(黙
コメント、どーもです♪
2009/11/10 19:12:46
hogawa_511
ご意見・ご感想
もごもご犬さん、こんばんは。
何故か話の展開を和ませるうさ耳が頭から離れないホガワです。
私は、兄さんは犬耳派なんだけど、もううさ耳で良いですよ。
一生生やしてれば良いんですよ。そのうち(意識も)耳に乗っ取られてしまえばいいんですよ。
・・・って思えてきます。
まぁ、どうでもいい発言は置いといて、10話目おめでとうございます。
前回の何気ないコメントで反応いただいてしまったので、
それを覆すような斬新過ぎる展開を希望(いえ、冗談です。
アリスお嬢様の行方は盗聴器付発信器ででも探すんでしょうか、気になります。(裁判的な意味で
私のコメントも(←だけ)混迷を極めてきたところで失礼しますね。
またしばらくの間こちらにこれないかもしれませんが、
楽しみにしてますのでがんばって下さいね。
2009/11/10 17:26:20
もごもご犬
ご意見・ご感想
>きょあさん
こんばんは!
アリスには執事がいるので多分大丈夫だと思いm(黙
いくら心配でも睡眠はちゃんと取らないとダメですy(人のこと言えないでしょー
そう言って下さると嬉しくて泣けてきますよー(泣いちゃダメ
次回の投稿は少々遅れると思いますが首を長くして待ってて下さいね♪
がんばりますよー、そりゃ私の嫁だもn(蹴
コメント、どーもです♪♪
2009/11/08 18:33:56
ぐんそう
ご意見・ご感想
こんばんは~きょあです♪
お嬢様はどーなっちゃうんでしょう…?(・Д・';)
心配で眠れそうにありません←
★祝★10話目!!!
毎回楽しい&ワクワクしながら読ませてもらってますo(^ω^)o
これからも、もちろん楽しみにしてます☆
頑張って下さい♪♪
2009/11/08 17:50:22