歌が、声が、音が、波紋の様に広がる。目の前に居るのは頼りなくて小さな彼女で、だけどその声は、高く高く、澄んで澄んで、真っ直ぐに空に伸びる様な…。
「震源から共鳴反応!これ…位置割り出せるかも!」
「行けるか?!頼む!」
「うん、動画のカウンター凄い勢いで上がってる…だけど…このままじゃ歌しか…。」
「けど歌を止めたら位置が…。」
その時勢い良くドアが開いた。驚いて振り返るとそこには息を切らせた2人が居た。
「誰だ?」
「わ…私…私が話す!その位…おやつ前なんだから!」
「それを言うなら朝飯前だよ~りんご。」
「こ、こんな時に…ツッコミなんか良いよ…!」
「りんごさん!それにネムリさんも…!」
「MCならリヌちゃんより私達の方が慣れてるんだから!それに!私も【MEM】には
文句いーっぱいあるんだから!」
「僕も文句言うの~。りんご泣かせた奴は300倍にして返すの~。」
「頼めるか?」
「まっかせなさい!」
「まかせなさ~い。」
不謹慎だけど、笑いが込み上げた。何だろう、まるで子供の頃に悪戯でも仕掛けてるみたいな気分になる。なぁ、騎士…信じて良いのかな?奇跡を敵に回しても、それでも俺達笑えるって信じて良いのかな?一緒に笑えるって信じて良いのかな?まだまだ結構捨てたもんじゃないって、思ってしまって良いのかな?
「動画見てる人…この歌聞いてる人…少しだけで良いから、りんごの話を聞いて!
新しい霊薬なんて嘘だよ!今の【MEM】はおかしくなってる!皆を助けるつもり
なんて無いんだよ!」
「…こんな話をいきなり聞いて、信じられない人も居るのは判っています。だけど
霊薬に奇跡はありません。確かに怪我は治りました。確かに病は治りました。
だけど人は獣に落ちる、その衝動に我を忘れる、痛みから逃げて命を育む事も
出来ない、それが本当に奇跡ですか?貴方はそれを本当に望みますか?」
「ネムリは…ネムリだってコンサート事件でBSになって苦しんだんだよ!だけど
【MEM】は閉じ込めるだけで何もしなかった!助けてくれたのは【TABOO】の人だった!
救ってくれたのは【Yggdrasil】だった!皆、皆、霊薬に騙されてるの!」
「惑わされないで、思い込まないで、本当の救いは何ですか?それでも奇跡に
しがみ付きますか?」
「BSが治せるかも知れないの!だけど薬を作れる人が【MEM】に捕まってるの!
ユウだって捕まってるの!だから…だから皆助けて!武器が無くても、BSじゃ
なくても、皆一緒なら声は届く!」
「ほんの少しでも信じてくれるなら、どうか奇跡を捨てて下さい、【MEM】を否定して
下さい、この声が届くなら、この歌が届くなら、偽りの奇跡から目を覚まして
下さい。どうか…」
「お願い皆…!」
「「力を貸して!」」
BeastSyndrome -98.力を貸して-
「300倍返しなの~!」
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