「お誕生日おめでとう!!!」
なーんて言葉と綺麗な花吹雪が、私の部屋に舞うことはなく、とうとう一人で誕生日を迎えてしまった。
本当は一番に祝ってほしい人がいたのだけれど、忙しそうだったから一緒に私の誕生日を迎えてほしいなんて言えなかった。

 なんとなく一人で食べるケーキはむなしい感じがしたので何も自分へのご褒美を用意していない。
いつものように冷蔵庫からビールを取出す。

時刻はちょうど深夜一時を回ったところ。
来るはずのないおめでとうメールをしつこいが未だ待っているのだ。

「ふぅ……なーにやってんだろう……」

私のスマートフォンの着信音が鳴ることはなく、画面は黒く眠ったまま。
みんな寝ているのだろう。
もうこんな時間だしな。
リンもレンも、ミクも、夢の国へ冒険中であろう。
ルカは……仕事かな? よくわからないけど。

そうじゃない。

私が待っているのは、その四人の誰でもない。

ああ、思い返せばなんだかつらくなってきたなぁ。
そんな不意に零れそうになった気持ちをビールで押し戻す。

テレビなんてつけてないから、時計の小刻みに刻む音しか聞こえない。
それでも私は待っている。
スマートフォンの画面が、あの人の名前を表示するために起きるのを、私は懲りずに待っているのだ。

まあ、乙女心が全く分かってないような馬鹿だし。
そういうところに気が回らなくて当然かもね。
でもなんで寝ようって思えないんだろう。

「……も、いいや、寝よ」

明日も仕事があるんだ、差支えたら困る。
そんなときだった。

――ピンポーン

不意にインターホンが私を呼んだ。

私は深夜であるにもかかわらず、ばたばたと音を立てながら玄関へと走った。
そう距離があるわけでもないのに、息を切らして。
根拠のない理想と想像で、私の胸は高鳴って、張り裂けそうだった。

玄関を開けたそこには――

「カイト……」


「や、やぁ。お、おはよう……」


――いとしい人が立っていた。

いっぱいのコスモスと、一つの紙袋を胸に抱えて。

「な、何がおはようよ……今、何時だと思ってんの」
「え、ああ、今? いまは、1時13分だよ?」
「そうことを聞いてるんじゃないの!」

思わず怒鳴ってしまった。
こんなこと言いたいんじゃないの。

でも、なんだか胸が――いっぱいで。

「はい、めーちゃん、あげる」

そういいながらカイトは不器用にばさっ、と私に花束を渡す。
ふわりと、コスモスの香りがする。

「ごめんね、仕事長引いちゃって……。一番最初におめでとう言いたかったんだけどもう1時だし、一番は無理だったかなぁ……?あ、あとね、この紙袋はケーキなんだ、一緒に食べたいなーと思ってね、めーちゃんが前に食べたいって言ってた店の……だから、ちょっと遅れたけど――」

なんだそれ。

なによ、それ。


「おめでとう」


何なのよ、あんたは。


「えっ、めーちゃん!? な、泣かないでよっ」

気が付くと私は泣いていた。

そして思い切りカイトに抱き着いた。

カイトは最初はおどおどとしていたが、そのうち私をぎゅっと抱きしめてくれた。

「ケーキ、食べよっか」
「……うん」
「もう泣き止んだ?」
「……うん」
「めーちゃんお酒飲んでたの?」
「……うん」



「おめでと」


もう一度、そう優しく言ってくれた。
私が「だいすき」っていうと、「答えになってないよ」って言われた。



 

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【めー誕】誕生日の夜 【イズミ草】

閲覧数:118

投稿日:2013/11/08 17:38:04

文字数:1,440文字

カテゴリ:小説

  • コメント1

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  • しるる

    しるる

    その他

    本領発揮されたぁぁぁぁ
    めーちゃんがかわいい大人w
    そして、めーちゃんも兄さんも、イメージ通りで素晴らしいw

    こうなるとなぁ……
    私は変化球投げるしかないからなぁww←暴投に等しい

    2013/11/07 04:07:39

    • イズミ草

      イズミ草

      やった!!
      本領wwww
      こういうの書くの本当に好きなので、そういっていただけると、とっても嬉しいですww

      しるるさんの変化球楽しみです!w

      2013/11/07 18:53:57

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