[5月29日(日) 朝]
というわけで、俺は妹と二人で近所の山へとやってきた。
二人で遊びに行くっつったら、この山ぐらいしかない。俺がこっちへ移り住む前の下見で、二人で見つけた(正確にはあの時弟もいた)のだ。
モモには「メイドがマスターとお出かけなんてできません」と断られた。その辺律儀。
リ「んー!空気がおいしいねえ。」
俺「……おい。一つくらい荷物持てよ。」
リ「女性に手を借りる男性はモテないよ?」
俺「うるせぇ。俺はモテる必要はない。」
リ「またまたあ、強がっちゃって♡」
俺「そういうお前はモテんのか?」
リ「モテるよ。女の子に。」
俺「うおっ!!」
本当に足が滑っちまったじゃねーか。山ん中はたまに濡れてるのが好きじゃねーな。
リ「大丈夫?お弁当。」
俺「そろそろ倒置文をやめてくれる?肉体も精神も疲れるから。」
******
木々の中を歩き続けて数十分でそこは現れる。
部分的に木の生えていない、草原のような場所。しかし公園のような広さは無い。
なにより、この森自体、所有者が誰なのかすら曖昧らしい。
とりあえず、この空間の真ん中から見上げる、切り取られた空が美しい。
疲れた俺は切り株(これも幸いなことに、年輪が百を超える、椅子にちょうどよい切り株が存在する)に腰掛ける。
妹も駆け寄ってきて横に腰掛けた。
リ「お兄ちゃん、部屋では冷たかったねぇ。」
俺「俺はいつも通りだ。」
リ「あのモモってメイドさんにお兄ちゃんの昔のこと教えちゃおっかな~?」
俺「悪かったって。俺はあいつを造ってまだ一週間で、精神的余裕がなかったんだ。」
リ「あのメイドロボを造ったのって、やっぱ寂しかったから?」
俺「んー、それもあるけど、やっぱ自分を変えたかったからかな。」
リ「『自分を変える』、か。お兄ちゃんらしいね。」
俺「ただ生活態度を変えたかっただけさ。」
リ「そうか。メイドが欲しいだけなら私を呼べばいいもんね。」
そういうのは No Thank You。
*****
風がそよぐ。
森がざわめく。
太陽が上から照りつける。
そんな5月末の昼下がり。
******
しばらくして切り株にレジャーシートを敷き、弁当を広げた。
俺「すげえな。これお前が作ったのか。」
リ「すごいでしょ♪この玉子焼きなんか力作だよ!」
俺「少し前まで料理は壊滅的だったもんな。」
リ「まあ、すこしモモっちに手伝ってもらったけどね。」
モモっちとはまた……斬新だな。
俺「じゃあ、いただきます。」
リ「はいどーぞ☆私もいただきます。」
俺「むぐむぐ…うまい。誰かの手料理を食べたの、正月以来かもしれん。」
リ「モモっちに作ってもらってんじゃん。」
俺「あれは手料理ってゆーか……なんか違うんだよな。」
リ「おいしくないの?」
俺「いや、おいしいけどさ。なんてゆーかこう、『レシピ通り』って感じだよな。」
リ「なるほどね。でも、これからはきっと、もっともっとおいしくなるよ!私が保証する。」
俺「……そうかもな。」
卵焼きを頬張りながら、昨晩の会話を思い出していた。
モモに心が生まれたら。
それは、きっと素敵なことだ。
俺が「変えていく」具体的なことが見つかった。これもひとえにこいつのおかげか。
俺「リン、ありがとうな。」
リ「え?ああ。お粗末さまでした♪」
この一週間、結局モモと触れ合う機会も少なく、変わったことはと言えば俺の生活習慣と食生活くらいなもので、これらはモモによって俺が「変えられた」こと。
ある意味、この瞬間にも、妹に「変えられた」ってわけだな。
------リン------
リン?今、胸の中で鈴が鳴った気がした。
[同刻 リンサイド]
リンと音が聞こえたなら。
それはあなたへの合図なの。
私はすぐににやけちゃうから「バカみたい」って思われてるかも。
それでも私はね。
「好きだよ」と言ってあげるよ
うっとうしいくらい言ってあげるよ
本当にうっとうしそうだねw
やめろと言われてもやめませんから。
[5月29日(日) 夕刻]
俺「ただいまー。」
モ「あ、お帰りなさい。きちんと手洗いうがいをしてくださいね。」
俺「分かってるって。」
リ「ただいまー。」
モ「お帰りなさい。あら、リンちゃんは今日もお泊りですか?」
リ「うん。お母さん達、まだ帰ってこないって。」
俺「すまんな。俺の親がバカップルで。」
モ「いえいえ。構いませんよ。」
リ「私たちもバカップルだもん。ね?」
俺「はいはいそうですね。」
モ「あら、昨日とは反応が違いますね。」
俺「まーな。」
なんだかんだいって、こいつは俺のことわかってくれてるはずだからな。
結構感謝してるんだぜ?
<了>
<おまけ>
月曜はお兄ちゃんがいないので、わたくしリンちゃんが部屋を探索します。
……ちっ!この前まであった布団の下の本が全部なくなってやがる!
モ「リンちゃん、何をなさっているんですか?」
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