煌びやかなドレスに身を包んだ女性たち。眩しいシャンデリア。手の中で揺れるワイングラス。私、リンは自分の誕生日会であるというのに酷く退屈していた。美しい殿方に宝石やらネックレスやら送られても私はちっとも嬉しくなかった。ご婦人方や、同い年の女共は上辺だけの言葉で私に言い寄り、皮肉を吐き捨てる。パーティーの主役である私がこうして酒に溺れているのはそためである。そのうえ、16歳を迎えたと共に、婚約者まで勝手に決められて私はうんざりしていた。自分の人生など、あってないようなものである、と16歳を迎えた今日、私は気づいた。シャンデリアの光を受けて輝くグラスの中の白ワインを見つめながら、私はそんなことを考えた。もともと、酒はあまり得意な方ではないが今日は特別だ。むしゃくしゃして仕方がないのだから。
ところで、私の婚約者だがここロンドンでは遊び人で有名な男である。名門中の名門で、うちと昔から深い関わりのあるレミリア家の長男坊で、いわば跡取りである。名前はレン。容姿端麗、頭脳明細、遊び人という欠点さえ無ければ文句のつけようのない男である。彼と結婚したせいで、私はロンドン中の女性から敵意の目を向けられることになる。現に今、彼を囲んでいる貴婦人方は彼と話しながらもチラチラと私の方を見てくるったらむかつくことこの上ない。私はワインを下品にグビグビ飲み干しながら、ギロリと貴婦人方を睨みつけてやった。陰湿な、言いたいことがあるならはっきり言えばいい、婆共。
「リン、こっちに来てくれるかな?ご婦人方に紹介したいんだ」
最初から私に選択肢など無いので、彼の言う通りにするしかないのである。
「はい、レン様」
ご婦人方が一斉に私を睨みつける。この男は気づいているのか、気づいていないのかニコニコと笑いながら私を紹介する。
「リン、これからよろしくな」
「こちらこそよろしくお願いします。レン様」
「では、私はこれで。酒を飲みすぎたので夜風に当たって来ます」
「酒の飲みすぎには気をつけなよ、奥さん」
そちらこそ、女遊びは程ほどに、と心の中で毒づきながら私は会場をあとにした。
テラスで夜空を見つめながら私は考えた。私は、私の人生を歩むことはできないのだろうか。彼と一緒になることはできないのだろうか。愛しい彼の顔を思い浮かべる。
どうしてこんな男と結婚なんてしなくちゃいけないのだろうか。
私の婚約発表と16歳の誕生日から、早いものでもう一ヶ月である。彼はあれから頻繁に私の屋敷を訪ねてくるようになった。無論、私目当てではなく、この家の使用人や私の妹目当てである。
私は、私が幼少期の頃に使っていた部屋に向かう。今では彼の淫行部屋である。扉越しに漏れる喘ぎ声。婚約しても相変わらず盛んな人だなぁ。ノックをし、彼に呼びかける。
「レン様、入ります」
中に入ると案の定、私の妹と彼は体を重ねていた。
「リン・・・分かってて入って来たんだろう」
「レン様、色々な女性とねんごろになるのは構いませんがくれぐれも失敗はしないでくださいね」
「あれ、妬かないの?」
「だって、これは政略結婚ですもの」
彼はケラケラと笑いながら言った。
「言うと思ったよ」
「それと、リリィ」
「姉さん、違うの、これは!その・・・」
これがとても自分の妹とは思えない。本当に同じ血が流れているのだろうか。恋人もいると言うのに。
「彼と寝るのは構わないけど子供は作っちゃだめよ?」
リリィ、私の妹は末っ子であるというだけで父様や母様から可愛がられてきた。そのため、きつく叱られる、ということに免疫が無くすぐ泣いてしまうのだ。一度、父様の知り合いに不躾な行為を働いたからきつく叱った泣き出してしまう屋敷の家具などを壊す、という始末だ。で、その後なぜか私が怒られた。
「姉さん・・・許してくれるの・・・?」
「だって家具壊されたら大変じゃない?私これから用事があるから、じゃあね」
こうは言っているが用事があるのは本当である。泣き叫ぶ妹を背に私は部屋を出た。
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ご意見・ご感想
美里
ご意見・ご感想
なんか…とても続きが読みたくなってしまいます。
リンちゃんの想い人というのが気になりますね。
2012/08/02 20:29:44
なのこ
これは美里様・・・はわわありがとうございます!!
続きが読みたいなんて照れます・・・////
続きあげましたので、是非見てください!!!
2012/08/05 16:51:27