部屋に戻ったあと、私は着替えて窓から抜け出した。カーテンを使って庭まで降りて、誰にも見つからないよう静かに行動する。どうやら側仕えの使用人レンの服と間違えて部屋に置かれていた服だったようで、鏡で少年のような格好になった自分を見て、レンのように髪を結んだ。すると、鏡の中にはレンが立っていた。・・・ただ、感情豊かではないけれど。
私は、一日の予定がない時いつも向かう場所がある。
その場所は薄暗くて人気がない。誰からも忘れられたような雰囲気を感じる場所で、そこに行くと何もかも夢だった気がした。
「やあ」
「・・・」
でも今日は先客がいた。
緑髪の爽やかな青年が、湖に綺麗な波紋を立てながら水上に立っていた。
「君さ、ここに来る女の子知らない?」
「・・・さあ」
少し低めに声を出すと、レンの声そっくりな事に、自分でも少し驚く。
でも、それよりも湖の立つ青年の姿に、私は逃げ腰になりながらも、相手がどこかへ行っていくれることを願う。
毎年の今日は、いつもここで過ごすから。
「ふーん、そう。毎年来てたのに、今年はどうしたんだろ」
「知り合い、なの?」
「いや、話した事もないよ。その子も、僕の存在自体知らないだろうね!」
「そう」
「いないんなら、もーどろっと」
・・・やっとどこかへ行ってくれる・・・そう思ってホッとする。
すると突然、彼は帰り際に振り向いて叫んだ。
「僕の名前、ミクオっていうんだ!あの子に教えといてくれないかな?!」
その言葉への返事の代わりとして、私はミクオに見えるように頷いた。
「ありがとー!」
ミクオは、お礼を言うと森の中へと消えていってしまう。
私は一息吐くと湖の畔に腰を下ろし、風景を眺め始める。この風景は、家族で眺めていた景色。父と母と・・・あと一人・・・兄が、いたはず。
父と母が毒を盛られて殺された日、兄は私を守るために名乗り出た。毒を入れたのは・・・私だったはずなのに。薬品棚に置いてあった劇薬。幼かった私は、『劇薬』が毒薬である事を知らず、父と母の飲み物に一滴入れたのだ。まさか、一滴で死ぬとは思わなかった。目の前で血を吐いて倒れる父と母の姿に、私は放心状態になり、兵士や大臣達が、毒を入れた犯人を血眼で捜し始める頃に、ようやく私は、自分がとんでもないことをしでかしたのだ、と気付く。
『大丈夫だよ、リン』、そう言って微笑んだ兄は、私の代わりに罪を被って処刑された。処刑された兄の死体は見せられる事なく捨てられた。それから私は、感情を出さなくなった。いいのよ、これは私の罪なのだから。家族を殺した私は、誰かのための人形として生きるしか出来ないんだわ・・・。
コメント0
関連動画0
オススメ作品
Not imitation Notes
どこまで どこまで どこまで 歩けた?
はじまり しばらく たどった 五線譜の上
どこまで どこまで どこまで 伝わる?
何度も 消しては 書いてた 手紙みたいで
黒一色の世界 記号音符の世界
いま縦線を通す 1音目が鳴る
込めた想い広がる あふれだしていく...Not imitation Notes
sakagawa
讃えよ! 我らが夜の魔女のために!
おや、そこいくご婦人がた
おしゃべりはお止めなさい
我らが魔女の御前では
つつましく しとやかに
列の先は 魔女の大釜
みなが羨む 魔法のレシピ
讃えよ! 我らが夜の魔女のために!
すべては彼女の意のままに
首を垂れ 跪いて...【歌詞】夜の魔女と魔法のレシピ
ひなた春花
「彼らに勝てるはずがない」
そのカジノには、双子の天才ギャンブラーがいた。
彼らは、絶対に負けることがない。
だから、彼らは天才と言われていた。
そして、天才の彼らとの勝負で賭けるモノ。
それはお金ではない。
彼らとの勝負で賭けるのは、『自分の大事なモノ全て』。
だから、負けたらもうおしまい。
それ...イカサマ⇔カジノ【自己解釈】
ゆるりー
ロレックスのカスミソウ、比類ない気質と魅力を備えた、有名な時計の輝く星ようなもです。多くのブランドジプソフィラ時計中でも、www.tokeiaat.com/rolex/ ロレックス ジプソフィラ時計は非常に繊細で独創的な職人技があり、そ色、光沢、素材は完璧にクリスタルに形成されており、エレガントで洗...
ロレックス ジプソフィラ時計は非常に繊細で独創的な職人技があり
zuojiwl3392dong
ハローディストピア
----------------------------
BPM=200→152→200
作詞作編曲:まふまふ
----------------------------
ぱっぱらぱーで唱えましょう どんな願いも叶えましょう
よい子はきっと皆勤賞 冤罪人の解体ショー
雲外蒼天ユート...ハローディストピア
まふまふ
誰かを祝うそんな気になれず
でもそれじゃダメだと自分に言い聞かせる
寒いだけなら この季節はきっと好きじゃない
「好きな人の手を繋げるから好きなんだ」
如何してあの時言ったのか分かってなかったけど
「「クリスマスだから」って? 分かってない! 君となら毎日がそうだろ」
そんな少女漫画のような妄想も...PEARL
Messenger-メッセンジャー-
クリップボードにコピーしました
ご意見・ご感想