「リン、何をしてるんだい」
「何も」

そう言って妹は後ろにスコップを隠した。
オレンジ色の、少し錆びたスコップ。いつ、何処から拾って来たんだろう。

「マスターが呼んでいたよ」
「ありがとう、カイト兄さん。すぐに行くわ」
「そう……」
「あたしは行くけれど、ここはそのままにしておいてね」

リボンを揺らしながら、駆け足で妹は去って行った。
残されたスコップ。何故か懐かしさすら覚えて、それを手にしてみた。
足元の土を掘る。まるで何かに導かれるかのように。

「何を埋めたんだい、リン」

掘り進めていくとすぐに硬いものにぶつかった。
何か、見覚えのある金色の糸と、……糸?
これは糸なんかじゃない。それに、見覚えのある白い白いリボン。

「ただいま、兄さん」
「……リン」
「見ちゃった?」
「ああ」
「そう。仕方ないわね」
「……君は、リンじゃないね」
「今は私がリンよ」
「今は、だろう」
「そう。もう、もともとのリンは死んじゃった」

にやりと口許を歪めて弟だったはずの妹が笑った。

「リンね、寂しいんだって。だから兄さんも隣で寝てあげて」

今度後ろ手に握られていたのは、オレンジのスコップなんかじゃなく。
その何倍も大きな鈍い光を放つシャベルだった。



埋葬



「ねえ、最近レンだけじゃなくカイトの姿も見えないんだけどどうしたの?」
「マスター、大丈夫。リンはそばにいるわ」



2008.12.11//やんでれ?

ライセンス

  • 非営利目的に限ります

埋葬

リンというかレンというか。
双子ってどこかしら神秘的で病んでる気がする。

閲覧数:298

投稿日:2008/12/11 03:18:56

文字数:621文字

カテゴリ:小説

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