<Dear My Friends!第2期 第19話 新型ギア『マージ』>
テル達とUTAU合流軍がブリーフィングを行い地下鉄跡に潜っていく、その時間帯にオーエドタワー展望台内会議室から自分のギアとともに出発したチンシャンは、テイマー側のベースキャンプのある繁華街跡の“ザギン”で、逃げてきたルォと合流していたのでした。
(ヤマト国 オーエド地区 セントラル区 ザギン(繁華街跡) テイマー側ベースキャンプ)
ルォ「チンシャン様~、やられちまったぜ~」
チンシャン「ああ、サーチで見ていた。全部わかっているから報告は無しでいい」
ルォはかなり悔しそうにして、ジタンダを踏んでいた。その光景を冷静に見ていたのは、上司であるチンシャンだった。
ルォ「チンシャン様~、あのギア、使わせてくださいよ~!」
チンシャン「わかっている。マカ様からすでにOKを貰っている。装着して地下に潜れ」
ルォは自分で言っておきながらちょっと意外な顔をしていました。“ギアの使用”に関してはかなり厳しいチンシャンやその上のマカなのに、今回は偉くすんなりOKを出したのが、かなり予想外に思ったのでした。テル達から逃げる時に言ってしまった手前、借りるつもりだったとはいえ、こうすんなり許可が出ると、逆に“その奥”を覗いてみたくなるのも、“イキモノ”のサガなのでした。
ルォ「・・・・・ありがとうございます・・・・・いや、借りていきますけど・・・・その・・・・なにか・・・・」
チンシャン「・・・・・・“裏がある”・・・・と?」
ルォ「失礼ながら、そう思わざるを得ません」
あのめちゃくちゃ口調のルォからは考えられないような言葉だった。
チンシャン「口調が荒いおまえにしては、ずいぶん丁寧言葉だな?」
あのルォにも、1つだけ引っかかる“確執”があったのでした。
ルォ「・・・・・・“姉貴のメンツを潰すな”・・・・・そういうことですか?」
チンシャンは両腕を腰に当てて、一息ため息をついて、こう答えたのでした。
チンシャン「まぁ、そういうことだ。ティエンイ以外の裏はない」
ルォ「・・・今は信じておきます」
チンシャン「それで結構」
少し間を置いて、チンシャンがブリーフィングを開始しました。
チンシャン「そのギアは知っての通り、上級テイマー用の高級品だ。くれぐれも丁寧に扱うように」
ルォ「了解」
チンシャン「私のギア『サーチ』に調べさせた所、奴らは旧地下鉄跡に侵入した。地下ルートでアキバに向かうつもりなのだろう。ジャミングミストを展開して防御したつもりだろうが、全部ではないにしてもサーチの能力から逃れることは出来ない」
ルォ「地下ルートか・・・・狭くて暗い中での戦闘って訳か。ならこのギアにはもってこいだな」
チンシャン「おまえはここの地下から“オーエドメトロ・ヒギヤ線ルート“で”ヒガシザギン“へ行き、”オーエドアサクサバヤシ線ルート”で”ニンギョーチョウ方面“へ向かえ。奴らの大所帯での移動とおまえのギアの能力なら、奴らがニンギョーチョウ駅跡に到着する前にエンカウントできるはず。『狭い』所での戦闘になればなるほど、そのギアは効力を発するはずだ」
その言葉を聞いて、ルォはいつものルォに戻ったのでした。
ルォ「OK~! チンシャン様、頑張ってくるぜ~! ひゃっほ~!」
チンシャン「まぁ、頑張ってこい」
ルォは装着型ギア『マージ』を着て意気揚々と、地上の“地下鉄入り口跡”に侵入して、チンシャンの言ったルートの通り、地下鉄跡を猛進していったのでした。そもそも装着型なので、とても小回りがきく分、こういう場所での移動には適していたのでした。
チンシャン「さて、私はマカ様の所に戻って、作戦会議の続きだ。奴らの情報分析に少々手こずっているからな…。あいつらいったい何者なんだ…」
***
(ヤマト国 オーエド地区 セントラル区 オーエドアサクサバヤシ線跡 ニンギョーチョウ駅付近)
そんなこんなでルォがテル達の所に向かっている頃、テル達もイアのルートの通り、”オーエドアサクサバヤシ線ルート”の地下鉄跡を進んで、ニンギョーチョウ駅に向かっていたのでした。ただ、いかんせんUTAU所有のギアは、いくら小型とはいえ“搭乗型”のため、その3台のギアとテル達が地下道を移動していくのは少々難儀な状態でした。
ガシャン! ガシャン! ガシャン!
デフォ子&モモ&ユフ「遅くてごめんなさーい!」
ルコ「歩みが遅くて申し訳ない。こればかりはどうしようもなくて…」
テル「いやいや、この大きさの機械を操りながら地下道を進んでいく技術だけでも凄いと思いますよ」
ルコ「かたじけない」
実際、3台の搭乗型ギアは、頭部が地下道天井にぶつかりそうな程接近しながら移動していたわけで、この3人のエースのギア操縦技術は、確かにテルが言う通り、素晴らしいモノでした。
直列に歩いている3台の横をぶつからないように歩いていたのが、ルコとテル達一行なのでした。テルとイアとルコに続いて、リンとレン、ルカ姫とアペンド、学歩とめぐみ、後ろの楯としてミズキ達3人、という構成でした。
テル「イア、怖くないか?」
イア「大丈夫です。私の時代では、こういう所を移動して仕事なり学業なり買い物に行っていたわけだし、私の人形を持ってここを移動していた人もいたわけで、全然慣れてます」
テル「キミは強いな」
イア「ありがとうです」
その後ろを歩いているリンとレンは、横に並びながら警戒を怠らずにいたのですが、内心はそうでもなかったようでした。
リン「それにしてもやっぱり狭くて暗いわね…」
レン「リン、やっぱり怖いか?」
リン「そうね、暗いのはライトがあるからまぁいいとしてもね、こういうなんか“中途半端な広さの狭さ”って、逆に怖いのよ。むかーーーし、こういう所を走る“人が乗った箱”があったのかと思うと、余計怖いね」
レン「そうだなぁ。声も反響するし、なんか昔使っていたと思う“さび付いた標識跡”とかあって、やっぱり怖いな」
リンとレンの後ろを、ルンルン気分のルカ姫と、ルカ姫(の行動)を心配しながら警戒しているアペンドが歩いていました。
ルカ姫「アペンド~、楽しいね~、こういう冒険! ようやく本編突入! って感じで!」
アペンド「ルカ姫~、あのね、今、戦闘警戒中なんですよ?」
ルカ姫「だって~、やっとこ“ダンジョンっぽい所”に入ったから、嬉しくって♪」
アペンド「はぁ~」
その後ろを歩いていたのは学歩とめぐみなのですが、めぐみはどうやらこういう所が苦手だったらしく、学歩にぴったりくっついていたのでした。
学歩「うむぅ…、めぐみさん、歩きづらいでござる…」
めぐみ「だ、だ、だって・・・・暗いのはわかっていたけど、こういう所はちょっと…。暗い所でずっと怖い廃墟が続いていて…。守って♪」
学歩「はいはい、わかっているでござるよ」
最後の後ろの楯を任されていたのは、ミズキ達3人でした。彼らは当然、こういう所はお手の物なので、余裕でしっかり警戒していたのでした。
りおんは、先端をライトにする魔法をかけた杖をしっかり持って、しっかり“ゆうまの情報”を聞きながら警戒していたのでした。
ゆうま「うーん、ノートPCのレーダーの情報からだと、付近にはいないようだな…。ケータイの地下アンテナ情報だから、なんともいえないけど…」
りおん「ギアが来たらぶっつぶしてやるのだ!」
ミズキ「二人ともしっかりお願いね」
だが、実際には、ライトも付けずに、前方から急接近する“ルォ”がいたのでした。
***
イア「…! ちょっと待って・・・・・・・・・何か前から走ってくる・・・・・音・・・・?」
ゆうま「え!? ちょっと待って! レーダーには何も映ってないよ!?」
ルコ「デフォ子、どう思う?」
デフォ子「・・・・・・自動地形探知型走行装置を付けた・・・・ステルスギア。こんな所を走れるって事は、小型?」
モモ「たぶん、装着型。そうじゃないと計算が合わないよ!」
ユフ「このエンカウント時間、前方からって事は、ザギンのテイマーのベースキャンプ方面。ってことは、当然テイマーのギアね」
デフォ子「小型って事は、新型か高性能機」
ルコ「全員、戦闘配備! ここで止まって迎え撃つ!」
テル「こんな所では退路もないしな。アペンド達! 戦闘準備だ!」
アペンド達「OK!」
こうして、あと約1分後に起こるエンカウントの準備が始まったのでした。ギア達は大立ち回りが出来ないため、アンカーを撃って脚部を固定し、固定砲台の準備をし、テルとアペンドとりおんは杖に攻撃魔力を注入し、リンは魔力防御フィールドを展開し、学歩とレンは愛刀を抜いて斬撃の準備をし、イアとルカ姫は、アペンドから貰った“魔弾銃”を『電撃弾』にセットして、前方に構えました。
まさに、総攻撃の準備!
ルコ「砲撃系は、くれぐれも出力は弱め、射撃範囲は限りなく狭くしてくれ。この地下道では崩落する危険がある!」
デフォ子、モモ、ユフ「了解!」
学歩「レン! ここでは拙者らが活躍しそうでござるな」
レン「OK!」
リン「バリアーを張っているから、ある程度は大丈夫だよ!」
そして、急速接近してきた“黒い人型の塊”は・・・・・・
ヒューーーーーーーーーーーーーーーン! ガガガガガガガッ、ドガンッ!
全員「・・・・・・・・!?」
その黒い塊は、止まることが出来ずに、テル達もデフォ子達のギアも全部通り抜けて、遙か先の後方の地面に激突して、地面にめり込んで、ようやく止まったのでした。
プスプスプス・・・・・・
ルカ姫「・・・・・・なによ、あれ?」
デフォ子「テイマー達のギア・・・・・のはずなんだけど・・・・・」
ボコッ!
地面にめり込んだ“その塊”は、自力で地面から這い上がってきたのでした。
ルォ「ぉ~いっっっってぇ~、こいつ出力、高過ぎだぜ~、止まれなかったぜ~」
ルコは目を丸くして見ていたのですが、頭部が確認できて、その顔を見たとき、ついつい声が漏れました。
ルコ「ま・・・・またあのアホか・・・・・・」
あっけにとられてその光景を見ていたテル達とデフォ子達だが、どうもテイマーのギアだろう事は認知できたので、近接攻撃態勢に切り替えたのでした。
デフォ子、モモ、ユフ「アンカー回収! ビームセーバーに兵装変更!」
テル「仕方ないな…。相手は高速移動ターゲットだから、フィールド系で網を張るか」
テルとアペンドは、杖をかざして魔力フィールドを張り、引っかかったターゲットを減速させて、りおんが魔力杖でタコ殴りする作戦に変更しました。
学歩「レン、相手は高速移動物体。すれ違いざまに斬りつける!」
レン「了解!」
学歩とレンはやたらに動かずに、相手が襲ってきたときに攻撃する“待ちの姿勢”を取ることにしました。
ルカ姫「イア、私たちはどうしよう…」
イア「う~ん、高速移動相手に、魔弾銃は不利ね。テルさんの網にかかって動けなくなったら、電撃弾で集中攻撃しよう」
ルカ姫「仕方ないわね、そうしよう」
ルカ姫もイアも、リンのフィールドの中で、電撃弾にセットした魔弾銃の銃口をテルのフィールドの方向に向けて、動かずに構えていたのでした。
完全に地面から抜け出て戦闘準備が整ったルォは、腕をバキバキ言わせて挑発したのでした。
ルォ「ちょ~いとミスっちまったが、これからが本番だぜ~、みなさ~ん!?」
ルコ「新型か?」
ルォ「そぉ~よ、上級テイマー用の新型よぉ~! さっきのあれだって、傷一つついてね~ぜ?」
ルコ「しつこいな?」
ルォ「それが俺のモットーでなぁ~。っんじゃま、いくぜ!」
ビュンッ! ボゴン!
ルコ「・・・・・・」
ものすごい勢いで、ルォは今度はすぐ斜め前の天井にめり込んでしまったのでした。
ボゴッ!
ルォ「あ、あれ? 自動地形探知機能があるから、こんな事ないはずなのに!?」
デフォ子「同じギア使いとして、あまりにも哀れだから、助言してやるよ。そいつ狭いところ得意だと思うけど、おまえ、『最低出力レベル』を直してないぞ…」
モモ「そうだね。ここまで来る時の高速移動レベルから直してないみたいだね」
ルォは狼狽えながら、コントロール装置の計器を見直したのでした。
ルォ「ぬぉ! そ、そうだった! サンキュー!」
ルコ「デフォ子! モモ! なんで余計なことを!」
デフォ子「だって、あいつ頑丈でダメージ0なのに、そこら中にぶつかりまくって、このままだとこの地下道、崩落しちゃうと思ったから…」
ルコ「そ、そうか!」
テル「な・・・・・なんたる迷惑バカ・・・・・・・」
なんか今回も、変な方向に進みそうな、そんなルォ戦が始まったのでした。
(続く)
CAST
イア:IA-ARIA ON THE PLANETES-
ルカ姫:巡音ルカ
魔導師アペンド:初音ミクAppend
魔導師テル:氷山キヨテル
僧侶リン:鏡音リン
勇者レン:鏡音レン
異国の剣士 神威学歩:神威がくぽ
裁判官 勇気めぐみ:GUMI
ヤマト国からの旅人三人組
瑞樹(ミズキ):VY1
勇馬(ゆうま):VY2
兎眠りおん(りおん):兎眠りおん
ミゥ:Mew
欲音ルコ(ルコ):欲音ルコ
唄音ウタ(デフォ子):唄音ウタ
桃音モモ(モモ):桃音モモ
雪歌ユフ(ユフ):雪歌ユフ
ルォ:オリジナル男性中華ボカロ(オリジナルボカロになります)
チンシャン:某女性中華ボカロ
マカ:某少年中華ボカロ
ティエンイ:某女性中華ボカロ(ルォの姉(こちらが本家“ルォ・ティエンイ”で、女性中華ボカロになります))
その他:エキストラの皆さん
Dear My Friends!第2期 第19話 新型ギア『マージ』
☆オリジナル作品第16弾である、「Dear My Friends!第2期」の第19話です。
☆諸事情は相変わらずなのですが、今日は1日、留守番で休暇なので、久々に書いてみました。
☆今回はテイマーのブリーフィング回と、テル達の移動回と、ルォ戦突入です。
☆相変わらず、ルォは…。
***
私がここに投稿したボカロ小説のシリーズ目次の第1回目です。第1作目の“きのこ研究所”~第8作目の“部室棟”+番外編1作目です。
作品目次(2009/12/25時点):http://piapro.jp/t/5Qsh
同じく、目次の第2回目です。第9作目“鏡音伝”~第15作目“ルカの受難”の途中までです。
作品目次(2010年1月6日~2012年2月7日):http://piapro.jp/t/9GY1
更に、完結した『Dear My Friends! ルカの受難』のみの目次も作りました。
作品目次(Dear My Friends! ルカの受難):http://piapro.jp/t/qj6A
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もっと見る<Dear My Friends!第2期 第27話 試作ギア・アイボー>
(ヤマト国 オーエド地区 セントラル区 ニホンバーシホンチョー方面 シュトコー跡)
キョウ:オラオラオラ!!!!!!! カトンボ、墜ちろぉ!
アイボー:無人ギア10機ロックオン。ホーミング波動レーザー、発射します
キョウ:頼む...Dear My Friends!第2期 第27話 試作ギア・アイボー
enarin
<Dear My Friends!番外編 クリプトン王国の「くるしみますパーティー」>
(クリプトン王国 王室)
カイト王「ねーねーめーたん?」
ゴスッ!
メイコ王妃の拳骨が頭部に直撃した。
カイト王「ぬぉぉ…」
メイコ王妃「貴方、最近だらしないんじゃないの?」
カイト王「だぁ~ってさぁ~、娘達...Dear My Friends!クリスマス番外編 クリプトン王国の「くるしみますパーティー」
enarin
「あ、おかえりなさい」
テトさんは、ブースの前で言った。
「ええ、どうも」
コヨミ君は軽く頭を下げて、笑いながら答えた。
「いろいろ、面白いブースが出ていたよ」
東京ビックサイトで開かれている「雑貨&コミック・フェア」。
テトさんたちが出展しているブースに、会場を回って他のブースを観てきた、コヨミ君...玩具屋カイくんの販売日誌(184) テト・ドール ナチュラル・シリーズ!
tamaonion
ブースの前で、コヨミ君と、れおんさんは、にらみあって立っていた。
ザワザワ、と騒ぎ出した男の子たち。
それを見て、テトさんは思わず、コヨミ君に声をかけた。
「ねぇ、どうしたの? もめ事はよくないですよ」
フッと我に返ったように、コヨミ君は彼女の方を見た。
「あ、テトさん。ごめんごめん。ちょっと、大人...玩具屋カイくんの販売日誌(194) 新商品で勝負だ!
tamaonion
お店の売り場には、コスメや、美容関連のアイテムが、いろいろ並んでいる。
それを、レイムさんは目を丸くして眺めている。
「ワタシ、こういうの詳しくないんだわ~」
そうつぶやく彼女に、後ろを歩いているぱみゅちゃんは、諭す様に言った。
「そうそう。あんたはちょっと化粧っ気が無さすぎるからネ。少しは知っとい...玩具屋カイくんの販売日誌(179) レイムさんのオカルト理論 (その1)
tamaonion
「はーい。コーヒー、入りましたよ」
ルコ坊がカップに入ったコーヒーを、レン君たちに運んできた。
ちょっと不思議な雰囲気の、りりィさんのお店「星を売る店・上海屋」
りりィさんを送ってきたレン君は、美味しそうにそれを飲んだ。
「いつも、美味しいね。ルコちゃんの淹れるのって」
「へへ、どーもありがとう」
...玩具屋カイくんの販売日誌(187) 困ったヤツの目的は?
tamaonion
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