「どうだ……。生き返った気持ちは?」
気づくと自分は謎の液体の中で目を覚ました。
僕は正直、夢だと思っていた。
「おい、どうだと聞いているんだ。
君は人類の歴史に残るんだぞ?」
白衣を着た人間がそんなことを言っていたが、どうやら僕の身体は意味と夢と命を寄せ集めて作ったものらしい。終わった命を蒸し返す、機械みたいだ。
≪コノハの世界事情【自己解釈】≫
【これは彼の昔のお話】
人一人は涙を流して、また会いたいと呟いた。
僕はそんなことを思いながら、塀の向こうの街を眺めていた。
見た目世界の技術を濃縮したようにも視えるその街はただのハリボテに過ぎなかった。
「……“終末実験”ねえ……」
僕は先程科学者から聞かされた実験概要なるものについて思い出していた。
要するにこういうことだ。
この世界のある場所にスイッチがある。そのスイッチが起動さえすれば終末実験のはじまり、ってわけだ。
だが、昨日時点で予想通りグダグダすぎて、もう8月も半分を過ぎようとしていた。
「もう諦めたほうがいいんじゃないかなあ」
僕はそんなことを思いながら街を歩いていた。ふと、信号機の方を見ると、
少年が、期待はずれの車線の先で飛び散った。
泣き叫ぶ少女を、目醒めない僕は見ていた。
「ああ、またか」
そう思って、僕は空を見上げた。
秒針は進み出すのをやめて、世界もろとも眩み出そうとする。
この夢は――まだ、終わらない。
――
意味と夢と事態をあわせて、僕の頭はただただ考えていく。
僕はそして、呟く。
「この世界はどうやら少しヤバイらしい」
【これは彼と彼女のお話】
だが、それを伝えようとも作られてしまった心ではもう言葉も届くことはないのだろう。
枯れる太陽の音が響き、蒸せる炎天下の目が大地を見つめていた。
夏バテした世間にはじき出された様な蝉の声がもう鳴り響き始めたとして、この身体では救うこともできない。
「……あの科学者、一体何がしたいんだ……。
透けてる身体だと?
死んだからだを蘇らせてくれたのは嬉しいがこれじゃ生き殺しじゃねえか……」
こんな身体じゃ、彼と彼女を助けるために伸ばした手も届くわけはなかった。
期待はずれの視界の先で、少年がまた飛び散った。踏み潰された。
秒針はふざけて立ち止まって、踏み潰された未来を反対車線で見ていた。
機械仕掛けの世界を抜けて、木の葉の落ちる未来――9月の風景へと、君の目で見なくちゃいけないのか?
それを知ってか知らずか「ざまあみろ」と言おうとしているのか、少年は笑っていた。
――
気付けば、嗤う日差しはどこかへ消えていた。
8月は何度も過ぎ去って行くこととなった。トラックに轢かれたり、鉄骨に突き刺さったり、歩道橋から落っこちたり……その手段は数知れない。だが、ひとつだけ間違っていないことは、『少年が死ぬこと』だ。
8月は三回、四回、五回、十回、三十回、五十回七十百二百三百――――!!
ともかく、数え切れないほど過ぎ去っていく。
また来年だね、と少年と少女、二人で笑い合う未来はいつやってくる?
そんな期待すら捨て去った、そんな期待はずれの世界の隙間に、予想外れの雨が降ってきた。
その時に、その時に。
僕は思ったんだ――――
例え未来が書き換わっていても、計画を進めるあの赤い目は、何をするか解らない。
そうか――
結局、彼らは救えないのか――――
雨の中、僕は冷たい雨に打たれながら、泣きながら、思った。
コノハの世界事情【自己解釈】
本家様:http://www.nicovideo.jp/watch/sm17397763
「例えば、そんな未来なら。」このフレーズ、大好きです。
かかせていただきました。
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