五月雨の中で 真っ赤な薔薇が咲きました
耳の奥で響いてる漣から咲きました
それを咲かせたのは 優しい優しい少女
鈍色の長い爪で 百合の花を裂きました
少女は駆け出す その胸に薔薇の花弁(かべん)を抱いて
石段を走り 鳥居潜(くぐ)り 花をそこにばら撒く
あんなに綺麗だった 紫陽花が紅に染まる
安らぎを求めた少女は石段に腰掛け
生温い雨の下 小さく微笑み浮かべ
「もうすぐ、ずっと一緒にいられるから」
現(うつつ)の境で 真っ赤な蝶を見ました
少女はそれに合わせ雨音を弾きました
それは彼女の琴 儚い儚い音色
その弦を首に巻いて ただ静かに引きました
少女は翔け出す 恋焦がれ愛しい人の元へ
だけど届かず 翼もぐの 花で染めた両手が
あんなに綺麗だった 少女が紅に染まる
境内の土に埋めた真っ赤な薔薇に手を伸ばす
「そこにいたのね、あなた。天ではなくこの下に」
水無月の涙が 紫陽花を染める
「あんなに愛していた。愛していたのにどうして?」
問い掛けはもういらない 混ざり合って溶けてゆくの
少女の恋は永遠(とわ)に 紫陽花になり咲き誇る
いつしかの涙が 紅に染める
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