軽い。軽い。体が軽い。


 なんでだろう。このヘッドセットのおかげかな?


 いいや、これはレンと一緒にロードローラーを乗り回してきて得た脚力の力。


 レン…ごめんね。勝手にいなくなって。


 でももう大丈夫。あたしはあたしの力で自分を守れるようになった。


 レンのことも、あたしが守ってあげるから。


 ほら、ちょうどいい相手がきた。


 悪いけど、練習台になってもらうよ、ミク姉、ルカさん、カイト兄…そしてめーちゃん!!!





 「リン!!!!」


 レンが叫んだ視界の先には―――――黒いローブをはおった、リンの姿。街灯の上にたたずんでいる。

 ミク、ルカ、メイコ、カイトもレンに追い付く。


 「リン!!悪いけどあなたはもう犯罪者よ!!器物損壊罪で逮捕させてもらうわ!!」

 「ルカさんに私を逮捕できるの?今の私を!!」


 ルカに対しても余裕のリン。相当な自信だ。

 ルカが腰から二本の鉄鞭を取り出し、構える。


 「大した自身ね?ならばその自信、根本からへし折ってあげる!!喰らえ巡音流乱舞鞭術…龍撃鞭!!」


 とたんにルカの両腕が舞い、二本の鞭が天から襲いかかる龍のようにリンに襲いかかった。


 「はっ!!」


 リンは寸前で宙に飛んでかわし、そしてくるりと一回転した。

 ルカたちに向き直ったリンは、にやりと笑った。


 「今度はこっちの番だね?いっくぞ―…!!リン・リン・サウンドバ――――ストぉ!!」


 「リィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィンンン!!!!!!!」


 耳をつんざくような、まるで金属音のような音が鳴り響き、空気の塊がルカたちに向かって放たれた。

 咄嗟にかわすルカたち。するとそこに、巨大な亀裂が作り上げられた。


 (なんてこと…メイコバ―ストと同等の威力だわ!!)


 ルカがそう考えている間に、リンは地上に降りて来て二発目を放った。

 とっさにメイコが飛び出て、かまえた。


 「あんたたち下がって!!メイコバ――――――――――――ストっ!!」


 「キアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!」


 メイコバ―ストが放たれ、リンの音波と激突した。

 バチバチとスパークを放ち、衝突点の真下の地面を削り取っていく。


 「互角!?」

 「なんて威力だ、メイコバ―ストと互角に渡り合うだなんて!!」

 だんだんと衝突点のスパークが大きくなる。

 次の瞬間、そこでまばゆい光とともに大爆発が起きた。

 咄嗟に飛びのき、体制を整えるメイコ。対してリンは、その勢いに吹き飛ばされ、一回転してから体制を整えた。

 そばに駆け寄って、ミクはメイコを励まそうとした。


「メイコ姐、いけるよ!リンはメイコ姐と違って爆発に吹き飛ばされてる!!」


 しかし,メイコの顔つきは険しかった。


「…いいえ、あれはただ単に爆発の勢いに踏ん張りきれなかっただけ。音波砲の威力は…私よりも若干上だった…!!」

 「…!!?う…うそ…!?」

 「ミク、行って!!あの子の足をとめてちょうだい!!その瞬間にメイコバ―ストをたたきこんでとめる!!」

「わ、わかった!」


 若干慌てつつ、ミクは立ち上がったリンの前に立ちはだかった。


 「今度はミク姉が来るの?でも、『Dark』じゃあたしをたたき伏せることはできないよ?」


 余裕のリン。その顔には嘲笑すら浮かんでいる。

 ミクは斜に構えて、リンに言った。


 「ふふ…忘れちゃった?リン。私の力は…七つあるんだから!!『Light』!!」


 瞬時にミクの髪の色、眼の色が薄い金色に変わった。と思った次の瞬間には、ミクの姿は消えていた。


 「な…消え…っ…!?」


 何かが高速でたたかれる音がして、突如リンが両腕を押さえ込んでうずくまった。

 そのリンの後ろに表れたのは、薄い金色の光に包まれた、ミクの姿だった。


 「『Light』は明るくあっけからんとした声がもとの姿。その特性は…光の如きスピードよ!!悪いけど、リンには少し痛い目見てもらうわ!!」


 ゆらりと立ち上がったリンは、ミクを見つめて笑った。


 「…ふふ…ふふふ…!!そう!やっぱすごいじゃん!!ミク姉凄いじゃん!!やっぱりミク姉も倒さなきゃ、あたしは自分で自分の身を守れることを証明できない…!!行くよ、ミク姉!!」


 大きく体を反らしたリンは、遠心力をつけて振り向き、ミクに向かって叫んだ。


 「リン・リン・サウンドっ!!」


 金属音にも近い鋭い音の強力な音波砲がミクを襲う。


 「『Light』!!」


 叫んだ瞬間、ミクの姿はかき消え、誰もいないその空間を音波砲が撃ちぬいた。 

 あたりを見回すリン。と、その視界の端を、薄い金色の光が横切った。


 「そこだっ!!」


 リンは音波を撃ちこむ。しかしそこにミクの姿はあらず、またもや音波砲は彼方の空まで飛んで行き、轟音を立てた。

 今度は後ろから声が聞こえる。


 「何やってんの~!?」

 「はっ!?…リィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン!!!!!」


 リンが振り向き音波砲を発する。しかしまたもやミクの姿はあらず、天空のみが貫かれる。


 「く…くっ!!」


 焦ったリンは、自分の視界をちらつく薄い金色の光を発するミクにむかって音波砲を撃ち続ける。

 しかしそのミクの姿はすべて残像。音波砲は金色の影を貫き、地面を削っていく。

 小さな、小さな声でハミングをし続けながら高速移動をするミク。誰にも聞きとれないほどの小さな声だったが、その小さな声の効果は絶大、金色の光となり全身を包み、音速を超えた動きでリンを翻弄していた。


 「ハァッ!!」


 気合いともにミクが目のもとまらぬ速さでリンに突っ込む。それとほぼ同時にミクの拳がリンを連打する。

 リンはふらつき、膝をついた。そのすきを、ミクは見逃さなかった。


 「喰らえ…っ、『Dark』!!」


 金色の髪が一気に黒く変わり、紅い眼光が輝いた。


 「ヴヴォオオオオオオオオオオオオオオオ……!!!!!」


 身の毛もよだつような暗い声がリンの耳にはいりこむ。


 「う…っくっ、このおおおおおおおお!!!リィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!!!!!!!」


 しかしなんということか、リンは耳をふさぎつつも、全力で音波砲を撃った。

 
 「え…うそっ…!?」


 面喰ったミクは、そのまま身動きできずに音波砲を食らってしまった。直撃だ!

 そのままミクは、水切り石のように跳ねていった。


 「ミク!!…リン、おのれっ!!」


 その時までずっと黙っていたカイトは怒り心頭、ミクをかばうようにリンの前に立ちはだかった。


 「喰らえ『脱力砲』!!『卑怯こそ正義』っ!!」


 カイトの音波術『脱力砲』。脱力系の言葉が、リンに向かって飛んでいった。

 しかしリンは、これをあっさり小さな音波砲で吹き飛ばした。カイトは唖然としている。


 「いいこと教えてあげるよ、カイト兄。『脱力砲』の最大の弱点は、初見の相手にしかその効果を最大限に発揮できないってこと!身内にそれが効くはずないじゃん!!!」

 「う…うっ!!!」


 自分の音波術の弱点をさらけ出され、カイトはショックで硬直してしまった。リンは音波術を撃ちだそうと、ヘッドセットに手を添えた。


 「カイトさん!!いつまで固まってるの!!巡音流乱舞鞭術…龍旋鞭!!」


 カイトの前に飛び出したルカは、華麗に回転しながら鉄鞭を振るった。

 高速回転を与えられた鞭は、リンを貫かんと暴れ狂った。リンはひらり、ひらりとかわしていく。

 再び別の街灯の上に飛び上がったリン。ヘッドセットの出力を上げ、息を大きく吸い込んで―――――


 「リン・リン・サウンド――――――ッ!!!リィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン!!!!!!!!!!」


 強力な音波砲を打ち出した。威力がケタ違いだ。ルカの鉄鞭を吹き飛ばし、動けないミクや、いまだに固まっているカイトに向かってまっしぐらだ!!


 「あんたたちどいてなさい!!メイコバ―――――――――――――ストぅ!!!!!!!キアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!」


 とっさに前に出たメイコが、メイコバ―ストを放った。再びの音波と音波の激突。しかし今度は、恐ろしく長い。一分、いや二分以上の激突だ。


 「う…ぐぅっ…!!」


 突如、メイコの体を電光が走った。よく見れば、体の表面の人工皮膚に傷が付き、体内の機械部品がショートを起こしている。


 「めーちゃん!?ダメ、体の機械がついていけて無くなってる!!」

 「メイコ姐、ダメ!!お願いやめてえ――――――――っ!!!」


 しかしその悲痛な言葉も届かず―――――いや届いてはいるが、耳を貸さずにメイコは音波を撃ち続ける。もう体は限界だ。

 と、ここでリンのヘッドセットからもスパークが。リンははっとして音波の放出をとめた。

 メイコも同時に音波をとめ、そして力なく崩れ落ちた。


 「今日はこんぐらいにしといてあげる。めーちゃんも限界みたいだしね。…ばいばい、レン。」


 そう言ってリンは、屋根の上を飛んでいてしまった。

 
 「リン!!待て!!」


 レンはそう言って、リンを追いかけて飛んでってしまった。


 「あ…あの…馬鹿…。カ…カイト!!レンを…レン…を…おっ…て……。」


 メイコはそう言って、そのまま倒れてしまった。気絶してしまったようだ。


 「めーちゃん!?…くっ、ミク、ルカちゃん!!めーちゃんを頼む!!」


 そう言ってカイトは、レンの後を追った。


 「私たちは家にいったん戻りましょう。ミク、動ける?」

 「う…うん。なんとか。早くめーちゃんを…。」


 ミクとルカは、メイコを連れてマンションに戻って行った。





 ボカロマンションに戻ったルカは、屋上に上って行った。

 ルカはヘッドセットを調整し、サウンドオブジェから『心透視』の音波を流そうとしていたのだ。


 「よし、これでオッケ…と。行くわよ―…。」


 ルカはすぅ…と息を吸うと、のびやかな、しかし強い声を出した。

 
 「フオオオオオオオ…ン…!!」


 音波はルカのヘッドセットを通り、町中のサウンドオブジェから流れ始め、町全体をおおって行った。

 その音波から得た情報を、ヘッドセットから集めるルカ。

 人々が騒ぐ声。子供の不安そうな声。警察の声、病院の声。そして―――――リンの息遣い。


 「!!捉えたっ!!」


 ルカはとっさにポケットからコードを取り出し、手元のパソコンとヘッドセットをつないだ。

 パソコンには町の地図と、黄色く点滅するポイントが。リンの位置を示している。

 ルカはさらにパソコンに何かを打ち込んだ。すると今度は、青いポイントとオレンジのポイントが。カイトとレンだ。

 ルカは小さくうなずき、ヘッドセットのマイクに向かって声をあげた。


 「カイトさん!レン!聞こえる!?」





 カイトはレンに追い付き、共に屋根の上を飛んでリンをさがしていた。


 「バカイト!なんでついてきてんだよ!」

 「いきなりバカイト言うなっ!!(泣)リンをとっ捕まえるためだよっ!!」

 「俺一人で十分だ!!」

 「何言ってる!!今のリンを、レン一人で捕まえられるか!!…少なくとも、僕が援護したほうが無難だ。」

 「…くっ!!」


 その時、二人のヘッドセットに声が響いた。


 『カイトさん!!レン!!聞こえる!?』

 「ルカちゃん!?」

 「ルカさん、どうしたんだ!?」

 『『心透視』音波でリンの居場所を割り出したわ。今二人がいる位置から北北西の方向100m!!急いで!!』

 「お…おう!!」


 すると、いきなり北北西の方向から人影が飛び出した。リンだ。


 「リン!!待てっ!!」


 リンはレンの声に反応し、三つの表情を顔に浮かべた。

 困惑。苛立ち。そして―――――決意。

 瞬間、レンに向かって音波砲が撃ちだされた。


 「レン、危ない!!」


 カイトが咄嗟にレンの体を下に向かって押し出した。音波砲はカイトのマフラーを掠めていった。


 「おのれ、リン!!『卑怯こそ正義』っ!!」


 『脱力砲』を撃つカイト。当然それはリンには効かない。

 しかしそのようなこと、カイトも把握していた。だがそれでも―――――!!


 「あきらめるものかっ!!目を覚まさせるための卑怯は―――――正義っ!!」


 『脱力砲』と、「リン・リン・サウンド」の応酬。しかし、リンはこの応酬に利益を見出さなかったと見えた。


 「リィィィィィィィィィィィィィィィィィィン!!!!!」


 強力な音波を撃ちだし、カイトとレンを怯ませた隙にリンは地上に降りた。


 「くそっ!!逃がさんぞ!!」

 『まってカイトさん、レン!!リンの反応が…消えた…!!』

 「なんだって!?ルカさん、どういうことだよ!!」

 『ヘッドセットの機能に音波の遮断能力でもあったのかしら…いきなり『心透視』の音波の支配から逃れたの。これ以上リンを追尾しても、おそらく追い付けないわ。リンはこの町の隅から隅まで把握してるもの、まともに追いかけっこして追いつけるわけがない。…一度戻ってきて、カイトさん、レン。対策を練るわ。』

 「…く…くっそおおおお……わかった…。」


 カイトとレンは、歯ぎしりしながらボカロマンションに向かっていった。





 その様子を陰から見ていたリン。


 「…ごめんね…レン…。でも…もう後には引けないんだから…!!」


 そしてリンは、レン達とは逆の方向に駆け出した。定められた何かから逃げ出すように。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

RIN RIN SOUND BURST!!Ⅴ~VSリン・リン・サウンド!!~

リン!!君を絶対とめる!!と書いてる最中ミクやルカさんたちと熱くなってしまったTurndogです。

いやぁ~戦闘シーン楽しいwwそしてルカさん巡音流乱舞鞭術カッコいい―――――!!もっと僕のこと打っt(ry

にしてもリンを強く書き過ぎたせいでミクやルカさんがパワーインフレ起こし、同じような力を持つめーちゃんが少し影薄くなり、弱っちい技しか持たないカイトやそもそも技持ってないレンが空気みたいなことに。うーん、スマソ。

ところで。余談ではありますが、実はこれいざ書きあげて投稿しようとしたらテキスト書くとこに戻ってしまい。あれ!?と思ってみてみれば6000文字を超えていたというwww仰天しました。ということで音波砲とかの「イイイイイイ」や「アアアアアア」を大分削りました。少し弱めになっちまったかナ。気にするほどでもないことを願いますねwww

閲覧数:464

投稿日:2012/01/01 01:29:37

文字数:5,992文字

カテゴリ:小説

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  • june

    june

    ご意見・ご感想

    男性陣<女性陣ですねwもう完全にww


    Turndogさんの小説は力強さを感じますね!!

    登場人物一人一人が生き生きとしているのがイメージで浮かびます。


    リンちゃんが最愛と思われる弟にまで放って何を求めているのか、まだまだ一気読みは止まりませんww

    2012/08/06 21:11:18

  • しるる

    しるる

    ご意見・ご感想

    激しい戦闘シーン!!
    いいなぁ~ 私も書きたいですwww

    リンつよっ!!
    しかし、なにか理由があるはず!!


    今回のパラメータ
    リン…全パラメータが上がった
    カイト…【どうやって活躍しよう】を覚えた

    2012/01/01 17:11:02

    • Turndog~ターンドッグ~

      Turndog~ターンドッグ~

      リンの仕組み?人智越えタグ付けよ―よwww我々に追い付けるレベルじゃないんです。
      結論から言うとネル最強www

      カイト負けるな―――――!!君にはまだ切り札があるだろう!!うろt(ry


      2012/01/02 20:59:48

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