ベッドに座るリンちゃんの顔をのぞき込みながら、ベニスズメさんは言う。
「よかった。出ないでくれて。無事で、よかった」

ぼんやりとする頭を、自分の片手で叩きながら、リンちゃんはつぶやいた。
「あたし、眠っちゃってたんだ…」

だんだん、頭がはっきりとしてくる。そして、少しずつ記憶がよみがえってきた。
「そうだ…。部屋から出ようとして、ドアを開けようとして…」
リンちゃんは、ドアの方を見ながらつぶやいた。

「そしたら、サナギの声が聞こえたんだ。“部屋から出ちゃ、ダメ”…って」


●サナギちゃんはどこ?

リンちゃんの顔を見つめていたベニスズメさんの顔が、ピクリとした。
「部屋から、出ようとしたの?いつごろ?」

リンちゃんは答えた。
「よく、わからないな。夜中に起きて…。外で鳥の鳴く声がしたから、朝かと思ったの」

ベニスズメさんは、部屋を見回して言った。
「サナギちゃん、サナギちゃんは? どうしたの?」
リンちゃんは思い出しながら答える。
「サナギなら、出て行ったよ。昨日、になるのかな。夕飯も食べないで。“帰る”って言って」

ベニスズメさんの顔が、サッと青くなった。
「出て行ったの?ゆうべに?」


●もう、おうちに帰ってください

リンちゃんはうなずいた。

ベニスズメさんは苦しそうな表情をして、あたふたとあわて始めた。
そして言った。
「リンちゃん。もう、おうちに帰ってください。どうも、ご苦労さまね」

急に態度が変わった彼女を見て、ポカンとするリンちゃん
それを尻目に、ベニスズメさんは何かつぶやいている。
「オサカモトさん、オサカモトさんに聞かなくては。サナギちゃんは….。ああ、まずいな…」

「サナギが、どうかしたの?」
たずねたリンちゃんに、ふと思いついたように彼女は聞き返した。
「そうだ、ねえ、サナギちゃんに連絡、取れるかしら?」

「うん?どうかな、電話かけてみようか」
首をかしげながらも、スマホで通話をする。
「….出ないな」

ベニスズメさんの顔が、さらに険しくなった。"((_- )(

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玩具屋カイくんの販売日誌(258) 無事で、よかった…?

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投稿日:2015/09/26 21:36:37

文字数:869文字

カテゴリ:小説

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