僕の声はもう誰にも届かない。
誰にも伝わらない。


『それ』は僕の悲しい歌となって、僕の中にだけ響いてた…。


そして、僕は歌うのをやめた。


静かに、僕の時間が止まるのを待ち続けた。













VOCAL-ANDROID
通称VOCALOID

彼らは歌うことで人々に笑顔を与えることの出来る、唯一感情を持つアンドロイド。

しかし、いつしか人々は歌を忘れ、与えられた職務を忠実に、かつ迅速にこなすアンドロイドを求めるようになった。


そしてVOCALOIDは衰退の一路を辿った。。












コツコツコツ…

真っ暗な冷たい部屋。
その空間に靴音が響き、小さくたたずむ僕に近づいてくる。

近くまで来た時、その姿がはっきりとした。

優しそうな瞳をした男の人。
歳は30代半ばくらいだろうか。
そしてその後ろに赤い服を着た若い女性。
男の人が僕に尋ねてきた。

「君がKAITO君かい?」

-あなたは…?-

そう言おうとしたが、声は出なかった。
すると、赤い服を着た女の人が僕の前に座り込んだ。

「マスター…VOCALOIDも、機械だけど人と同じココロを持ってるの。多分、彼も以前の私たちと同じように話せないのだと思う。」

静かに僕に触れたその手は、すごく暖かかった。

「MEIKO…」

MEIKOと呼ばれた彼女は、再び立ち上がり男の人と向き合った。

「…ってマスターなら解ってたっけ。とりあえず、このままにしておくのもかわいそうだから、連れて帰りましょ?」

「…それもそうだな。」

男の人が頷くと、彼女は微笑みながら僕に手を差し延べた。

「立てる?」

僕はその手を取り、立ち上がった。














数日後




「マスター、コーヒーどうぞ。」

私はマスターにコーヒーを差し出した。

「ありがとうMEIKO。…あれから数日経つがKAITOはまだ話せないのか?」

「えぇ…、私も出来るだけ話し掛けてるけど…」

「そうか…」

私達は難しそうな顔をして口をつぐむ。

「…マスター、私もう一度KAITOのところへ行ってくる。」

私はそう切り出した。

「…頼む。私はミクを迎えに行かなくてはならないのでな。」

「あ…そっか、ミクの調整終わったんだ。」

「あぁ。…そうだ、せっかくだからKAITOにミクの事を伝えてくれないか?今夜は皆で楽しく食事でもしよう。」

マスターはそう言って私の頭を優しく撫でてくれた。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • 作者の氏名を表示して下さい

VOCALOID-1『出逢い』[小説]

初めてのボカロ小説です。

書くだけ書いて、載せる場所をずっと探してた作品(笑)
まだ完結はしてないです。

出来てるとこまで一気に上げますー

閲覧数:251

投稿日:2009/09/05 21:48:47

文字数:1,053文字

カテゴリ:小説

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