東京・原宿で人気の玩具店「キディディ・ランド」。
ここの店長は、ちょっとそそっかし屋だけども明るい、カイくんが務めている。
毎日子供からお年寄りまで、いろんなお客が、欲しいものを探しにやってくる。忙しい毎日だ。
「ホラ、これ、アロマの効き目を書いた紙よ」
ミクちゃんが、カイくんに見せた紙には、セージ、ミントなど、アロマオイルの効能が書き出してあった。
それには、次のような文句が書かれていた。
『アロマの効能、チェックしてね!
ローズゼラニウム...気分が楽しくなる
セージ...心地よい眠り
ミント...元気が出る』
「おっ、いいね。じゃコレ、ブライダル・コーナーのアロマ・キャンドルの上の壁に、貼っておこう」
カイはうなずいて言った。
6月は“ジューン・ブライド”。結婚式が増える季節。
さいきんは春や秋に行う人も多いが、やはりこの月に挙式をするカップルが多い。
カイの店でも、結婚式用のグッズ...とくに今人気の「手作りウェディング」の材料を集めた特設コーナーを設けている。
新しいコーナーが出来たり、忙しい時期になると、ミクの出番だ。
彼女は、カイの妹だ。このところ、土・日は欠かさずバイトに入っている。
ミクが店に出る日は、店内がとても活気づく。
彼女は、トークが特別に上手いわけでもなく、どちらかというとたどたどしいしゃべり方だ。
でも輝くような笑顔と、明るく元気な振る舞いで、ファンの客が多い。なかには、店の前を通っていて、ミクの声がするとつい入店してしまう、という男性ファンもいるそうだ。
実際、彼女が働いた日の売上げは、普段の日より多い。
そのため、一部で“カリスマ・アルバイト”などと噂され、業界にその名をとどろかせている。とても頼れる子だ。
ただ、一つだけウィーク・ポイントがあるのだが。
●結婚式でアロマを焚こう
カイとミクが、ブライダル・グッズのコーナーをチェックしていると、店にふらっとハクさんがやって来た。
「やあ、いらっしゃいませ」
「こんにちは」
ハクはつぶやく。
「あ、ここ、ブライダル小物のコーナーね。何かいいもの、あるかなあ...」
「あれえ、ハクさん、ついにゴール・イン?」
ミクが言う。
「違う、違う」
ハクは赤くなって答える。
「知り合いの結婚式のゲストで、歌を歌うことになって。なにか、会場の雰囲気を良くする小物が欲しいの」
「結婚式で、ライブですか...」
彼女は、シンガーなのだ。
「そうだ、アロマ・キャンドルを焚くなんて、どうですか?」
カイがすすめる。
「それ、いいかも。でも、どんな香りがいいかな」
アロマをすすめたのはいいけれど、普段は扱っていない季節商品なので、カイもミクもアロマの知識にとぼしい。
カイはミクが書いた、アロマの効能のカードを見て言った。
「気分が楽しくなる...ローズ・ゼラニウムが良さそうですね」
「そう。じゃ、この大きくて太いの、2本ください」
「かしこまりました」
ミクは、いそいそとアロマ・キャンドルをラッピングする。
ハクはよろこんで、キャンドルをぶら下げて帰って行った。
●それを使ったら...
「いっけない!」
ハクが去ったあと、ブライダル・コーナーを整えているカイの後ろで、ミクが大きな声を出した。
「あたし、この説明、間違えてる!」
アロマの解説書を手に彼女はつぶやく。
カイはギョッとして振り向いた。
「この紙に、ローズ・ゼラニウムが“気分が楽しくなる”、セージが“心地よい眠り”って書いたけど、これは、逆だ」
「なに、これ、違ってるの?」
「うん...」
「じゃ、ホントはどうなの?」
「ローズ・ゼラニウムが、心地よい眠り。セージが、気分が楽しくなる、なの」
...さっきハクさんにあげたのは、ローズ・ゼラニウムだよな。じゃ、結婚式でハクさんが使ったら?
カイの頭に、眠そうに歌を歌うハクと、新郎・新婦をはじめ、うつらうつらするみんなの光景が浮かぶ。
彼はあわてて店を飛び出して、あたりを見回した。もう、ハクの姿はどこにも無い。
トボトボと店に戻りながら、カイは考える。
(顧客の名簿を探して、電話であの人に教えなきゃ。ハクさん、登録してあったかな...)
店に入ると、ミクが言う。
「ゴメンネ!あたし、ドジで。あとで、ハクさんに連絡しとくから。エヘヘヘ」
彼女の唯一の欠点。それは、こうした派手なポカをすることだ。
カイは思った。
いっぺん、ローズ・ゼラニウムでも焚いて、おとなしくしててくれる?
ヾ(- -;)
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