＃６２「意義」



シスターが壊れた孤児院の修繕費と、僕の後任の医者を探すために首都に出かけているらしい……


「え…いや…僕の後任の医者って……だって！この村の医者は、僕がいるじゃないか！？」


僕は納得できないでミクにせまった


「だって…カイト兄が行方不明になるから………」

「行方不明って……たったの数日だろ？！」


大げさな表現に、僕は余計に納得いかない


「でも、村のみんなで森の中も探したけど…見つからなくて……いつ帰ってくるかも…」


僕たちはその森の中にいたのだが、あの世界との間には不思議な力が働いているので見つかるはずはなかった


「それに……首都って遠いから…そう何度もいけないし……なにより、この村にも持病を持ってる人がいるから、お医者様不在のまま放置できなかったの…」

「だから、修繕費の話しあいの【ついで】に、僕のかわりを探そうってわけか！？」


僕は大声をあげていた


「カ、カイトさん！落ち着いてください！子供たちが怖がってます！」


それをリンちゃんにとめられる

周りの子供たちが小さく固まって、リンちゃんの陰に隠れている


「あ……ご、ごめん…でも…でも………くそっ！」


僕はその場から逃げだした



確かにこの村には医者が必要だ

となりの村までも、かなり距離があるし、何より急病の際に処置できない

だから、勝手にどこかにいってしまった僕よりも、新しい医者を手配してもらう方がいいと考えたんだ……


それはわかる……

頭ではわかっているけど………


くやしい……

僕は小さい時によくしてくれたシスターやこの村の人たちに恩返しするために、頑張って努力してきたのに………

こんな簡単に見捨てられるなんて……僕の信頼ってその程度だったのか……ちくしょう！



僕は行くあてもなくただひたすら走った




村を出て、近くを流れる川を越え、辺りに何もない野原にやってきた



本当に何もない……掘っ建て小屋や、泉や花畑があるわけでもなくただ広い草はら……



僕はそこに横になって空を見上げた


「…………」


僕は空に手をかざし、そのわきを流れる雲を見ていた


「………嫉妬、か……かっこわる…」


僕の言葉は広い空に吸収され、辺りには風が吹く音しか聞こえない


「…………」


レンには、あって早々、殴られるし……

ミクには、あたってしまうし……

リンちゃんは、僕が守るどころか、彼女の方がしっかりしているし…

シスターや義弟、義妹たちは、僕のこと……どう思っているのだろうか……


こんなことなら……あのまま、あっちの世界に居た方がよかったのかな…



僕の存在意義って………なんなんだろう……